第9話
俺はお腹がすいていたので、車が発信するとすぐにサンドイッチの包みを開けて食べようとした。しかし、そこであることが気になった。それはキョウヘイが自分の分を持ってきているのか?ということだった。さすがにキョウヘイもお腹がすいているだろうから、キョウヘイが何も食べずにいる中、俺だけ食べるというのはおかしい気がする。そこで俺はサンドイッチの包みを開ける前に、「キョウヘイ!お前も食べるか?」と尋ねた。
するとキョウヘイは、「大丈夫。俺の分は持ってきてるから。」と言って、包みを見せてきた。それを見て安心した俺は、「そうか。」と返事をしてサンドイッチの包みを開けて食べ始めた。
パンに挟まれている具材はうちで出るサンドイッチとは違って、ローストビーフやスモークサーモンなどが挟まれていた。具材が凝っているのに加えて運動した後ですごくお腹がすいていたので、おいしさもひとしおだった。あっという間に平らげた俺は「すごくおいしかったよ!」とキョウヘイに感想を伝えると、キョウヘイが「そりゃ良かった。」と笑って返事をした。
サンドイッチを食べて喉が渇いた俺は水筒の蓋を取って、中身を蓋に注いだ。どうやら中身は色や香りからカフェオレらしかった。俺がブラックコーヒーを飲めないことをキョウヘイは知っていたからカフェオレにしてくれたんだろう。
小学生からの付き合いだからキョウヘイは俺のことを大分知っていた。
キョウヘイは最初、高飛車なお金持ちの子が多く通う私立の小学校に通っていたらしいが、なじめずにいくつも学校を転々として最終的には俺が通う公立の小学校に転入してきた。
キョウヘイが今でも付き合いがあるのは小学校の時から一緒の奴らだけだった。中学の時、キョウヘイに近づいてきたキョウヘイの背後にある親の財力目当ての奴らとは一定の距離を保って接していた。
俺はキョウヘイの親の財力など知らずに友だちになったが、キョウヘイには世話になってばかりだった。なので、どうしてキョウヘイは今でも俺と友達でいてくれるのか疑問に思う時も時々あった。友だちでいてくれる理由は分からないが今日キョウヘイが俺と友だちで良かったと言っていたので、何かしらキョウヘイが俺と友だちでいたいという理由があることは分かった。
キョウヘイの優しさに報いるためにも絶対にカジワラを俺に振り向かせなくては!と俺が決意を新たにしていると、俺のスマホからラインのメッセージの着信音がした。すぐにスマホを見ると、カジワラからメッセージが来ていた。
俺が少しドキドキしながらメッセージを見ると、「今日いつもと様子が違ったのはやっぱり私のせい?」とあった。「そりゃそうだろ!」とすぐに返信したかったが、そんなことを言うとせっかくハタケやキョウヘイの前でいつも通りに接してくれたカジワラの優しさを無駄にしてしまう気がする(キョウヘイには俺がカジワラに振られたことを話しているので実際無駄なのだが)のと振られたことを引きずっているのをカジワラに感じさせて嫌われてしまう気がしたのでスマホに入力する前にやめた。
まったく気にしてないふりをするのもカジワラに振られたことなんてどうでもいいと感じさせてしまう気がしたので、「それも少しあるけど、本当に中間試験が気になっていただけだよ。」と、少し気にしているが、いつもと様子が違ったのは別な理由もあるというふりをする返信をカジワラに送った。
俺が送ったメッセージはすぐに既読にはならなかった。
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