ワーカホリック

峰岸

ワーカホリック

 僕の名前は小太郎。小川家の長男である。職場は警察署。ただ、今は少しお休み中である。

「今までよく頑張ったのだから、ゆっくりしなさい」

 そう上司から言われて休暇をいただいたのである。僕としてはまだまだ働けるし元気であるのだが、職業柄特殊なためある程度の年齢になると部署異動したり転職するそうなのだ。僕の場合は一旦休暇ではあるが、この機会に転職もいいのかもしれないなと考えている。


 僕の朝は寝坊助な妹を起こすことから始まる。妹はまだ小さく、目が離せない。妹に声をかけ揺さぶる。妹はそれでも起きようとはしない。

「うーん、もうちょっとだけねかせてえ……」

 今日は保育園の日なのだ。急がないと遅刻してしまう。僕は妹を揺さぶり続け、なんとか起こすことに成功した。

「ふあ、こたろーありがとうね」

 妹は僕のことをお兄ちゃんとは呼ばない。みんな僕を呼び捨てで呼ぶから、妹もそう呼ぶようになってしまった。僕の方がお兄ちゃんなのだけどなあ。無理に呼んでほしいわけではないが、なんだか残念である。


「いってきまーす!」

 妹とお父さんを見送り、僕も朝ご飯を食べる。この時間に食べるのは遅いほうなのだが、急がず食べる朝も乙なものである。

 ご飯を食べた後はパトロールの時間だ。とは言っても、いまはお休み中ではあるので自主的な活動になってしまうのだが。町の安全を確認するのも僕の仕事の一つなのだ。一日三回のパトロールをして、怪しいヤツがいないかを確認している。みんなが安心して暮らせるのが僕のモットーなのだ。

 僕はパトロールの準備をしようと立ち上がると、おばあちゃんに呼び止められる。なんだろうとおばあちゃんの元へ行くと、おばあちゃんはにっこりしながらこう言った。

「小太郎、おばあちゃん買い物に行くんだけど、一緒についてきてくれるかい?」

 もちろん、僕は二つ返事で答えた。


 僕はおばあちゃんを護衛する気分で歩いていた。おばあちゃんとの散歩なのだ。気分も上がる。僕はパトロールも好きだが、お散歩も好きだ。おばあちゃんも僕と一緒でお散歩が好き。よく僕とお散歩をしてくれるので僕はおばあちゃんのことが大好きだ。

 のんびり河川敷を歩き、そのまま商店街で買い物をしようとしたときに事件は起きた。

「ひったくりよ! 捕まえて!」

 走って逃げようとする犯人。気が付いた時には、僕は走り出していた。


「ひったくりを捕まえてくれてありがとうねえ」

 被害者のおじいさんからそう感謝される。当然のことをしたのだが、なんだかむず痒い。交番のお巡りさんもすぐに駆け付けてくれて、犯人は無事逮捕された。

「小太郎は流石ねえ。今日は特別に小太郎の好きな肉団子を作りましょうか」

 おばあちゃんの肉団子! これはどのご飯よりもおいしい最高のメニューなのだ。僕は嬉しくて身を震わせる。ついよだれも出てしまった。

 家についてからもみんな僕のことを褒めてくれる。よせやい、と言いたいが僕の顔は嘘をつけずににやけてしまった。


 夜。僕の最後のお仕事。妹の寝かしつけだ。

「もう、こたろーがいなくてもねれるもん」

 そう妹は言うが、僕のしっぽを掴んで離さない。僕は妹の頬をペロンと舐める。

「おやすみ、こたろー」

「ワン!」

 ぼくはそう答えた。

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ワーカホリック 峰岸 @cxxpp

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