私と彼らのデッドオアアライブ
凛々サイ
ドジっ子
「はぁ、なんでこんなに私ダメなんだろう……」
人生1からやり直せるならやり直したい。いや、出来るなら前世からがいい。そんな贅沢を思いつつ、一人トイレの鏡の前で幾度となくそう思っていた。今日の自分も覇気がなく、憂鬱な顔だ。いや元々からこんな顔だったのだろう。低い位置で2つにくくった黒髪を眺めながらそう思った。
これといって目立った容姿もなく、特技もなく平凡を絵に描いたような女だった。もしくはそれ以下か。まだ14年そこらしか生きてはいなかったけど、何か私の記憶外の範疇でとてつもなく悪い行いでもしたのだろうか。そんな妄想めいたことを思っていないと、この酷い状況に病んでしまいそうだった。
私、
あの時、ガスバーナーの灯がまるで催眠術の如く、私を眠りの世界へ誘った。大きな教科書に顔を隠しながら「一瞬だけ」と言い聞かせながら、10秒ほど仮眠を取ろうとした矢先の出来事だった。突然背後からクラスのしっかり者、委員長でもある影山悠馬君から肩を叩かれ、驚き、はっと眠りから覚めた。同時に眠ってなんかいないよ、という素振りを見せたくて、教科書を持ったまま慌てて振り向いてしまったのが災難の始まりだった。近くにあったガスバーナーが教科書とぶつかり引火した。パニックになった私は思わず近くに教科書を投げた。その時、近くにいた影山悠馬君の制服の袖に飛び火してしまったのだ。大惨事の始まりなんていつも一瞬なんだろう。いや深夜にリアタイで推しが出ているアニメを見た時から始まっていたのだろうか。影山君は信じられないといった顔で、すぐさま制服を脱ぎ、惨事を脱却したが、私を冷たく直視した後、避難ベルが鳴り響く中で皆へ避難を促した。何度思い返しても悔やみきれない。時はもう元には戻らない。そんなの誰だって知っている事実だ。
「はぁ~」
今日は自分の誕生日だというのに、ため息しか出なかった。5月1日のAM6時12分生まれ。そう今日は私の15歳の誕生日だ。めでたい日だというのに、私は全くもって嬉しくない。新しいクラスメイトとはぎくしゃくしているし、まともに友人さえも出来たことがない。私が起こした騒動はあのボヤ騒ぎだけではないからだ。
中1の時、調理実習で手を滑らせ包丁を床に落とし、近くにいたバレー部の間宮亮君の足を危うく、床へ串刺しにするところだった。彼はみるみる青覚め、周囲も血の気が引くように私を見つめた。
中2の修学旅行の際なんて危うく殺人犯になりかけた。みんなで訪れた京都の清水寺で、大勢が集まる絶景場所にいた私は、写真撮影に夢中な外国人に思いっきり突き飛ばされ、柵の傍にいた野球部の駿河誠君に勢いよくぶつかった。そして彼は危うく舞台から飛び降りそうになった。周囲は顔面蒼白だった。
それだけではない。秋の遠足の道中、石に躓いた私は目の前にいた帰国子女の海堂壮太君に思いっきり頭突きし、道路に押し出された彼は、危うくダンプカーに引かれそうになった。
もう誰も私に近付かなくなった。いつも迷惑、命を脅かすやつに、誰も寄ってくるはずがない。こんな自分は果たしてこの世に必要な存在なのだろうか。いや、どこからどう考えても人の命を脅かす私はこの世の天敵だ。いないほうがいいに決まっている。私はまた大きなため息を吐き出した。
誕生日の今日ぐらい何事もなく普通に平凡に平坦に終わりたい。私は切にそう願った。1時限目の移動教室のため、ホームルームを終えた後、みんなより一足早く、離れの校舎にある技術室へ向かっていた。そこへ行くには1階の外にある渡り廊下を渡らないといけない。だがそこで問題が起きた。
「おい、止まれよ」
圧がかかった低い声が私を呼び止めた。
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