事情説明3

「ハナ!」

「はっぷ」


 はい、二回目。イグル様本当に話聞いてました?


「はい、離れた離れた」


 ぐいっとベティに剥がされる。


「ぷはっ」


 あー息が吸える。さっきより強めに抱き締められたもんで、少し苦しかったんだよね。


「ハナ、もう良い? 近くよって良い?」

「まだだってんだ。本当になんだこの、お方……? こいつ……?」


 クレイグさんが、イグル様の身分で迷ってる。うん、多分正式には「お方」かな?


「……」


 イグル様は無言で、寄せようとした椅子を戻し、少しむくれた顔になる。


「こっちは問題なかったよ。そっちは少しは、なんか話は出来たのか?」


 デイジーさんが戻って来た五人を見る。イグル様はきょとんとして、他四人はなんだか良く分からない表情かおをした。


「……言葉は通じる。話も出来る、が」


 アドルフさんが言葉を切って


「どうにも要領を得ない。てか意味が通じないんだよ」


 ハリーさんがそれに続いた。


「通じない?」


 別に、私と話してる時は普通に会話が出来ていた。


「イグル様、何を話したんです?」

「んー……ハナと会って、ウィ……人の生活が見たくて一緒にここまで来たって」

「ですねえ」


 別に、変なこと言ってないな。


「人の生活?」


 エリアルさんが首を傾げる。後ろの長い三つ編みが揺れる。


「あなたは、どこから来たの?」


 あ。


「そこも話の肝心な部分だからね。ハナからは聞いたが、あんた自身の口から、あんたの話をして欲しい」


 ドーラさんが腕を組んだまま、イグル様を真っ直ぐ見つめる。

 おお、すごい。イグル様の見た目に臆さないなんて、さすがドーラさん。


「どこ……」


 イグル様が私を見る。

 精霊様の話はしない、見せない。そんなことをしたら街中がパニックになるから。

 だから、ボカして話して。今までと変わらずに。そう目で訴え──


「……森に、いつもいた」


 イグル様あ?!


「森?」

「一緒にいる、みんなとはあんまり仲は良くなくて、いつも森にいたの」


 ……お?


「どの森だ? 名前が付いてる森か?」

「さあ? ずっとそこにいたから知らない。そこで、ハナに会ったんだよ」


 みんなが少し驚きながら、でも真剣に聞いている。


「迷ってるっていうから、街を案内してくれる代わりに、森から一緒に出たの」

「……何故、道を教えるだけにしなかったんだい? どうして共に行こうと?」


 ジャックさんが、慎重に聞いてくる。


「森から出るのは、ハナ独りじゃ多分無理。凄く大変な道だから」


 それは、多分ウィルジーひとにはってことなんだろう。


「そこから一緒にいったのは、逆にぼくが、森の外を知らないから。ハナにいろいろ教えてもらったよ」


 もう、みんなイグル様をほとんど疑ってない。

 そのままベンさん達の話に進み、リベスからヴリコードまで。危ない質問もされずに、私とイグル様の話は終わった。


「……あんた、見た目の割に大変だったんだね……」


 若干イグル様が、別の方向に勘違いされてる気もするけど。まあ、それも良し!



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