第3章 名探偵、推理を開始する
11話 太刀川の推理
喫茶店レンガーーー
その名の通り壁の中程まで煉瓦のブロックを積み上げた造りの、オシャレなお店だ。どことなく昭和レトロな雰囲気も良い。
その一番奥のボックス席に私たち四人は陣取った。奥の壁際の席に太刀川と私、私の対面に大越さんと凛花が並ぶ。すると席に着くなり太刀川が早速本題に入ろうとする。
「それでよ、さっきの続きだけどよ、俺犯人を知ってるぜ!」そう言うと不適な笑みを浮かべながら私たちを眺める。その視線に戸惑ったのか、私の前に座る大越さんの目がまたもや泳ぐ。ここで彼女が名指しされる可能性だって充分に考えられる。なんて言ったって凛花の言うところの「鉄板の」第一発見者なのだから。
「まあ待て。それより何でお前は音楽室になんて行ったんだ? まずはそこから聞かせろよ」はやる太刀川を凛花が制する。
確かにそれは私も気になっている点だ。そもそもなぜ彼が、不釣り合いとも言える音楽室に、しかも放課後の誰もいない時間帯に訪れたのか?
「ああ、その件か」
尋ねられた彼は「早く犯人を名指ししたい」と言う気持ちが顔に表れていたが、一旦腰を落ち着かせると、グラスの水を一気に飲み干してから話し出した。
「実は今日、手紙をもらったんだ」
「手紙?」
「ああ。今日帰りに机の中に手紙が入ってたんだ『午後三時に音楽室まで来て下さい♡』ってな」
―――帰り際? そういえば彼が凛花の脇に立ちすくんで、何かを手に取っていたことを思い出す。
「で、誰からの手紙だったんだよ」
「誰から? 知らねえよそんなの! 名前なんて書いてなかったしよ」
「はァ? 書いてなかった? それなのにノコノコと訪ねていったのかよ!」
「ああ、きっと名乗るのが恥ずかしかったんだろうってな。俺のファンにはそう言うヤツも多いからな」
「呆れた! ばっかじゃなの!」
「なんでだよ、どこがバカなんだよ!」
お約束のように睨み合う二人。ここに来てまた一触即発だ。しかし、今度は凛花が堪えた。
「・・・ま、どうでもいいわ。オマエが不純な動機で音楽室に行ったのはわかった。それが三時な。で・・・結局、オマエが知ってる「犯人」ってのは誰なんだよ」
若干、投げやりな凛花の言葉に表情を曇らせた彼だったが、ようやく自分の出番が来たとばかりに大きく息を吸い込む。そしてその場にすっくと立ち上がると右手の人差し指を大仰に一本立て、充分に貯めを作ってから言い放った。
「犯人は、
ーーー高倉?
一瞬、誰のことか解らなかった。高倉って誰だっけ? 聞き覚えのある名前だけど・・・。
すると今まで極端に発言の少なかった大越さんがつぶやいた。
「高倉先輩・・・ですか?」
高倉先輩? そうそう、思い出した。音楽部の部長、三年の
「そうだ高倉だ! アイツがやったに違いない!」
「高倉先輩が? なんで先輩がアンタになんて関わるのよ! アンタのことなんて相手にしないでしょ!」そう辛辣に言う凛花も思い出したのだろう。何を隠そう、その高倉先輩、音楽部の部長を務めるだけでなく、その美貌で校内の男子に絶大な人気を誇る学校きってのとびきりの美少女だ。昨年は二年生ながら「ミス柳都」にダントツで選出された全男子憧れの的。そんな彼女が太刀川なんて相手にするわけがない、そう凛花は言いたいのだろう。
「違うさ、アイツは俺に恨みを持っているんだ。まあ、正確にはアイツの妹が、だがな」
「妹? 高倉先輩の妹とアンタとなんの関係があんのよ?」
高倉先輩には妹がいる。確か同じ柳都学園の一年生のはず。しかしその彼女と彼との接点とは・・・? そう思っていると、太刀川が少しトーンを落として話し始めた。
「実はよ、俺、先月まで
「それで俺たち、先月の頭に別れたんだ! そしたらアイツ、学校に来なくなってよ! 高倉が言うには、妹がそうなったのは全部俺のせいだ、責任を取れって言うんだ。それも一回や二回じゃないんだぜ! とんだとばっちりだろ!? しかも文句言うだけじゃなく、ついに実力行使に出やがった! 絶対に許せねー!!」
興奮しているのだろう、息継ぎもそこそこにそこまで話すとテーブルの上にあった凛花の水を奪うと、またもや一気に飲み干す。
―――太刀川と高倉先輩の妹が交際? 私はどう言っていいのか解らなかった。太刀川の言う事が本当だとしたら、高倉先輩が怒るのも頷ける。しかし、これだけ過激な行動に出るだろうか? 直接話した事はないが、彼女のそのクールな印象からはイメージしずらい。さすがの凛花も考えあぐねているようで珍しく大人しくしている。そんな中、意外にも最初に口を開いたのは大越さんだった。
「高倉先輩、部活休んでいましたしね」
「ん? どう言うこと?」意外なところからの発言に思わず問いかける。
「県大会が控えているのにずっと学校も部活も休んでて・・・だからあり得るかなって」
「えっと・・・大越さん、何が言いたいの?」
「だから!」そこで一旦、言葉を切ると彼女は、今までにない大きな声で私たちに向かって言った。
「私も太刀川君を殴ったのは高倉先輩だと思います!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます