完壁都市 アルカナム
EPO
ジュアリー児院編
第1話 アルカナム
-正しき社会に栄光を- 秩序ある社会よ、永遠に
我々が完璧な
2X84年。現在この世界のどこにも「平等」という言葉は存在しない
あるのは名ばかりの法と支配だけである。
旧文明の時代、多様化が認められていた社会で、人は思想を掲げました。考えを広め自分達の権利を主張し、戦ったのです。
それが自分たちの自由すらも壊してしまうとも知らず
小さな思想が大きくなり、何処かしこで[輪]を作りました。肯定する者達が。否定する者達が。大衆になったのです
大衆である彼ら一人一人に明確な目的はありませんが無自覚な力を持っていました。共感によって生まれた快楽が支配否定の弾圧による快楽に変わるのはそれ程時間は、かかりませんでした。
やがて彼らは大義名分を掲げ争いました
既存の兵器では飽き足らずより、強固で残虐なものを。といつしか自由を謳う者たちは、力を求めた。足りない人材はテクノロジー産業で補い、発展を促した
その結果残ったものより、失う物の代償の方が大きくなった。
平等の為に他者を切り捨てる選択では、切り捨てられる物の数が大きすぎた。そうした過ちに気づく頃には、人類は長きに渡るヒエラルキーの頂点までもを失ったのでした。
(今日のカリキュラムは、以上で終了になります。児童の皆さんは育児AIの先導のもと速やかに移動をお願いします)
「はーい」
「歴史何かを知ってなんの役に立つってんだよなぁ」
1人の男が愚痴をこぼす。平均より少し恵まれた体格をした、茶髪の青年
「こらっ!ルージ。そんな考えだからいつも成績下位なのよ。少しはアルカナムになれるように努力というものをねぇ!」
ルージの発言にトゲトゲしく嫌味を言う彼女を流石にほっとけないので落ち着かせる事にする
「まぁまぁ…セルシオちゃんも、、ルージは運動面で頑張ってるよ!誰だって得意不得意はあるんだから、その辺で!ねっ?」
「ソラが言うなら…」
そう言ってセルシオは、ソラの腕にくっついた。茶髪の彼女の髪からは何故か甘い匂いがする。
「はぁ…セルシオの奴ソラには甘いんだよなぁ。いつも助かるぜ」
ルージは僕の肩を叩き、親指を立てる
「ルージィ?」
何故か睨みを利かせるセルシオに気づいたのか、慌てて僕を差し出し後ろに隠れるルージ
(皆さん。私語は謹んで下さい帰るまでがカリキュラムですよ)
タイミング良く飛んできた育児AIの注意を受け、僕達は黙って帰ることにする
ここジュアリー児院では、0歳から15歳までの子供達の多くがAIの指導のもと暮らしている。都市に住む為の教育をここで叩きこまれるのだ。児院と言っても部屋は男女個別の塔に別れており、与えられた食物を自分で調理し洗濯や体調の管理も自分で行う。外出は、カリキュラムを行う際か日が落ちるまでの間のみ許されている
「じゃっ!あたしは、塔が違うからまたあしたね。ソラ」
「うん!セルシオ。またあした」
「おい!俺は無いのかよ〜」
「はいはい、ルージまたあした」
怪訝な表情を浮かべながらルージに挨拶を済ませたセルシオを見送り僕らも塔に帰ることにする。
「なぁ、ソラ来週のテストどうしよう…噂によれば、あのテストで俺らの将来って決まるんだろ?全然ベンキョー出来ねぇから…俺無理だよぉ」
ルージが不安に満ちた顔を向けてくる。
ここジュアリー児院では、春夏秋冬の四期にわたり年齢別のテストが行われる。15歳の冬のテストで将来の役職が決まる。と言われていて丁度僕たちがその代だ。あまりテストが振るわない子供は、職は愚かアルカナムで暮らすことさえ許されないとか…なんとか
「噂は、噂だよルージ。それに勉強以外にも運動能力も評価点あるかもしれないし、まだ諦めるのは早いよ!」
「ソラには負けるけど、運動は得意だからよぉ案外行けるかもしれねぇな。
将来何になろうか今のうちに決めとかねーとなぁ…ソラはなんか夢あんの?」
元気を取り戻したルージが先々の話に期待をふくらませる。
「夢…か」
「おやおや、これはソラさんじゃないですか!貴方との勝負も何度目ですかね?
今度のテストでケリをつけさせていただきますよ」
金髪が似合う凛々しい顔立ちに15歳ながら優れた体格を持つ少年が声をかけてくる
「イヤーナくん…別に僕は勝負をしたいつもりは無いんだけど、君とのバトルもここで終わりだと思うとなんだか寂しくなるね…」
何故か僕に敵対意識を向けてくる彼だが、意外にも不正などせず正統法で戦ってくれる良きライバルの関係を築けていたと思う
「私としては、ソラさんがもう少し利口に負けを認めてくれていれば無駄な事をしなくても済むというものなのですがね」
「イヤーナ。その辺にしておけよ、そろそろ帰んねえと見回りきちまうって!」
イヤーナの周りにいた1人が声をかける
「それも、そうですね。ではソラさん御機嫌よう」
「う、うんまたね!」
「ったくイヤーナの野郎相変わらずソラにご執心だな。俺には目線すら合わせて来なかったぜ、1度も勝ったこと無い点では俺と一緒なのによぉ」
ルージとは中が悪いのか何なのかずっとこの調子だそうだ
「まっまぁイヤーナくんは、少し変わってるけど悪い奴ではないんだよ…
別に僕も今思えばこれまでの勝負も悪いものでは無いと思うし」
毒を吐くルージをなだめながら僕達も部屋に戻ることにする
___☆___
都市アルカナムの中央に位置する極秘地下施設
。有りとあらゆる情報の全てが集約され、厳重に保管されており時に、
ずらりと並ぶ円卓の周り十二の銅像が映し出される。その真ん中に立つ女性に目線が向けられ会議が始まる。
「今年のジュアリーの子供達についての情報をざっくりと」
「はい。特出した才能を持つものが2名、その他は、平均的な数値を超えるものが14名その他44名です」
「ふむ。今年も不作であるな…ミス・クロウデェンやはり君の考え方は、間違えているのではないかな?」
「いくら市長のご令嬢と言えどこれ以上の横暴は、許されませんぞ」
銅像のうちの2人が
「まぁ皆様方落ち着いて頂きたい。彼女は、決して親の七光りで権力を持っている訳では無いのですから…アルカナム適正テストの数値では、我々を上回っている。彼女を否定するということは、この都市。いやアルカナムの否定とも取れますよ」
12像の1人黄金に染められた像である男が周囲を落ち着かせる。
彼の言葉に流石に周りのもの達も沈黙を守る
周囲の反応の通りこの会議における最高責任者である
「ありがとうございます、大臣。確かに私はアルカナム適正上位者ではありますが、皆様方の言う通り現在の状況が決して芳しいとは言えません」
クロウデェン大臣の助け舟を切る形であえて否定してみせる。
「自覚はあるのだな。クロウデェン、しかしこの状況がありながらまだ続けるのか?」
「いえ。これ以上続けても決して良い結果は、得られないでしょう。ですが今度の試験、私が考えたものを採用しては頂けないでしょうか?」
そう言って資料をインプットさせる
「これは…市長の娘と言うのは名ばかりでは無いと。情に囚われておる、あまちゃんだと思って居たが、とんだ悪魔じゃないか」
しきりに他の者達も想定外の提案に驚き声を漏らす。場のざわめきを感じ取った
大臣が問いを投げかけた
「例年であれば筆記と体術テスト下位者は、こちら側で秘密裏に処分し、アルカナム学園入学か外界調査隊を上位者に決めさせるのが筋書きだがそのものを変えると?」
「はい大臣。例年の通りでは我々ジュアリー児院の子供らは、独自のカリキュラムの影響で他児院に遅れをとってしまうことでしょう。しかしこのテストでは、彼らの成長をより早く促すことが出来ます。」
「心が折れてしまうかもしれない博打では無いのか?学園に辿り付けないのでは肝心な余興が始まらないではないか」
人道を欠く提案書だが仮に上手くいったとして子供達が想定外の成長を見せるとは思えない。そう捉えたひとりが焚きつける
「ご心配にはお呼びません。私の計画に万に1つの狂いもございません。
貴女方が捨てようとしている、ものには秘められた可能性があります
もっとも…使い方を間違えれば窮屈な思考になってしまうのでしょうが」
女性は皮肉めいた発言をなげかける。周りのもの達の視線を顧みない勇敢差
の裏には相当の自信があるようだった
「口がすぎるぞミス・クロウデェン」
「失礼致しました。それではこれで」
★
これは遠い未来の地球のお話、まだ彼らは知らないこの社会の惨状を。
決められたレールしか道がないという事を。
また繰り返すのです。白か黒、善と悪、貴族と家畜。正解の無い迷宮に人は何を見出すのか
窮屈な箱庭だと思っていた場所は、世界にたった一つの人工的な楽園だったのかもしれないということを…
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