第139話 水棲深淵ボスの攻略法

〝うわああああああああああああ!?〟

〝なんだよこれええええええええええええ!?〟

〝なんかもう浮遊カメラの俯瞰視点でもなにがなんだかわけわかめですわああああああああああ!?〟

〝そりゃお嬢様なら当然逃げずに戦うんだろうけど……ホントに大丈夫なのかこれ!?〟



 荒川ダンジョン深淵第1層最奥。

 前人未踏の領域にてボス戦に挑むカリンの配信動画には、無数のコメントが書き込まれていた。そのほとんどは悲鳴じみた絶叫で、カリンの実力を信頼している者たちですら緊迫を隠せない。


 しかしそれも当然だろう。


 ドッパアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

 ズガガガガガガガガガガ!!!

 ズパアアアアアアアアアアアンッ!!


 上空高くへと避難している浮遊カメラが映し出すのはこの世のものとは思えない水流の暴虐。


 追尾する津波がカリンを執拗に狙い、触手のように蠢く水流が360度あらゆる角度から叩き込まれる。凄まじい圧力から放たれた水のレーザーがダンジョン壁を当然のように切り刻み、次の瞬間には壁の破片を取り込んで切れ味を増したウォーターカッターが空気を切り裂き音すら断ち切る。


 清流が縦横無尽に宙を舞う幻想的な光景はしかし、一瞬の判断ミスが即座に死へと繋がる水明の処刑場だ。


「層域そのものが敵みたいなものという点では同じですが、ダンジョン壁と違って水はもともと流体。操作速度が天地の差ですわね!」


 その迫り来る水の猛攻を魔龍鎧装・嵐式のふざけた空中機動力と埒外の感知スキルで完全回避し、あるいは拳圧で吹き飛ばしながらカリンが分析を口にする。


 さすがにフロア内に満ちるすべての水を一度に操れるわけではないようだし、水に激しい衝撃を与えれば一瞬操作も解除されるようだが……それでも水龍が操る水の速度と物量は圧倒的。その脅威は蠢くダンジョン壁を軽く凌駕していた。


 さらには、


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 ドッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!


 水中に身を潜める深淵第1層ボス巨大龍がギガントフォートレスをも超える白銀の巨体で身じろぎすれば、それだけで水流操作能力とは別に巨大な〝水の壁〟が発生。


 ウォーターカッターや追尾してくる津波に対処するカリンの逃げ場を塞ぐようにボス部屋上空を埋め尽くしてくるのだ。大質量を伴う水の壁は嵐式による風の鎧でも防ぎづらく、限られた空間内で回避するほかないという点でも極めて凶悪な波状攻撃といえた。



〝おいおいおいおいマジで大災害じゃねえかよ!?〟

〝空間魔法使いとの戦闘でわかっちゃいたけど深淵ボスやっぱバケモン揃いですわ!?〟

〝おいこれさっきのダンジョン壁操作よりよっぽどヤベぇぞ!?〟

〝階段降りてきたとこの陸地も一瞬で飲み込まれてるし空飛べなきゃ即死だろこれ!?〟

〝せめてまともな安置(陸地)用意してくれよ!!〟

〝い、いやでもお嬢様これ攻撃避けてるぞ!?〟

〝またお嬢様がカメラのフレームとわたくしたちの動体視力超えてスカイフィッシュになってる!〟

〝うおおおおおおおお! 嵐式装備お嬢様ならいけますわああああああ!〟



 しかしフォートレス戦時よりさらに成長していることもあり、カリンはその猛攻を引き続き全弾回避。ドレスにすら攻撃をかすらせず超高速で空を飛びまくり、相手の攻撃をあらかた観察し終えるカメラに収めたと同時に懐から取り出すのはダンジョン壁から作られたクソでかハンマーだ。


「それではそろそろ――こちらからもいかせていただきますわ!」


 水の猛攻を搔い潜るように空中で回転。

 遠心力と重力、そして埒外の膂力を重ねて超重量武器を水面に向けて叩き込む!


 ドッボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!


 先ほど深淵第1層の水棲深層ボスたちを一網打尽にしたダイナマイト漁のような一撃が再び水中に凄まじい衝撃波を発生させ、配信画面すら揺らしてみせた。



〝うわ!? 敵の攻撃!?〟

〝いやこれお嬢様のダイナマイト漁(技名)ですわ!?〟

〝この弾幕を全回避してるうえに反撃までしてるうううう!〟

〝っぱお嬢様ぱねぇですわ!?〟

〝やったか!?〟



 激しい 攻撃を完璧に見切り反撃に転じたカリンに歓声があがる。


 だが――その水棲深淵ボスの有する水流操作能力の真に厄介な点は、攻撃面ではなかった。


「やはり深淵。そう簡単にはいきませんわね」


 そう漏らしたカリンの言葉に応えるように、


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」


 ドッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!


 無傷の水龍が咆哮をあげ、お返しとばかりに大津波を引き起こす!



〝え〟

〝は!? なんですのこいつ!? ろくにダメージ受けてない!?〟

〝てかこれまさか無傷か!? クラーケンでもねぇのに!?

〝なんで!?〟



 その巨体に見合う地層のように分厚い甲殻と、龍種特有の堅牢な鱗で内部に浸透するはずの衝撃波さえ吸収してみせた――だけではない。


「どうやら水流操作能力を応用して衝撃が効かない深さまで一気に逃げたみたいですわね。さっき凄い速さで泳いでましたわ」



〝はあ!?〟

〝うわマジか……!?〟

〝あの水流操作そんな使い方もできんの!?〟

〝いくら深淵の魔法生物つってもなんかあの巨体で絶対ありえん速度で泳いでるように見えたと思ったらそういうことですの!?〟

〝ボスなら多分素の防御も硬いんだろうから完全に効果範囲から逃げたわけじゃないだろうけど……なんにせよダメージない距離まで一瞬でってどんな速度で泳いでますの!?〟

〝それはさぁ、ズルじゃん!?〟



「でしたら、次はこうですわ!」


 キュイン――ドッパアアアアアアアアアアアン!!


 敵の挙動を分析したカリンはすぐさま次の手を撃つ。

 魔龍鎧装・嵐式の超速度で水面へと猛スピードで突進し、その速度を上乗せした拳を一撃。

 大量の水が舞い上がって水面が割れれば水中深くまで空気の道が伸び、そこに凄まじい速度で投げ込まれるのは複数の衝撃波爆弾だ。


 水流操作による遊泳速度で一気に水中深くまで逃げられるなら、より水深の深い場所でより強力な衝撃波を炸裂させればいいという力業。


 だが――、


「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 ドッパアアアアアアアアアアアアン!!


 先ほどのクソでかハンマーでカリンの投擲攻撃を強く警戒していのだろう。

 

 水龍は再び高速で距離を取ると同時に、投げ込まれた衝撃波爆弾に数多の水流を殺到させてていた。


 結果――ドパパパパパアアアアアアアアン! 


 激しい水流にまとめて押し返された衝撃波爆弾は水中ではなく空気中で衝撃を解放。

 水中に衝撃を伝播させることなく完全な無駄撃ちに終わる。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 そしてそのふざけた威力に今度こそ水面近くへの浮上は危険と判断したのだろう。 


 水龍は衝撃波のもっとも届きづらい水底で停止。

 自らの身体で大津波を発生させるなどの危ない橋を渡ることをやめて攻撃を完全に水流操作のみにシフト。


 水棲生物らしく視覚だけでなく聴覚や魔力感知で周囲の状況を把握しているのか、中空のカリンを一方的に追い立てはじめた。



〝はあああああああああああ!? 

〝なんだアレいま衝撃波爆弾が押し返されてなかったか!?〟

〝あの水流操作防御面の性能ずるすぎねぇ!?〟

〝水没ステージとの相性エグすぎだろ!?〟

〝てかあの水龍まったく姿が見えなくなったんだがまさか水底に引きこもりやがった!?〟

〝それはお前、あかんやろお前ぇ!〟

〝引き撃ちより酷いなにかだろこれ!?〟

〝ヒッキー撃ちやめろや!〟



 その巨体に反したこすい戦略――探索者を安全かつ確実に潰す最悪の安定行動に悲鳴をあげるのは視聴者たちだ。



〝おいおいマジか!〟

〝こんなん続けられたらジリ貧でしてよ!?〟

〝なにかありませんのデスワームちゃんで切り裂くとか!〟

〝あの巨体でしかも水のなかとなるとデスワームちゃんの斬撃範囲で致命打になるか怪しくねぇ!?〟

〝そもそも水面で居合い構えてたらさすがに飲み込まれそう〟

〝雷式……はさすがにあの巨体&水深だと出力不足か!?〟

〝水中でさっきのプラズマパンチ――も無理ゲーだろこれ!〟

〝水流操作してくる水棲生物に水中戦はさすがにカリンお嬢様でも分が悪いとかそういうレベルじゃねぇよ……〟

〝このボス部屋で水操ってんのほんまクソじゃね!?〟

〝いちおう敵の攻撃は全部避けれてるけど……〟

〝こっちから決定打ないなら消耗する一方だぞ!?〟

〝やっぱいったん引き返して対策練ったほうがよくねえか!?〟

〝どうすんだよこれ……〟



「うむむ。これはちょっと面倒なことになりましたわね」


 コメ欄ほどではないにしろ、カリンもまた深淵ボスが見せた元も子もない戦法に攻撃を回避しながら「どうしたものか」と頭を捻る。


 中空からの衝撃波が通用しないなら水中で直接衝撃を叩き込むのが一番だろうが、コメント欄にもあるようにそれは悪手だろう。相手はかなりの水流操作能力持ち。近づく前に絡め取られるのがオチだし、荒れ狂う水のなかで放つことになる不完全な打撃があの堅牢な巨体にどこまで通用するか不明だった。

 

 いちおうお優雅を捨てれば強引に突破できなくもなさそうだが……それだけの戦闘になると水中マスクがもたないし、そもそもあの水流操作持ち相手だといくら水中仕様とはいえ浮遊カメラがついて来られない。


 深淵ではさすがにお優雅でない攻略配信になってしまうかもしれないと事前に覚悟はしていたのでそれはまだいいのだが、水中に潜ったまま配信実況できない状況が続いて視聴者を不安にさせすぎるのは今回の配信の趣旨からしてできれば避けたいところだった。


「うーむ。ボス部屋を満たすこの大量の水さえなければそう難しい相手でもないんですけど……って、あ」


 と、そのときである。

 口をついて出てきたその身も蓋もない自分の言葉にカリンははっと目を見開いて。


「そうですわ! こういうときこそ、この前運良くパワーアップできたコレを使ってみますの! ギリギリ容量足りるはずですし!」



〝え〟

〝お嬢様いったいなにを〟

〝え、なんだ?〟



 突然響いた場違いな黄色い声に視聴者たちが戸惑うなか。

 カリンはその懐からあるものを取り出した。



      〇



「ふぅ」


 アメリカ某所。

 見るからに高級な家具や酒の並ぶその隠れ家的な一室に、少々うんざりしたような男の溜息が響いていた。


 アーネスト・カービィ。

 

 ダンジョン先進国アメリカに所属する国家転覆級探索者が1人にして、カリフォルニアで発生した深淵級ダンジョン崩壊を実質単騎で鎮圧した特級戦力である。


 その実力は国家転覆級の称号どおり、世界最強の軍隊と多くの強力な探索者を抱えるアメリカをして「ヤツの機嫌を損ねるな」と言われるほど。30代にして国を左右するほどの実力と資産を築き、普段は勝手気ままに人生を謳歌している自由人だ。


 だがそのストレスと無縁そうな彼はいま、少々疲れたような顔をしていた。


 それというのも……彼はカリフォルニアでのダンジョン崩壊を鎮圧したあと、クソッタレな事件を起こしてくれたテロリストの捜査に協力していたのだ。


 勝手気ままで多くのことが思い通りな国家転覆級ではあるが、さすがにこれだけの大事件となれば悪影響と無縁ではいられない。たとえば探索の前に必ず利用していたダンジョン近くのピザ屋が休業してしまったとか、予想される大恐慌の煽りでピザ屋閉店の流れや質の低下が拡大しそうとか。


 なので今回ばかりは珍しく政府に協力して、テロリストたちの身元特定や容疑国のひとつであるラヴィリスタンとの繋がりなどを調べるため色々と駆け回っていたわけなのだが……今日にいたるまでほとんど成果らしい成果がなかったのだ。


 まあいくら頭抜けた能力を持つ転覆級とはいえ捜査の専門家ではないから仕方ない面はあるのだが……それにしたってまったくの成果ゼロというのは不気味なことこのうえなく、久しく感じることのなかった徒労感というやつに思わず息を吐いてしまったというわけだ。


「ま、なんとかなるさ。動いているのは俺1人というわけじゃないんだから」


 そうしてカービィは毒耐性スキルを意図的にオフにして、気晴らしにお気に入りの酒を飲みながらスマホでネットサーフィンにしゃれ込もうとした――そのときだった。


「なんだって……?」


 その指先がふと固まった。

 

「あの突然変異ミュータントお嬢様がアラカワダンジョンの崩壊を食い止めるための深淵ソロ攻略を配信してる……!?」


 それはいま国境や時差を超えて世界中で話題になっている配信。

 崩壊を予告された大ダンジョンの核破壊にあのお嬢様が挑戦し、その様子をいままさに全世界に発信しているというのだ。


 いちおう日本政府がティーンエイジャーである山田カリンに攻略を依頼したというニュースは以前カービィも耳にしていたし、政府高官がなにやらざわついていた記憶もある。


 だがここしばらくクソッタレなテロリストの捜査にひたすら奔走していたこともあり、配信までするという話を聞き逃していたらしい。というか、どこかで聞いたはずだがいくらなんでも情報の錯綜がすぎるとほとんど無意識に聞き流してしまっていたようだった。


「初見の深淵を1発クリア……それもテロの恐怖に怯える人々を安心させるために配信しながらだって? 正気なのか……?」


 配信中にドレス姿で深遠に突っ込む、あのダンジョン女王と同盟関係を結ぶなど数々の騒ぎを起こしてきた山田カリンのことは一探索者としてチェックしており、その底知れない強さやイカれ具合は把握していたつもりだったが……よもやここまでとは。


 深淵崩壊を事前に食い止めるというだけの依頼であれば自分も受けただろう。だがテロとの戦いに必要なこととはいえ(そして政府からすればそう依頼せざるを得ない事情があると理解できるとはいえ)、少なからず気が散ってしまううえに手の内をほぼ晒してしまう配信をしながら、それも人々の不安を払拭し楽しませるなんて姿勢でこのハードな依頼をソロで受けられただろうか。


 あのお嬢様はどうも現実とコミックの区別がついていない疑惑があるなど頭のネジが飛んでいるようだが…それを差し引いても尋常ではない。


 さすがに少々無謀ではないかと思ったのだが……しかし配信が進むにつれそれがどうも杞憂らしいとカービィは認識を改めていた。


『どりゃりゃりゃりゃりゃですわあああああああああ!』


 ドッッッッボボボボボボボボボオオオオオオオオオオオオン!!!


 彼女は実際にいつものドレス姿で深淵まで突き進んだばかりか、悪名高い水中ステージでもその格好のまま危なげなくモンスターたちを蹂躙。不安と恐怖で満ちていたネットをイカれた言動とぶっ飛んだ実力で大混乱の熱狂に陥れていたのだ。


 まだまだ攻略は道半ば、どころか深淵は序盤も序盤。本当に深淵最奥まで攻略できるのかと心配する声のほうが多数派だが、それでも確実に配信前とは雰囲気が変わりつつあった。 


「おいおい……こんなのまるで本物のセツナ・キリュウインヒーローじゃないか……なるほど、人を見る目があるらしいあの丸くなった狂犬ダンジョン女王が惚れ込むわけだ……」


 いままでも山田カリンという規格外ティーンの配信は何度も見てきたが、こんな事態でもブレないお優雅っぷりにカービィの口から思わずそんな声が漏れる。いくら頭のネジが外れているとはいえここまでくればシンプルに賞賛ものだ。


 気づけばカービィ自身もまた対テロリストの捜査が滞っていることを一時忘れて配信を眺めており、「そのイカれた攻略でクソッタレなテロリストどもをコケにしてやれ!」と応援していた。


 だが……深淵という魔境はさすがにそこまで甘い環境ではなかった。


『オオオオオオオオオオオオッ!』


 水没エリアの先に待ち受けていた超大型ボス水龍にお嬢様が手こずっていたのだ。


「おっと、ガラにもなくピンチじゃないかお嬢様」


 カリンならばお優雅な攻略とやらをやめれば負けることはないだろう。

 

 だが相手は厄介な水流操作能力を持つ深淵ボス。倒すことはできてもいままでのようなゴリ押しで挑めば相応の消耗を強いられることは間違いなかった。


 この先なにが出てくるかわからない初見深淵。それもテロリストがなにか手を加えている可能性が高いとなれば、こんな深淵序盤での消耗は見過ごせないものがあった。


 となれば、


「ちょっと無粋だが、ここは助けに入らないとな!」


 幸いにして、カービィはいまカリンが苦戦している深淵ボス――水神龍ポセイドンとは何度も戦ったことがある。


 確かにあの水流操作とそれを最大限活かせるボス部屋のセットはかなり厄介だ。無理をして水中に突っ込んでも、あの巨体に見合わない繊細かつ迅速な水の操作で溺死させられる可能性が高く、水を使った防御性能はいま動画で配信されているとおり反則級。水中深くに引きこもればほとんど無敵にも思える。だがそこには明確な攻略法があり、運良くそれを発見できたカービィはそれ以来ポセイドンをカモにしているのだ。


 翻訳のマジックアイテムと手元のデバイスを操作して、カービィはすぐさまスパチャの準備を終える。


 通常、様々なリスクや煩わしさを回避するために国家転覆級と呼ばれる探索者たちは素性が辿られるような真似は決してしない。


 だがいまこの瞬間、(いくらコミックと現実の区別がついてない疑惑があるとはいえ)あのクソッタレなテロリストの思惑をぶち壊し人々の不安を晴らすために、自分よりも二回りは年下のティーンエイジャーが大勢の前で命をかけているのだ。たかだか身バレ程度のリスクなど誤差も同然。


 様々な事情からいますぐ援軍にとはいかない以上、せめてこのくらいしなければ同じ転覆級として……いや1人の大人として立つ背がなかった。



 ¥50000 @Captain pizza

 Hey! 日本の素敵なミュータントお嬢様! どうやらそのでかい魚のお優雅な調理に苦労してるみたいだな! ここで耳寄りな情報だ! そいつの弱点は電気! そこまで強い威力でなくていい、ボス部屋を埋め尽くすそのクソッタレな水たまりに一発お見舞いしてやれば水流操作を封じることができるんだ!



 ¥50000 @Captain pizza

 魔力由来の電気は魔水相手でもそこそこ通るからな! そうすりゃそのデカブツは電撃の不快感と水流操作ができないことにキレてこっちを直接潰そうと浮上してくる。そこを叩けば楽勝だぜ! 水面に近づかなきゃいけないから注意は必須だが、君の持つライシキの出力を強引にあげればどうにか必要な威力に届くはずだ!


〝ん……?〟

〝お、おいなんだこのスパチャ!?〟

〝深淵ボスの攻略法!?〟

〝え、なにこれガチ情報!?〟

〝いや深淵の情報とかモノホンが書き込まれるわけなくね?〟

〝おいおいこんな状況で誰だよこんな悪ふざけしてるやつ!

〝さ、さすがに愉快犯かなんかじゃあ……?〟

〝いやでもこのコメ欄たまにお嬢様の戦闘見えてるっぽいコメント湧くしもしかしてガチで……!?〟

〝本当だったら情報料いくらだよって話だしさすがにデタラメだろ……!?〟

〝でもなんか妙な説得力が……なんにせよ試すだけ試してもいいのではなくて……!?〟



「まあ確かに値段をつけるとしたら数十億はくだらないだろう情報だが……これはそういう話じゃないもんな」


 どよめくコメント欄にカービィは呟く。

 

 こんなクール&クレイジーな人材に万が一があってはいけないし、繰り返しになるがあんなティーンエイジャーが命を張ってるんだ。たかが数十億の情報料なんて些事である。


「むしろいまの問題はお嬢様が情報を信じてくれるかどうかだが……そもそもいまはあまりコメントを見ていないようだし、もう少し課金しておくか? 確かポセイドンの素材もあったし画像も添付すれば多少信憑性も――」


 と、戦闘に集中しているせいかさすがにコメ欄のチェックが甘くなっているカリンの目にいち早く情報が届くようカービィが再びスパチャをしようとした――そのときだった。


『そうですわ! こういうときこそ、この前運良くパワーアップできたコレを使ってみますの! ギリギリ容量足りるはずですし!』


「え?」


 カリンがいきなりそんな黄色い声をあげて……懐からなにかを取り出した。


 それはこれまでの探索でもカリンがたびたび使用していたマジックアイテム。

 手の平サイズの革袋――アイテムボックスで。


「なんだ……?」


 この土壇場でいきなりそれを手に掲げてみせたカリンに「一体なにを……」とカービィをはじめ視聴者たちが首を捻った次の瞬間――ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


 水 流攻撃を搔い潜ったカリンが水面に革袋の口をつけて――凄まじい勢いでボス部屋内の水を吸い込みはじめた。


――――――――――――――――――――――

文字数が多くなったりなんなりの事情でちょっと分割ですわ…!


そしてお嬢様バズ、今日で連載開始からちょうど1周年ですわ!

皆様の応援のおかげで(いや本当にめちゃくちゃ応援していただいて)ここまで連載を続けられたばかりか、この1年で累計18位、☆にいたっては上から6番目(多分)というとんでもないことになって非常にありがたいですの。


この調子でより多くの方々にお嬢様の大暴れが届くよう、面白いと思っていただけたら☆やフォローで応援していただけると嬉しいですわ!

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