第89話 今何と仰いました?

「カズヤ様、準備が出来ました。ご案内致します」

「マナ姉さん、行こう」

「はい」

マナ姉さんと魔法の練習するのを楽しみに今は頑張って乗り切ろう。


「Zランクになる時には市民に公表する必要があるんだよね」

「エクシアの時はだいぶ盛大だったと聞きましたね」

その時は家に篭って多重詠唱の練習ばっかしてたからな〜。


でっかいドアの前に立つと

「着きました。それではドアを開けさせて貰います」

「もうですか!?」

少し心を整える時間を…

「宰相クリス様よりカズヤ様はたじろくだろうからさっさと開けていいと仰っておりましたので」

見破られてる…。


さすが国のトップ層にいる人と言うべきかもしれない。

ドアが開かれる。

最初に思ったのは「怖そうな人達」ということ。

通り道を挟んで左右に騎士や貴族が並んでいる。


急な召喚状のはずなのに忙しい貴族が何で集まれているのか不思議だったけど多分、王様が事前に集めておいたのだろう。


「前に進んでください」

少し圧倒されているのを察したのかさっきの人が促してくる。


やばい。まだ16歳だよ?

こんな怖いおじさんばっかの前で王様と話すの?

1歩1歩レッドカーペットを歩いていると


「本当にあいつが悪魔殺しなのか」

「しっ!聞こえるぞ!でも、私も不思議に思う。彼は見た感じ子供だぞ」

「でも、実力派と聞いているが…」

「陛下は何故このようなものに…」

最後の言葉はゴニョゴニョしてて聞こえなかったけど、あまり歓迎されてないみたい。


恐らく、いくら縁を切ったとしても反旗を起こしたのが自分の父親なのだからあまり公の場にいるべきではないのかもしれない。


「隣に居るエルフは誰だ?」

「あのエルフも悪魔の戦いに参戦したらしいぞ」

「美しい方だ。是非私の…」

とか言っていたらマナ姉さんがその貴族を睨む。怖がってるからやめてあげないと。


「静粛に!陛下がお見えになります!」

クリスさんが言う。

ついに…か。

「陛下!」

全員片膝をつく。

僕達もすかさずそれを真似る。


「良い良い。今日は公の場ではない。ただの会議だと思ってくれて構わない。面を上げよ」

これを言われるまでは顔を上げないのがマナーらしい。最初から恥かかずに済んだ。エクシア姉さんに後でお礼を言っておかないと。


顔を上げると、いかにもイケおじという感じの王様と隣には王妃様までいた。

「此度、貴殿の勇敢な功績、そして当日の召喚にも関わらず参上してくれたこと、このバーデスト・カルフィールドが心より感謝申し上げる。」

「同じくハラナ・カルフィードからも感謝申し上げます」


「ありがたく存じます」

敬語、丁寧語の判断もままなってないけど大丈夫かな…?

「メナスタシア国第3王女、マナ嬢も従者としての参上、心より感謝する」

従者だから基本、王様から丁寧な感謝を受けることはない。


でも他国の王女が来たら話は別。

「いえいえ、お父様がいつもお世話になっております。それに王妃様もいつまでもお美しいままで」

「だいぶ雰囲気が変わりましたねマナ。」

マナ姉さん、王妃様と会ったことあるんだ。

だから、さっきはあんなに落ち着いていたのかもしれない。


「エルフにとっては10年なんて短いものかもしれないけど私はあの時のことを今でも覚えてますよ」とにこやかに微笑む。

「あの時の愚行はお許しください」

人間の1年とエルフの10年が一緒くらいと言われている。


マナ姉さんはエルフの年齢で言うと17歳=17×10=170年生きていることになる。

ミコト姉さんもだけどマナ姉さんもすごいや。


「それでは本題に移ろう。カズヤ・イースト。其方にZランクの称号を与えるため試練を用意したのは知っているな?」

「はい。推薦人が普通水準より多いとお聞きしました。そのため、何とか推薦人を集め、条件を満たしました」

「ふむ。それでだ、カズヤ。我は其方にZランクの称号だけでなく、騎士爵位を授けようと思うがどうじゃ?」


「今なんと仰いました?」


「けしからんぞ!陛下のお言葉を聞いていなかったのか!ひぃぃ」

「マナ姉さん、ここで魔法を使ったら城壊れちゃうよ」

「ごめんなさい、大切な人を侮辱されて…」

と魔法陣を即刻解除する。

あ〜まだ怒ってる。


「ほう、聞いてはいたがマナ嬢はカズヤにベタ惚れか」

「はい。カズヤ様にこの先もついて行くつもりです」

「面白いな。そこまで惚れる要素を隠し持ってるとは」

と何故か感心している。

そんな要素僕にあるの…?


「すみません。あまり急なことで理解するのに時間がかかってしまいました」

「無理もない。驚かせてやろうと思ってな。それにアクアート公爵からも彼との関係は絶ってはならんと言われてな。」

多分、結婚式を挙げたらこの国を出て旅をするということを知っているのだろう。


「ですが騎士爵位をいただいても私は仲間と旅に出ることを考えています」

「既に聞いておる。構わん構わん。だが…」

やっぱり知っていた。

王様は続けて言う。

「緊急時には駆けつけられるようにして欲しい騎士爵として…な?」

つまり騎士爵をあげるから何かあった時は国を守れということか…。


まぁ生まれ育った故郷だから守りたい。

それにアストレルアの復興も見守りたいからね。

「もちろんもこちらで用意する」

「ありがとうございます。謹んでお引き受けいたします」

こうして僕はZランクと騎士爵を貰うことが確定した。



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