片翼の戦姫
トサカザムライ
フランス編
はじめまして!(加筆アリ)
***群青の空を彩る4つの流星。
一つは、腰にまで延びた金髪をなびかせ、背には身体全体を覆い隠すほどの大きな両翼をもつ少女。
もう一つは、碧髪の女性。少女より二回りほど大きな身体に、こちらも大きな両翼を携えている。
「アスカ!カリン!残りの“ネビー”を一か所に集めてくれ」
耳元で男の指示が飛ぶ。
「とどめはリズとベルに任せる!」
『了解』
「わかりました!」
『りょーかい!』
「わかった・・・」
4人が一斉に返事を返す。
同時に、碧髪の女性と金髪の少女が左右に旋回し、敵の群れを挟み撃ちにするかたちをとる。
「いくわよカリン!」
『うん!』
「『Heaven’s(天の) Net(網)‼』」
二人の手から放たれた光は敵を覆い隠すようにして展開される。
さらに上空から、真冬の雪景色の様に美しい白銀の髪色の少女が二人ほど高速で突撃してくる。
「『liebes(親愛なる) Schwert(剣)‼』」
瞬間、大空を分かつ閃光が視界を遮った。瞬く間に敵の残党はチリへと変わる。
「作戦終了だ。おつかれ」
耳元で下される帰投命令に従い、各々が地上へと降り立つ。
「アスカちゃんおつかれ~!」
凹凸のしっかりとした豊満な碧髪の女性に抱きついたのは、彼女とは対照的に凹凸のない華奢な金髪の少女。
澄み渡るような海のように碧色の瞳が印象的だ。名をカリン・スプラッタ。
碧髪グラマーの方の瞳は黒のアジア系で名は、アスカ・ライラット。
先ほどの戦闘では、息の合ったコンビプレーで敵の残党を集め、最後の一撃へとつなげた。
「アスカ!カリン!ありがとう!!助かったよ」
二人の後ろから、元気のよい声が聞こえてくる。
振り返るとそこには太陽がいた。
いや、正確には太陽のように明るい女の子。
発育は年齢相応に、と言いたい所だが、彼女の下半身に目を向けると、
腿まで伸ばしたソックスがはち切れんばかりに張りを出し、ロゴム部では抑えきらなかった若肉が、
早朝にとれた野菜のような瑞々しさと、熟練の達人が突いた餅のように張りソレは、芸術的と言わざる負えない。
紅色に輝く瞳は空に浮かぶ太陽をそのまま埋め込んだようだ。
彼女も先ほどの戦闘に参加した一人で、何を隠そう、最後のとどめを刺した張本人でもあるのだ。
名をリズ・ラベル。
『おねぇと私のコンビは最強。』
更にその後ろで、フンスと鼻を鳴らし、自慢げに腕を組んでいるのが、妹のベル・ラベル。
こちらは姉とは反対に、上の方の発育が良好なようだ。
彼女ももちろん先の戦闘に参加していて、最後のとどめは、姉のリズと妹ベルの合同技だ。
始まりは西暦2225年。
突如として、世界各国で未確認生物の侵略が始まった。
以降、この生物はネビーと名付けられる。
ネビーに対抗するため、人類はほぼ全ての産業を一時的に休止させ、全リソースを軍備につぎ込んだ。
しかし、そんな人類の一生一代の大決断を嘲る様にネビー侵略から3日後には全人類は約1/5にまで減らされていた。
3日目にアメリカ合衆国陥没の知らせを聞いた時、誰もが滅びを悟ったことだろう。
しかし翌日にあらわれた思いがけない刺客に人類は救われることになる。
ネビー侵略から4日、突如として彼らの前に現れたのは視界一面を覆いつくすほどの白翼だった。
その者が敵か味方か、思考する者は誰もいなかった。
なぜならその麗しい翼が人類史に長きにわたって語り継がれてきた伝説上の生き物に瓜二つだった。
翼の女神の出現からはや2週間。人類はついにネビーの侵略を食い止めることに成功する。
もちろんこの功績の99%は翼の女神によるものである。
この大戦後、人類はネビーによって失われた文明の復興を進めるとともに、再び未知の生命体が攻撃してくることを想定し、主要5か国に翼の女神に常駐してもらうように要請。
女神たちはとても心優しく、器の大きさは人間とは比較にならないほど。
人間たちの身勝手な申し出に二つ返事で快く承諾する。
しかしそんな女神たちの朗らかさに甘えた人類は愚かにも女神たちに人類との繁殖を命じた。
不躾とも取れるこの申し出をも受け入れる女神。
そんなことが2年ほど繰り返され、いつしか女神と人間達の形式的な立場が逆転してしまうのであった。
人類と女神の共存は10年を超えたある日、再びその時は訪れる。
ソレはかつての悪夢の再現のような光景であった。
世界各国で始まる侵略戦争。
しかし敵は前回とは規模も戦力も桁違いであった。
主要5か国で戦闘用として常駐している翼の女神、通称・戦ワル姫キューレ。
彼女たちの総数は、赤子も含めれば優に二桁を超えていたため、人類側はなんなくネビーに抵抗し、追い返すことができるだろうと思われた。
しかし50年以上経った今でも、人類とネビーの大戦は終わるどころか、激化の一途をたどっている。
ブルーの軍服に身を包んだ4人はこの国唯一の対抗戦力。
ちなみに隊の最古参はカリン、次にアスカ、最後にリズ・ベルという順だ。
「お腹すいたわ、何か食べましょ」
『でもでも、先にベルジ司令に帰還の報告をしなくちゃ』
腹部に手を当てながら、皆にそう提案するアスカに対し、最年少のカリンが返す。
カリンのもっともな意見に一瞬考え込むしぐさを見せるアスカだったが、次のカリンの言葉で考えるのをやめ、食堂へと続く道を直進していた。
『ベルジさん、またすねちゃうよ。こないだもアスカちゃんに挨拶したら睨まれたぁーってすごく落ち込んでたんだよ?』
アスカは司令を苦手としていた。
部隊長である自分としては、司令との良好な関係の構築には、きちんと気を回さなくてはいけないと頭では理解しているが。
どうにも彼の日々のセクハラには耐え難いものがあるのである。
「カリン、アイツは落ち込んでる風に見せて、心配して近づいてきた相手へのセクハラを企んでるようなクソ野郎よ。アイツの狡猾な罠にはまってはダメなの。」
そう言って、カリンへ注意を促す。
今はただ、あのセクハラ変態オヤジの魔の手がこの天使の様に幼気な美少女にまで及ばないようにすることが先決だ。
「それに、アイツのはただの挨拶じゃないわ。私のお腹を触って『ふーむなかなかだなぁ。』なんて言うんだから。真摯な対応をされると思っている方がどうかしているわ」
そう、アレは私が昼ご飯を食べすぎたので、軽くトレーニングにでも向かおうかと水着に着替え、基地地下内のプールに行った時のことであった。
背後から、腹部を触られ、ひゃぁ!っと生娘のような情けない声を出し、後ろを振り返ると、海パン姿でゴーグルも装着した司令が、真剣な眼差しで私の腹部を触りながら観察していたのだ。
『うーん。それと司令への報告を怠るのは話が違うんじゃないかなぁ?』
「そもそも私は、報告をしないなんて一言も言ってないのよ?ただ、お腹が空いたから先に腹ごなしをしてからと」
カリンの指摘はもっともだ。しかしアスカ自身、意固地になってしまい、反論になってないような反論を返す。
「わぁーー!!今日のスープ、ソーセージが入ってるぅ!!」
『おねぇ、私の皿のキノコ、食べて。』
二人が食堂に行くか指令室に行くかで、言い争っていると、廊下の奥の方から聞き馴染のある元気のよい声が聞こえてきた。
気づくと、先ほどまで居たはずのリズとベル二人がいなくなっていた。
カリンとアスカは議論をやめ、二人の声が聞こえる方へと向かう。
「あっ!カリン、アスカ!凄いんだよ今日のスープ!なんとソーセージが3本も入ってるんだから!!」
『おねぇ、私の皿のキノコ』
スパゲッティの上に乗ったキノコを綺麗に皿の端にどかし、姉に食べさせようとするベル。
「ベル、好き嫌いはダメっていつも言ってるでしょ!」
そんなベルを姉のリズが一喝する。
『うっ…。これは…。好き嫌いじゃない。キノコには肌荒れを防いだり、疲労回復効果もあって、特にこのシイタケは、臭くてきr老化を防ぐ効果があるから、おねぇの美容に貢献したくて』
姉妹のいつもの茶番劇を見て、肩を下ろし笑いあう二人。
「ベル、リズは美容に気を遣わなくても充分きれいでしょ。」
配膳を持ってきて姉妹の向かい側に座った二人。姉妹の会話にアスカが援護射撃を入れる。
ベルは姉であるリズのことが大好きで、いつもリズの背中ばかり追いかけている。
そんな彼女にだからこそ、この責めは有効だと思った。
『うん。おねぇは世界一の美人。でもこれを食べればもっと綺麗になる。』
効いてはいるが、効果はない!?
「ベル、キノコを食べたら寝る前によしよししてあげる!」
『!!!食べる。』
アスカの援護をひらりとかわしたベルだったが、姉からのご褒美攻撃により折れる形となる。
スープに浸して柔らかくしたパンと、ソーセージを口いっぱいに頬張り、ご満悦な姉と、その隣で顔じゅうにしわを浮き出させ、都会の信号のようにせわしなく顔を青くしたり赤くしたりしながら、キノコを食する妹。
対照的な二人のリアクションを楽しみながら、少女は堅いパンを湯気だったスープに浸すのであった。
【登場人物紹介】
①カリン・スプラッタ
年齢:12歳
身長:125cm
好きなもの:隊の皆。甘い物。
嫌いなもの:怖いこと。
②アスカ・ライラット
年齢:17歳
身長:170cm
好きなもの:味噌汁。漬けもの。
嫌いなもの:司令。セクハラ。司令。
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