ホラー短編集

紫音咲夜

恋みくじ

 これは、大学の後輩、穂花ちゃんから聞いた話だ。発端は、彼女の友人、Kさん、Yさん、Sさんの三人が、とある神社に行ったことである。

 神社は何十年も前に閉鎖されており、参拝客はおろか、神主すらいない。それもそのはずで、神社が閉鎖した原因は、神主が失踪したことにある。

 神職に就く神主は、あろうことか奥さん以外の女性と関係を持っていた。それに気づいた奥さんは大激怒。そして、裏切られたことへの絶望から首吊り自殺をしてしまう。

 奥さんが自殺してから三日後。不倫相手の女性が、会社の屋上から転落して亡くなってしまう。そして、奥さんが自殺してから一週間後、神主が失踪した。突然失踪したこともあって、後継者を決めることができなかった。結果、神社は閉鎖に追い込まれる。ありきたりないわくだが、心霊スポットとなるには十分だった。

 穂香ちゃんの友人三人は神社を見て回ったが、怪現象に出会うことはできなかった。このままでは神社を散策しただけになる。そこで、せっかくならと社務所の真横にある恋占いの御神籤を引くことにした。

「私は、Yちゃんが失踪する前にこの話を聞きました。それで思ったんです。御神籤のルールが、どう考えても儀式っぽいなって。神社が運営されていた時に、御神籤があったという記録がないのも変です」

 穂香ちゃんがYさんから聞いた話では、御神籤を引くには三つのルールがあったそうだ。社務所の横には、プラスチックの透明なケースが二つあり、その後ろには横長の看板が立っていた。その看板に、御神籤を引くルールが書かれている。

 一、恋人同士のみで引くこと。

 二、男性は向かって右、女性は向かって左の御神籤を引くこと。

 三、引く前に、愛を誓い合うこと。

 冗談で愛を誓い合ってから、Yさんが男性用の御神籤を、Sさんが女性用の御神籤を引く。そして、二人と同時にKさんも女性用の御神籤を引いた。

 後日、Sさんは部屋で首吊り自殺、三日後にはKさんが家の三階から転落死した。そして、Sさんの死から一週間後、Yさんが失踪した。

「あくまで推測ですけど、奥さんは御神籤で恋人の絆を試してるんだと思います。それと同時に、不倫や浮気への憎悪を具現化させ、呪いをかける装置とした。

 三人は男性用の御神籤一枚と女性用の御神籤二枚を同時に引いています。男性一人に女性が二人。友人三人は全員女性ですが、この割合では勘違いされますよね。自分が裏切られた時と同じなんですから」

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ホラー短編集 紫音咲夜 @shionnsakuya

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