第9話 放課後2

思いがけず、女子たちの会話、それも柚希に関するものを聞いてしまい、自分でもよくわからない気分を抱えつつ、俺はそのまま泰正を待った。


「悪い!遅くなった!」

あの出来事から20分ほど経ち、やっと泰正が教室に戻ってきた。

「やっと来たか、じゃ、行こうぜ」

「おう」


俺は泰正を連れ立って、高校の最寄駅の前にあるファストフード店へ向かった。

店に着くと、食欲をそそる匂いが充満していて、俺の期待値も上がった。今日は昼食が少し足りなかった上、体育の授業が5限にあったので、程よくお腹が空いていた。

1階席は学生や近所のマダムたちで埋まっていたので、俺たちは2階席に上がった。


席を確保し、荷物を置くと、忙しいのに相談に乗ってもらう泰正への申し訳なさが、心の中で迫り上がってきた。

「じゃ、注文してくるわ。今日は俺が奢るよ、付き合わせちゃったし」

「お、さんきゅ。ハンバーガーとポテトLのセットで、飲み物はコーラでよろしく〜」

「オッケー」

俺は泰正の注文を受けると、財布を持って、レジのある1階へと降りていった。


大混雑だったレジをなんとか攻略し、注文を終え、受け取った商品を持って2階席に上がると、泰正が待ってましたと言わんばかりに、目を輝かせて座っていた。

「遅いよ広哉〜、早く食べようぜー」

「ああ、食べよう食べよう」

俺の空腹もそこそこピークだったので、俺はポテトに手を伸ばした。

泰正は王道の組み合わせを注文したが、俺はエビカツバーガーとポテトと野菜ジュースのセットという組み合わせだ。中学生の頃、エビカツバーガーのおいしさに目覚め、それ以来、この店に来ると、必ず注文するようになっていた。


「それで、相談って何よ?」

ハンバーガーとポテトをぺろりと平らげ、コーラをチューチュー吸っていた泰正が、今日の本題を投げかけた。

「それがさ、昨日からいろいろあって」

俺は手に持っていた野菜ジュースのパックを置き、そう語り出した。

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