第19話

かぶと虫


妻は仕事から帰ってくるとまっ直ぐにキッチンへと向かう。


キッチンの奥にある邪魔な丸い折りたたみ式の椅子、そこが妻の定位置。



プルタブを引いた恐怖の音、


カウンター越しにそっと覗く

やはり、缶酎ハイを飲んでいる。



そう、これが毎日のルーティンになっている。


これは、いつからだっただろうか?



缶酎ハイ片手に鼻歌まじりに食事の準備、


妻が晩酌をするようになり食卓が豪華になった。



酒の肴ばかり、妻の好きなものばかりだ。


タコ、イカ、エビ……甲殻類が多い。


そして、いつも小鉢のほうれん草のお浸しがそっと添えてある。これは私の為らしい。

 


普段はあまり会話しないが、

妻がお酒に酔うと会話が増える。


ひとときの夫婦水入らずの楽しい時間。


けれど妻の酒が深くなるに連れて、妻の言葉が私を攻撃する。


もう限界だ!


早く寝よう……!



ほうれん草のお浸しをおかずに半ばヤケクソでご飯を駆け込み、寝室へ逃げる。


これが私の毎日のルーティン。

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