お前を幸せにするX回の神通力

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第1話 今週七回目の告白

見波みなみさん、好きです。僕と付き合ってください」


「うん、ごめんね笠原かさはらくん。ほんとごめん」


 私は誠心誠意、本当に心から笠原くんに謝罪した。終礼後それほど時間がっていない校舎内には、まだ生徒たちも多い。そんな中大きな声で告白されたら、大勢の目についてしまってとても恥ずかしいのだが、違うのだ、彼に罪は全くない。


 それなら誰が悪いのかって? 決まってる。


「それってだめってこと?」


「うん、でも大丈夫だよ。もう五分もしたら、何してたんだろうって思うはずだから」


「どういうこと?」


「笠原くんは悪い神様にとりつかれてるの。私、そいつらしめてくるね。じゃあ、また明日」


 笠原くんのみならず、周辺で成り行きを見守っていた野次馬やじうまたちまでぽかんとした顔をしていたが、そんな顔をされても私は本当のことを言ったまでだ。これではそのうち私が変人扱いされてしまう。そうなる前に、あのぽんこつ神にあきらめてもらうしかない。とにかく、説得のためにも早く帰らなくては。私はもう歩き出していた。


 校舎を出たところで、ふう、と溜息ためいきを吐き出した。これでもう今週七回目の告られになる。嬉しくもなんともないのが悲しかった。だって、本当に好いてもらっているわけではないのだ。むなしいだけで嬉しくなれるわけがない。その辺りの乙女心が分からないから、あいつはぽんこつなのだ。


「おい、誰がぽんこつだって?」


「あんたよ、あんた。外で話しかけてくんな。家までお口チャック」


伊月いづきの方が口を開かなきゃいいだろ。言いたいことを頭の中に思い浮かべてくれたら、それで分かるんだから。こっちは神様だぜ?」


「だからー! 心の中読むな! きもい!」


「きも……い?」


 半透明でなおかつ宙に浮かんでいる自称神様は、あからさまにショックを受けた顔で言葉を失った。少しだけひどいことを言ってしまったような気になったが、今は黙ってくれている方が都合がいい。


「ほら、帰るからね!」


 そう呼びかけたら、落ち込んだ顔は変わらずだが、しっかり後からついてくるからまあ問題はないだろう。今日の説得の文句を考えながら、私は早足になった。

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