第55話 若手合同訓練


 額縁配信に端を発するブラッククラン騒ぎが一段落して少しした頃。


「皆様ごきげんようですわ~。先日告知していた通り、本日はお警察様と大手クランの新人月末合同訓練にお邪魔する配信になりますの!」



〝ごきげんようですわ!〝

〝待ってましたわあああああああああ!〝

〝国を動かしたバケモノお嬢様キタアアアアアアアア!〝

〝警察が完全に味しめてて草ァ!〝

〝カリンお嬢様立て続けの警察案件なんて大丈夫ですの!? そろそろダンジョンで暴れて色々と発散したほうがよろしいのではなくて!?〝

〝カリンお嬢様を戦闘狂かなにかだと思ってるお嬢様がいるな……〝

〝まあ大体似たようなもんですわ!〝



 配信開始と同時に大量のコメントが流れていく。

 先日の騒ぎでカリンのチャンネル登録者数は最終的に700万を突破し、平均同接も増加。

 本来のカリンのチャンネル趣旨とは少し違う配信にもかかわらず、すぐさま万単位の視聴者が集まっていた。


 今回の配信。

 それは警察が主催する探索者合同訓練の紹介だ。


 前回のコラボ(という名の案件)で〈神匠〉だけでなく通常の警察官志望者まで増えたことに全力で味を占めた警察側から再度依頼があり、若手の育成現場についても紹介することになったのである。


「ええと、けど最初に断っておきますとわたくし、こういう紹介動画というかレポ動画みたいなものってやったことがなくて……もしグダついたりしたらそのときは申し訳ありませんわ」



〝大丈夫大丈夫ですわ!〝

〝カリンお嬢様は多分普通にやってるだけで十分おもしれーですの!〝

〝ナチュラルボーンおもしれー女だから……〝

〝警視総監の隣で壊れたラジオと化してたときより酷いことにはならないだろうからヘーキヘーキですわ!〝

〝アレはアレで面白かっただろ!〝

〝面白いのベクトルが違うんだよなぁ〝



「そ、そう言っていただけますと助かりますわ!」


 ぐんぐん増える同接にはじめての配信形式。少なからず緊張していたカリンは温かい?コメントに少しばかり肩の力を抜く。先日の放送事故一歩手前な黒歴史配信についてのコメントは全力で見て見ぬ振りしつつ、配信へと意識を切り替えた。


「さて、それでは早速、訓練の様子を見学していこうと思いますの!」


 言ってカリンが浮遊カメラの位置を調整すれば、映し出されたのは都内にある警察所有の訓練場だ。ダンジョンでレベルを獲得した者たちが全力を出すことを許される数少ない場所のひとつ。


 そこでは既に多くの若者がいくつかの組に分かれて訓練に精を出していた。


 参加者の多くは警察の若手で、そこに普段から警察と連携することの多い大手クランの新人が加わっている。各組織の中堅実力者が模擬戦や基本的な体術指導の音頭を取っており、掛け声や戦闘音が響いていた。


 今回の紹介動画では特に案内役が設定されているわけではなく、それぞれの訓練を仕切る講師や代表的な参加者にカリンが話を聞いていく取材形式だ。本当は案内役ありの台本も用意してあったのだが、カリンお嬢様には覚えられそうになかったのでボツになったのは秘密である。


「あ……カリンお嬢様……!」


 カリンが訓練場の入り口から一番近いグループに目を向けたところ、弾んだ声をあげて駆け寄ってくる者がいた。


「あら穂乃花様。訓練、頑張っておられるようですわね!」


「はい、あれから対探課の人にもよくしてもらって……今日も良い経験になるからって優先して参加させてもらえたんですっ」


 神代穂乃花。

 カリンがブラッククランから救い出した〈神匠〉持ちの少女だ。



〝穂乃花様キタアアアアアアアアアアア!〝

〝前よりさらに顔色よくなってますわー!〝

〝めちゃくちゃお元気そうでなによりですの!〝

〝本当に良い移籍先に恵まれたんだなって顔でわかりますわ……!〝

〝流れる健康的な汗が綺麗で思わずペロペロしちゃいますのー!〝

〝↑粛正ですの〝



 穂乃花の登場によってコメントが盛り上がり、同接もぐんぐん増える。

 充実した笑みを浮かべる穂乃花にコメント欄が祝福を叫び、カリンもまた「そうですか、それはなによりですわ!」と満足そうに頷いた。


 カリンが今回連続で警察案件を引き受けたのは実のところ、穂乃花が新しい職場で上手くやれているかどうか確認しておきたいという理由が大きかった。


 警察は信用できるし対探課もこれ以上ない待遇を約束してくれたが、しかしそれで穂乃花が職場で上手くやれるかどうかは別の話。なので早いところ通常のお優雅ダンジョン配信を再開したい気持ちをおさえ、実際に現場を見ておこうと今回の案件を受けたのだ。


 そして実際に見てみた感じ、どうやら心配は無用な様子だった。


「うわっ、本当にカリンお嬢様が来てる……!?」

「すげぇ……本当にドレスだ……」

「アレで下層まで潜って無傷ってマジ……?」

「え、ちょっ、カリンお嬢様!? なんで!?」

「あれ? そちらさん、カリンお嬢様が来るって聞いてなかった感じですか? うちら警察組は聞いてましたけど」

「いや、私たちクラン出向組が聞いてたのはホワイトナイトの光姫さんの配信だけで……」

「こりゃ上がぐだってるやつだな。急な決定だったみたいだし」

「縦割り行政……」

「カリンお嬢様の告知見てまさかと思ってたけど本当に連絡ミスか……」


 とカリンの登場に近くの訓練参加者たちがにわかにざわついていたとき。


「おい神代!」


 訓練参加者のなかでも一際強い魔力を発する女性が荒々しく穂乃花に怒声をあげた。

 ほかの訓練参加者のようにカリン登場に浮き足立つことなく、彼女は苛立ったように言葉を続ける。


「てめえ次はあたしとの模擬戦だってのにいつまでくっちゃべってんだ! カリンお嬢様の弟子だかなんだか知らねえが調子に乗りやがって……! 次こそ土つけてやるから覚悟しな!」


「あ、そうだった。10連勝すれば交代だったのにまだ9連勝だったの忘れてた……」


 と、穂乃花は投げかけられた荒々しい声にもまったくひるまず、


「話の腰を折ってしまってすみませんカリンお嬢様……


 言って穂乃花は訓練参加者たちの輪に戻り、戦意満々の女性と対峙する。



〝穂乃花様!?〝

〝なんか警察の若手にしてはガラ悪いのがいるなと思ったら穂乃花様がもっとヤバくておハーブ〝

〝いまさらっと9連勝とか言ってませんでした!?〝

〝い、いやまああのブーツがあるなら若手合同訓練くらい余裕で無双できるっしょ〝

〝……え、けど穂乃花様、あの反則ブーツ履いてないように見えるのですが……?〝

〝え〝

〝ほんまやんけ!?〝



 コメント欄が指摘するように、穂乃花はいま、自らの手で作り出した魔法装備黒ブーツを履いていなかった。安全な対人戦で基礎戦闘能力を磨いてこいという対探課の方針に従い、今日は着用を制限しているのだ。


 今回の合同訓練に参加する若手の平均レベルは150。

 そんななかでも眼前の女性の実力は頭ひとつ抜けたレベル200。穂乃花の適正が加工職であることも考えれば勝負は目に見えていた。が、


「それでは、試合開始!」


 指南役兼審判の男性が声を張り上げてすぐ、勝負は決した。


「おりゃああああああ!」

「しっ!」


 対探課の先輩に連れられてダンジョンに潜り、既にレベル200となっていた穂乃花が相手の剣戟をひらりと避ける。加えて発動するのは、中層無双でさらに練度を増した、相手の防御も攻撃も先読みする感知スキル。


 さらに穂乃花が駆使するのは、対探課の先輩から「ひとまず最初にこれだけは」仕込まれた対人戦の基礎的な駆け引きだ。それらを組み合わせての戦いを既に9回も繰り返した穂乃花はブーツなしでの立ち回りも完全に掌握しており――ドゴンッ!


「うごおおおおおおおっ!?」

「そこまで! 一本!」

「……っ、ありがとうございましたっ」


 防御をすり抜けるように側頭部へ叩き込まれた回し蹴り。

 それが決め手となり一瞬で勝負が決まった。



〝うわあああああああああああああああああああ!?〝

〝マジかあああああああああああああああ!?〝

〝ブーツなしで普通に勝ってるううううううううううう!?〝

〝若手とはいえ合同訓練に参加してるってことは普通に有望な方々ですわよ!?〝

〝そのなかでも多分リーダー格やぞあのヤンキー女性警官!〝

〝なんですのこれ!? 着実に穂乃花様のお嬢様化が進行してますわよ!?〝

〝カリンお嬢様ほどぶっ飛んでないから逆に成長の度合いがわかりやすくて余計にビビりますわぁ……!〝

〝いやあの……穂乃花様、対探課採用決定からほぼ日数経ってないはずなんですがそれは……〝


 盛り上がるのはコメント欄だけではない。


「おおおおおおおお! 穂乃花さんすげえええ!」

「同期トップの猪股にもブーツなしでもう3勝目だしな……こりゃ本物だ」

「おいみんなこっち来てみろ面白いぞ! 贔屓で対探課に入れただけとか言ってたやつらが息してねえ!」

「ク、ソがぁ……! ダンジョンで鍛え直して次は絶対勝つからなぁ……!」


 模擬戦を見学していた訓練参加者たちも歓声をあげて穂乃花の勝利を称えていた。

 穂乃花の実力は警察内部でもしっかり評価されているようで、良くも悪くも体育会系で荒々しい面もある環境にしっかり適応できているらしかった。


「うんうん。やはり力があればどうとでもなりますわね!」


 とカリンが後方師匠ヅラでドヤ顔を浮かべていたところ――おおおおおおおおおおっ!


「お? あっちのほうでもなにやら盛り上がってますわね。行ってみますわ!」


 穂乃花たちの模擬戦組とは別の体術武器術指南の訓練グループ。

 そちらで穂乃花の10連勝に勝るとも劣らない歓声があがっており、カリンは模擬戦組への挨拶もそこそこに、模擬戦演習をひとまず完了させた穂乃花と並んでそちらへ足を向けた。


 するとその人垣の向こうで講師役をしていたのは――穂乃花やカリンと同世代の少女だった。


「――はい、いま見せたように、レベルの上昇とスキル獲得による戦闘力向上には著しいものがあります。それこそ小手先の戦闘技術を磨くことが馬鹿らしく思えるときもあるでしょう。ダンジョンでモンスター相手に実戦を重ねレベルを上げたほうがよほど効率が良いのではないかと。ですが! それはレベルがどんどん上がる探索者デビュー初期に陥りやすい落とし穴なんですね。これは父には内緒ですが、私もはじめてレベルを獲得したときは剣術なんて頑張らずに最初からダンジョンで鍛えたほうがいいんじゃないか、なんて思ったものです」


 甲冑をモチーフにした軽装鎧。腰に下げた日本刀。色素の薄い髪。

 凜とした面持ちに明るい笑みを浮かべて訓練参加者や浮遊カメラにハキハキと喋る姿は「剣道小町」という表現がぴったりな美少女だ。


 軽快な、しかし品があってわかりやすいトークは聞く者の耳を捉えて放さず、その場にいた誰もが少女の講義に聴き入っていた。


「……!? な、なんですのこの方……!?」


 と、聴衆たちのなかでも、少女の講義にもっとも衝撃を受けていたのはカリンだった。

 なぜなら、


(ド、ドチャクソお優雅ですわ……!?)


 ミリ単位の所作、姿勢、表情、雰囲気。

 どれをとっても上品なことこのうえなく、それこそまるでセツナ様に通じる本物の気品を身に纏っていたのだ。


 カリンが衝撃を受ける傍ら、コメント欄もその美少女の登場で一気に盛り上がる。



〝光姫様やんけ!〝

〝なんか配信内容かぶってるとか言われてたけど本当に同じ現場だったんですの!?〝

〝あ、光姫様もカリンお嬢様に遅れて配信開始してましたわ! ガチのダブルブッキングですのよ!〝

〝な、なんですのこの超絶美少女!? ガタイの良いおっさんたち差し置いて普通に講師役やってますけど……!?〝

〝光姫様知らないやつがいるってマジ?〝

〝カリンお嬢様もまったくなんも知らないって顔してたからセーフ!〝

〝この方は四条光姫様ですわ! 代々将軍家の剣術指南役を務めた武家名家の跡取り娘にして国内最強クランの一角ホワイトナイト所属、〝次の若手最強〟の呼び声高い実力派人気配信者でしてよ!〝

〝すげえ! ガチで本物のお嬢様配信者じゃん!〝

〝正真正銘のお嬢様ですわ!〝

〝本物のお嬢様配信者か……はじめて見た〝

〝あなたがた!? まるで偽物がいるかのようなその言い草はなんなんですの!?〝

〝お前らいつも見てるこのチャンネルをなんだと思ってんだ!〝

〝オラオラ! 「ナチュラルボーンお嬢様山田カリンの優雅なダンジョン攻略チャンネル」の文字が見えませんの!?〝

〝誇 大 広 告〝

〝景 品 表 示 法 違 反〝

〝パ チ モ ン チ ン ピ ラ お 嬢 様〝

〝怒濤の赤字コメントに草〝

〝渋谷と穂乃花様を救った黄金精神お嬢様に対してボロクソ言い過ぎだろww〝

〝あまりに連携力が高くておハーブ〝

〝精神は本物お嬢様だからセーフ!〝



「あ……もしかしてカリンお嬢様、光姫さんのこと知らない感じですか?」

「ご、ご存じですの穂乃花様!?」

「は、はい……私が色々と余裕をなくす前から有名だったので」


 穂乃花いわく、体術武器術指南エリアで指導役を務める美少女の名は四条光姫。17歳。

 正真正銘の名家出身で、「サムライガール」として海外を中心に大人気なダンジョン配信者とのことだった。カリンのように劇的な事件を解決したというわけでもないのに登録者数500万は尋常ではない。


 しかしそれだけの登録者を集めていると言われてもカリンには納得しかなかった。

 

 わかりやすい解説に軽妙なトーク。輝くばかりの立ち振る舞い。

 その凜とした容姿もさることながら、配信者としての地力が自分とは違いすぎるのだ。


 さらには、


「では実際に、スキルや魔力の関係ないただの技術でどこまでやれるか実演してみますね!」


 言って光姫が剣の柄に手をかけた瞬間――空気が変わった。

  

 体術武器術の指南エリアには、巻き藁を模した試し切り用の訓練用具が大量に設置されている。スライムと呼ばれる不定形モンスターの核を利用して作られた無限自己修復器具、通称「無限ズバズバ君」。


 なかでも光姫が鋭い目を向けるのは、斬撃に特殊耐性のあるスライムから作られた特注品だ。

 講義の最初、光姫と同じレベル900の講師がスキルを使っても切り裂けなかったという最高硬度の無限ズバズバ君である。


 そしてその無限ズバズバ君を――スパパパパパパンッ!


 風をも切り裂く鋭い剣技によって、光姫がスキルも使わずバラバラに切り裂いていた。


「― ―このように、磨き抜いた技術は時にスキルでのゴリ押しをも凌駕し、魔力伝導率の悪い訓練用の刀でもここまでの芸当が可能になります。レベル上昇速度は本人の資質に左右され、スキルは個々人の感覚と適正が違いすぎて指導は難しいとされていますが……体術は違います。鍛え上げた地力は彼我のレベル差を埋め、より強い敵を倒すことも可能となる。生き残る確率も上がり、結果的にレベルやスキルの成長に繋がります。ゆえに皆さんにも基礎を疎かにすることなく、今日はしっかり四条家の剣術および武器術や体運びの基礎を学んでいただけると嬉しいです!」



〝うおおおおおお!〝

〝やべえめっちゃカッコイイ!〝

〝すげぇ……同じレベル900がスキルありで切れなかったものをスキルなしでとか嘘じゃね? って普通は疑うとこなのに抜刀の動きが素人目にも洗練されすぎてて説得力しかねぇ……〝

〝剣速は速すぎてほぼ見えないけど体捌きが美しすぎる……〝

〝これは登録者数500万の風格〝

〝抜刀時の凜とした雰囲気と解説するときの笑顔のギャップでわたくし一目惚れですわ!〝

〝警察か大手クランに入ればこの本物お嬢様の指導が受けられるってマジ!?〝

〝いまならおまけでカリンお嬢様とエンカウントする可能性も高まるゾ!〝

〝超ハイリスクハイリターン〝

〝暗黒大陸か?〝



 カリンのチャンネルに光姫を賞賛する声が並ぶ。

 普通なら自分のチャンネルでほかの配信者が褒められるのは気持ちの良いことではないだろう。だが、


「わああああ! 本当に本当にすっげぇですわー!」


 この場でいま一番光姫を賞賛し目を輝かせていたのは、チャンネル主であるカリン本人だった。なにせいま光姫が見せた剣技が、このうえなく「お優雅」だったからだ。


 カリンが憧れるセツナお嬢様は基本的に徒手空拳での肉弾戦を得意とする探索者。

 だがいま光姫が見せた剣技にはセツナのお優雅さに通じるものが確かにあった。

 洗練された所作、完全我流のカリンだけでは辿り着けない〝品〟。

 ともすれば自分の「お優雅」なダンジョン配信の参考になるとさえ思わせる美しさ。


 ゆえにカリンはその剣技にパチパチパチパチ! と惜しみない賞賛を送りまくっていたのである。まるでヒーローショーを見に来た子供のように。


「わっ、なんだか凄く褒めてくれる方がいて嬉しいですね! 1人ずつ指導していくつもりでしたけど、せっかくなのでまずはあの子から――え」


 と、賞賛しまくるカリンに光姫が笑みを向けるのだが――カリンと目があった瞬間、その笑顔が一瞬で凍り付いた。


「え、あ……え……山田カリン……お嬢様……!? なんでこんなところに……!?」


 さらにはその整った顔立ちが青くなったり赤くなったりして――しまいにはとんでもなくこわばった顔つきになる。



〝!? 光姫様お顔がヤバいですわよ!?〝

〝い、いきなりなんだ?〝

〝わたくし昔から光姫様の配信見てますけどこんなお顔一度も見たことありませんわよ!?〝

〝カリンお嬢様の来訪知らなかったみたいだからそれで?〝

〝だからってこうはならんやろ。いくらカリンお嬢様が歩く爆発物とはいえ〝



〝光姫ちゃん顔ヤバいってぇ!〝

〝光姫は一体どうしたんだい!?(英語)〝

〝あー、カリンお嬢様って攻略内容がヤバすぎてダンジョン未経験者がダンジョンを侮るきっかけになりそうだから一部の探索者がちょっと警戒してるらしいし、光姫様もなにか思うところがあるとか?〝

〝初心者向け講座やってる光姫ちゃんなら確かにそういうの気にしそうだけど……もしそうだとしてもこんな露骨に表情に出す子じゃなくない?〝

〝なんか知らんけどカリンお嬢様ありがとう! 光姫ちゃんのレア表情コレクションが捗る!〝

〝↑変態ファンの心が強すぎる〝



 カリンのチャンネルだけでなく、光姫の配信でも困惑のコメントが流れまくる。

 それほどまでに光姫の様子はおかしなものだったのだが……光姫のお優雅な剣技にテンション爆上げなせいかカリンはそれに気づかない。


「まあ! 1人ずつ指導って、もしかしてわたくしも試し切りさせてもらっていいんですの!?」


「え? え、ええ、それは、もちろん……」


「嬉しいですわ! 指導風景の良い紹介になりますし、光姫様の剣技がお優雅すぎてすぐにでも真似したいと思ってましたので! 指導までしてもらえるなんて最高ですの!」


「……っ。そう、ですか……」


 なにやらさらに顔を険しくする光姫。配信中には絶対にあり得ない塩対応だ。

 しかしカリンは引き続きお優雅な剣技に夢中なようで、光姫の様子に言及することなく訓練用の刀を手にとりぶんぶんと軽く振る。


 そして、


「ええと、光姫様が見せてくださった素晴らしい構えは確か……こうでしたわね」


 カリンが光姫を真似て抜刀の構えを見せた。

 瞬間――ピィン。

 

「「「っ!?」」」


 一気に空気が張り詰めその場にいた者たちが息を呑む。

 光姫の様子がおかしいことに気を取られていたはずの全員が、ドレスで刀を構えるカリンに意識を奪われていたのだ。それほどの集中、鋭い目つき、高まる気。次の瞬間、


「――ふっ!」


 先ほど光姫が見せた剣戟と寸分違わない体捌きでカリンが抜刀を解き放った。


 瞬間――ボッ!!!!!!


 先ほど光姫が細切れにして既に回復が完了していた最高硬度の無限ズバズバ君。

 カリンの一太刀を食らったその1体と余波に巻き込まれた2体――まとめて3体が音もなく消し飛んだ。



――――――――――――――――――――――――――――

 先日告知しましたが、皆様の応援のおかげでお嬢様の爆速書籍化が決まりました! レーベルはガガガ文庫、発売日はなんと10月18日!

 近況ノートやTwitterでは既にカリンお嬢様のキャララフも出しているので、是非チェックしてみてください! 


(そして前回の本編更新で☆12000越えと言ってましたが、書籍化発表で一気に13000越えました。マジで嬉しいです、ありがとうございますですの!)


追記:あれ!? なんか更新されてますわ!? すみません、日付確認したはずなのに投稿日が一日早くなってました…。次回の更新は普通に水曜日なのでご了承くださいませ 汗

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