第24話【視点別】代償魔法の本当の重さ

わらわは人生で初めて見た。

いつもの2倍の威力、そして身体強化による足の速さ。


「2人、3人」

「お願いだやめてくれ!」

その男の願いも虚しくあったいう間に倒れる。

「ミコト!カズヤくんを止めないと!」

エクシアまで涙目だ。

「分かっておる。ただ代償魔法を使っている間はわらわ達は何も出来ん」

「なんで!」

「今の主様は強さで言えば私達と同等、いやそれ以上だ。だから下手に喧嘩を売ると殺される」

「なんでよ!私達はカズヤくんの家族なんだよ!」


「代償魔法の本当の恐ろしさは心だ。心を一時的に支配される。殺すことに罪悪感を持たない。だから平気で斬りかかれる。泣いて命乞いをしても容赦なく斬る、魔法を打つ。多分、今わらわ達を攻撃してないのは強い本能で押さえつけてるからじゃ。普通の人なら、仲間でも平気で殺している事例も昔あった。」

「カズヤくん…ねぇ、いつになったら止められるの」


「分からん」

代償魔法をかつて禁忌と知りながらも使ったやつは大抵死んでおる。王国の騎士団長や、かつての英雄など今のエクシアくらいの強さを持つ人に。


でも今、主様の多重詠唱が裏目に出ている。

初級魔法でも威力も恐らく中級魔法に相当。

それが無数にふりかかる。だから英雄だとしても倒せるかどうか分からない。


古代はアイテムのおかげで代償魔法を使っても心が支配されず、痛みに耐えるだけで済んだ。


今はもうアイテムもない。

「少ない可能性にかけるしかない、か…」

「何をするつもりなの?」

「眠らす」

「そっか…眠らせることで自然と魔法が解除出来るかもしれない…」

魔法を使ってる最中、眠らせると普通は解除される。

獣人族の魔物狩りによくこの手法が使われる。

「そうじゃ。でも起きた後、もし解除されてなかったらどうなるか分からん」

「ギルドマスターなら対抗出来るかもしれない」


あやつが…?確かにただならぬ雰囲気は持っておったが…

「私が今はカズヤくんの相手をする」

「正気か!?」

盗賊ギルドのやつらが相手しているのに割り込んでわらわは眠らすつもりじゃった。


「盗賊ギルド達はいずれ全滅する。でも早く助けたいあげたい…」

とこちらを見る。

でもそうしたらエクシアが死ぬ確率が上がる。

「妖術はどのタイミングで出せる?」

「主様は身体強化も入っていて俊敏性が高いから、止まっている時にしか当てられん」

「分かった。頑張って止める」

と言い、エクシアは主様の所へ向かった。


主様は何を思って代償魔法を使ったのか。

わらわのなかで答えは既にある。

「盗賊ギルドのやつらに煽られたからか…もしくはわらわ達に対する劣等感…」

引き金になったのは盗賊ギルドの奴らが煽ったからだと思うが、根本的な理由はわらわ達にあると思う。


なぜ気づいてやれなかったのか。少しわらわ達に対して申し訳ないと思っているところは見てきた。

あの時…一言でも助けになる言葉を言っていれば使わなかったかもしれない。


「今は眠らすことに集中しよう」

わらわはそう自分に言い聞かせた。




《後もうひとつ視点別あります(*^^*)》

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