第36話 Aランクの発現
◆◆◆ 36話 Aランクの発現 ◆◆◆
日本陸軍は、田村、デニス、マリアの三人が持ち帰った映像と圭一の考えを元に、穴の内部に雨水が入らないように対策をし、持ち帰った水を分析に掛けていた。
結果、何も変哲も無い雨水であった。
富士トンネルでも生きたスライムを捕獲し、分析に掛けてはいたが、内部の液体は地球上に無い液体成分であり、魔石に至っては有機物と金属の化合物と言った事以外は細か過ぎて分かっていない状態だった。
そして極寒冷地仕様の服と武器がアメリカ本土から運ばれて来ていた。
「動きが悪くなるなぁ、視界も悪いし、あとスゲー暑い!」
「当たり前だろ、それは中で斬る物だ」
「胸がキツイわ」
「…………」
「…………」
お前が何か言えよ、イヤイヤ、デニスが何か言ってよとお互いが譲り合っていた。
此処は第七艦隊旗艦空母ドナルド・トランプの中であった。
「俺アイス食ってこよーっと!」
「おい!そのまま行くのか!?」
「練習!練習!」
「私も~」
「チッ!しょうがねえな」
五月の連休が始まったこの暑くなり出した時期、空母トランプの中では極寒地仕様のフル装備で歩く三人の姿があった。
その異形な姿にニヤニヤしている物や、信じられないような顔で凝視している者までいたが、額から汗を流しながら楽しそうに微笑んでいる前を歩く二人を見ていると、何も言えないでいた。
「うひいい!冷てええ!」
デカいカップの中からアイスを掘り出し口に入れる圭一。
「こっちのストロベリーも美味しいわよ、あーん」
「むぅ……あ、あーん…………あ、おいしッ!」
「じゃあ私にもお返しは?」
「あ、あ、あ、あ、あーん」
手がプルプル震えながらスプーンに盛ったアイスを突き出すとマリアはそれをパクッと食べ、唇に付いたアイスをペロッと舐めた。
やべえッ!大人の魅力が炸裂している!
スゲー可愛い!
こんな学生時代があったらなぁ。
でも此処は空母だし、立てないし、アイスも美味しいし。
マジでやべー!
別に付き合っているという事でもないんだが、圭一は幸せの絶頂だった。
何か妄想していたイチャラブカップルみたいで。
半分仕事なのは分かってる。だけどもソレ抜きでも好意を持っている事も何となく分かっていた。
「ふあ~やっぱり暑いわ」
防寒服の前を開けるとデカい胸を押える下着のラインがTシャツ越しに見えた。
「ッ!!」
思わず視線を逸らした。
「あら、直に触った人とは思えないわね」
「アレはアレで、コレはコレなので」
「ふふ、耐熱訓練はこれ位にしましょうか?」
「う、うん」
放置されていたデニスが顎に手を乗せ俺らをジト―っと見ていた。
「めんどくさいな、ジュニアスクールじゃねえんだからよ。もっとガバッと!こう!何と言うか!ほら!分かるだろ圭一!」
「俺、初心者なんで分かりません」
「おじさんは放っておいて行きましょ」
手を握られ、お姉さんに連れられた弟のように引っ張られていく。弟をずっと引っ張っていたのが逆になり、何かそれが新鮮だった。
「おじさんじゃねえ!俺はまだ28だ!」
食堂にデニスの声が虚しく響いていた。
俺達はまた高千穂へと戻って来た。
今度は最後まで行けれるように準備を整えた。俺達三人が先頭の突破口を開き、別の海兵隊がバックアップしてくれる。
防寒服や、予備弾倉、スペアの剣などを持ってトンネルダンジョンの走破に向けて準備を整える。
今回は、酸素濃度低下にも耐えられるDランクのみを集め、再び内部へと入って行った。
普通のスライムなど経験値にもならない為、小走りで俺が切り、後続の誰かが魔核を踏む事になった。
「大クモの所まで一気に行きます!」
剣を振りながらスライムを殲滅していく。
一気に近づき一振りで仕留める!
入って直ぐの事だった。
ズズズズンッ
大きく揺れる地震のような揺れが来た。
何か異変を感じた俺らが止まると、少し変わった地震だと思った。自信にしては揺れが短いのだ。
状況を知る為に一旦停止して休憩を挟むが、出入り口から戻って来た海兵が言ってきた。
「前回同様、彗星の欠片が地表に落ちたらしいです!」
「彗星って……最近よく聞くな」
デニスが
この前もそうだった。この穴に関係でもしてるのかな?
「本体は氷の塊なので影響はないと発表されています」
伝令の兵士が追加情報を言うが、以前も聞いた話だった。
出鼻を挫かれた感じだったが、俺達は気を取り直して先へと進みだす。
一体この穴は何で作られ、誰が、何の為に出来たのだろう。
安全は基より、興味が先だってしまう。
今やザコになり果てたスライムやサソリを斬り捨てながら俺達は今まで以上の速さで先へと進んで行った。
◆◆◆
丁度その頃、富士演習場近くの研究室で田所はついに自分の探求心を満たす為、Dr.田中の指示を仰ぐ事無く動物実験を開始していた。
丁度、田中Dr.は所用で出払っている時であった。
動物実験用のラットをケージに入れ、密閉した容器の中に入れた。
その中にはこれまで密かに集めていた魔核が大量に用意されていた。
その数は100や200では利かない量であった。
マジックハンドで魔核を一つ、そしてまた一つ割った。
その二個を割った所でラットの動きが止まり、苦しんでいるような感じになった。
「ふん! 体温上昇。心拍数低下。これは明らかに進化している症状だ。魔核の量は身体の大きさに比例するのか?」
田所はそれだけに止まらず、連続した魔核の摂取で対象がどうなるのかと思い、更に魔核を割り出した。
10個、そして20個に行った時だった。
「おッ!更なる体温の上昇と心拍数低下!酸素濃度を少し下げてみるか」
田所は容器のメモリーを触り、容器内の酸素濃度を通常の21%から18%と下げた。
へ
「呼吸数変化無し。人間と違って25時間と言う制約を受けない?面白い!」
田所は秘蔵のノートに時間経過と魔核の投与、そして変化を掻き殴りながら次々に魔核を壊して行った。
その魔核の数が300を超えた時、突然脳内にアナウンスが聞こえた!
『地球上生命体の討伐累積値が一定数に達した為BランクよりAランクへ移行しました。
亜空間トンネルより湧き出る
「むッ!これはマズイのか!?ガスだ!毒ガス!」
隣に設置していた毒ガスのボンベのハンドルを回し、容器にガスを放出する!
「危ない……人間とラットでは影響が違うとでも言うのか?!おッ!これは!」
ガスを確かに入れたのだが、実験用のラットは特に苦しむ様子も見せないまま動いていた。苦しい素振りも見せず、ガスが効いているか見ていた田所を見つけると、知能があるのかずっと凝視していた。
そしてそのラットが徐々に巨大化していく!
「ま、マズイ!」
ケージを簡単に破壊し、密閉された容器を越えて1m程の大きさになったラットは、軽く飛ぶと田所の喉笛に噛みつく!
「うあ!グッ!止めッ 誰か!」
同時にバイオハザードのアラームが研究棟に鳴り響いた!
既に田所は息を引き取っており、ラットは残った100個程の魔核を齧り、手足で踏みつぶしていく!
何事かとアラームを聞きつけやって来た職員は、瞬時にラットに殺され、瞬く間に棟内の職員は殺されていった。
返り血を浴びて真っ赤に染まったラットは、鼻を空へと向けてスンスンと匂いが嗅いだ。
そして日本陸上軍の展開する富士トンネルへと走り出した。
途中で見つけた自然内に存在するネズミと交配を行いながら…………
◇◇◇あとがき◇◇◇
次話で終わりになります。
どうぞ宜しくお願いします。
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