第7話 ある朝
「あ、あの、おはようございます」
「うんおはよう。どうしたの?」
「いや、あの、えーっと、昨日の話の、返事?というか検討結果をお伝えしようと・・・」
俺は消え入るような声でそう言った。すると理子は、少し思案したのちに、
「あぁ!勉強のやつか!」
「はいぃ、まぁ、結論としては」
「やるんでしょ?」
「え、あ、はい?」
不意を突かれて理子に俺の心の内を代弁され、俺は激しく動揺した。
「だから、やるんでしょ?」
「え、い、いやぁ、やりますけど」
「うんだろうね、柚希ちゃんにはもう伝えてあるから。じゃ、よろしく~」
そう言い残して、理子は保健室のドアを開け、中へ入っていってしまった。
鼻の奥にかすかに残る消毒液のにおいを感じながら、俺は教室のある3階への階段を上った。
俺が教室についたころには、すでに始業の10分前になっていて、生徒はほぼ揃っていた。
「よぉ、広哉。なんかいつもより遅くねぇか?」
そう話しかけてきたのは、中学のころからの友人かつ、俺が心を許している数少ない人物の一人である、北山泰正だ。彼は中学の頃、あまりクラスに馴染めずに孤立していた俺に話しかけてきてくれ、ボッチ回避へと導いてくれた救世主的な人物である。
「ああ、ちょっとな。それより、放課後時間あるか?少し話しておきたいことが」
「あーまぁいいけど、もしかしたら野球部のミーティングあるかもしれんから、それ終わってからになる」
「りょーかい、教室かどこかで待ってるよ」
「おっけ」
俺が話しておきたいことなど決まっている。昨日あったことと、今朝あったことについてだ。
こうして、今日も長いようで短い一日が始まった。
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