異世界帰りの元陰キャ、今は淫キャ
下城米雪
00.プロローグ
俺が童貞だった頃、セックスの快楽は膣内の形状で決まると思っていた。いわゆる名器に出会えば、挿れただけで搾り取られるものだと思っていた。
俺が女に変身できなかった頃、セックスの快楽は性器の大きさで決まると思っていた。女は大きいモノが大好きであり、ガンガン奥を突かれることで絶頂に導かれるのだと思っていた。
間違いだった。
膣内の形状による違いなど誤差。
ガンガン奥を突かれても痛いだけ。
あんなものは、ゲームやマンガの中だけに存在するファンタジーだ。
三年前、俺は異世界に転移した。
そこは大淫魔に支配された抜きゲーみたいな世界だった。
下級淫魔に襲われた俺は、大淫魔から世界を取り戻そうとする組織に拾われた。
そこで淫魔を消滅させる方法──すなわちセックスバトルについて学んだ。
過酷な日々だった。
女子と目を合わせることもできない陰キャだった俺は、出会って2秒の淫魔を絶頂させられる淫キャになった。
そして、今、すべてが終わった。
俺は大淫魔に許容量を超える快楽を与え、消滅させることに成功した。
消滅の余波で膨大な淫力が生まれた。
俺は、その淫力を利用して扉を作った。
この扉は元の世界に繋がっている。
つまり……まもなく全てが終わる。
「俺のことは忘れてくれ」
俺は扉の前に立ち、最愛の人に背を向けたまま言った。
「嫌です。絶対に、忘れてあげません」
彼女は無理をして笑顔を作ったような声で言った。その表情は、実物を見なくても鮮明に思い描くことができる。
彼女はいつも笑顔だった。
俺は、彼女の全てを愛していた。
別れたくない。現実世界よりも、こちらの世界の方がずっと良い。しかし俺が留まり続けた場合、全人類が滅ぶことになる。
彼女だけじゃない。
この世界で知り合った全ての人が死ぬ。
世界の存続か。
それとも最愛の人と過ごす一時の幸せか。
俺は世界の存続を選んだ。
だから、これは最後のわがままだ。
「目を閉じてくれないか?」
セックスの快楽は愛で決まる。
愛なきセックスなど互いの肉体を利用した自慰行為に他ならない。真の快楽を知った後では、そんなものでは満足できなくなる。
真のセックスに挿入は必要無い。
そこに極大の愛が存在するならば、僅かに唇が触れ合うだけでも、射精の何倍も気持ち良いのだ。
こうして俺は元の世界へと帰還した。
この世界で得た知識と経験、そして、全てのスキルを持ったまま。
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