第52話 壊滅のブラックシェル
【穂乃花様】日本の平和を祈って鶴を折るスレpart100【おめでとう!】
57 通りすがりの名無しさん
本当に丸く収まってよかったですわ!
もう何万回目かもしれんが穂乃花様本当におめでとうですの!
58 通りすがりの名無しさん
いやぁ、穂乃花様がまさかの対探課栄転で決着がつくとはこのリハクお嬢様の目を持ってしても見抜けませんでしたわ……
59 通りすがりの名無しさん
お前はなんなら見抜けるんだ定期
60 通りすがりの名無しさん
この人、目が義眼なんだよね……
61 通りすがりの名無しさん
いやまあアレは見抜けなくてもしゃーないw
あと一番予想外だったのはなによりも警視総監コラボだわw
62 通りすがりの名無しさん
アレこそ予想できた人ゼロでしょwww
62 通りすがりの名無しさん
あんなもん予測できたらそれはもう未来人ですのよ!
63 通りすがりの名無しさん
万が一予測してた人がいても全方位から狂人認定されてそう
63 通りすがりの名無しさん
そういやそういうネタスレ立ってたなww
「わたくし未来から来たのですが、心配せずとも穂乃花様は警視庁対探課に再就職したしカリンお嬢様が警視総監とコラボして万事上手くいくので皆様ご安心なさって?」
「イカれてんのか」
「お薬の時間ですわよー」
「嘘つくならもっと上手いことやれ定期」
「あなた未来人の才能ありませんわよ」
「お母様の子宮から出直されては?」
64 通りすがりの名無しさん
おハーブ
65 通りすがりの名無しさん
しかしまあ〈神匠〉一斉雇用だけでも神対応だったのに警視総監まで引っ張り出してコラボ配信とか……警察これブラックシェルどころかいままで手が回ってなかったダンジョン犯罪や不良クランを一掃するくらいの気持ちだろ。お嬢様と手を組む宣言みたいなもんだったもんなあの配信
66 通りすがりの名無しさん
外部の未成年を犯罪者逮捕に駆り出すのはほぼ無理とはいえカリンお嬢様がバックにいるってだけで抑止力としてあまりに有効すぎる…
67 通りすがりの名無しさん
カリンお嬢様のバックに警察がいるんじゃなくて警察のバックにカリンお嬢様がいる構図なのほんま草
68 通りすがりの名無しさん
やはり力! 力こそがすべてを解決しますの!
力あれば憂いなしですわ!
69 通りすがりの名無しさん
カリンお嬢様の脳筋語録は正しかった……?
70 通りすがりの名無しさん
いやほんと、お嬢様には感謝だわ
まさかわたくしにこんな超優良転職先が見つかるなんて数日前までは考えられませんでしたもの
71 通りすがりの名無しさん
! その声まさか以前別スレで見かけた我が友「不遇な〈神匠〉持ち980」ではないか?
72 通りすがりの名無しさん
そそ。下手なこと書き込んじゃダメだから詳しくは言えないし真偽証明もできないけど
愚痴を聞いてもらった義理で少しだけ報告ですの
73 通りすがりの名無しさん
マジかよやったな!
74 通りすがりの名無しさん
穂乃花様だけでなくこっちもおめでとうですわ!?
75 通りすがりの名無しさん
ありがとうございますですわ!
元職場が(給料あげたりせず)必死にやりがいを説いて引き留めてきたけど対探課のあまりに誠実な対応に光の速さで転職完了ですの!
76 通りすがりの名無しさん
元職場ざまぁww
77 通りすがりの名無しさん
なんでこういう会社ってことごとくおバカムーブかますの…(´•ω•`)
78 通りすがりの名無しさん
頭良かったらそもそも社員に見限られるような経営&労働環境じゃないから、ですかねぇ…
79 通りすがりの名無しさん
まあまだわたくしが対探課でちゃんとやっていけるかもわからないですがひとまずそういうことですの。わたくし警察とお嬢様に一生忠誠を誓いますわ!
80 通りすがりの名無しさん
いい心がけですわ!
81 通りすがりの名無しさん
マジおめでとうですの!
82 通りすがりの名無しさん
これよく考えたら将来性抜群の〈神匠〉を忠誠心マックスで雇えるからガチでファインプレーの神施策だなwww
83 通りすがりの名無しさん
これを一晩で考えて関係各署を説得して回った人がいると思うと怖い&頼もしいですわぁ!
84 通りすがりの名無しさん
各方面ハッピーハッピーで本当によかったですの!
あとは元凶であるブラックシェルの処遇ですわね!
85 通りすがりの名無しさん
破滅は確定として問題はそれがいつか、どういうかたちに落ち着くかってとこだな
86 通りすがりの名無しさん
あ、なんかいま速報が――
●
穂乃花の対探課採用決定から時間は少し遡る。
「へ、へへへっ。どうにか生きて帰ったぜ。あの役立たず、最後に強化種の足止めでいい仕事してくれたじゃねえか」
穂乃花を見捨てて逃げたブラックシェルのメンバーたちは、ほくそ笑みながらダンジョンから帰還していた。
ダンジョンの守衛には何食わぬ顔で「強化種出現のイレギュラーで仲間が殺られた」「至急警報を流してほかの探索者たちを逃がしたほうがいい」などと報告。
あとは〈神匠〉を失ったことをどうクランマスターに言い訳するか……などと考えながらクラン事務所に戻ってきたのだが、その直後。
「お前らああああああああああ! なんだこれはああああああああああ!?」
「は? があああああああああああっ!?」
穂乃花を下層へ強引に連れて行ったパーティリーダー、レベル600の男が顔面を殴られて吹き飛んでいた。
元ブラックタイガー、レベル900のクランマスターに殴り飛ばされたのだ。
「がっ、は!? なっ、いきなりなにを……!?」
「いきなりなにを、ではない! これは一体どういうことだ!?」
鼻血を流しながら目を剥くパーティリーダーに、中年のクランマンスターが憤怒の形相でタブレットを突きつける。
そこに映し出されていたのはいま最も有名なダンジョン配信者、山田カリンの切り抜き動画。ブラックシェルのメンバーが暴言をまき散らしながら穂乃花を見捨てて逃げる映像だった。
既に数百万再生を回っている動画にパーティリーダーが「は?」と目を丸くしていれば、クランマスターが口角泡を飛ばす。
「お前ら……! 〈神匠〉持ちのガキを見捨てて逃げるだけならまだしも配信に映り込むとはいつからそんな間抜けに成り下がった!? ダンジョンでなにをやろうが勝手だが、揉み消す間もなく証拠がバラまかれる配信者にだけは注意するようあれほど言っていただろうが!」
「……!? い、いやそりゃ当然、警戒はしてたぜ!? ましてやイレギュラーに遭遇してたんだ! 動転してたっつってもいつも以上に周囲には気を配ってた! 周りに人間の気配なんざまったくなかったんだ! 配信者のカメラになんて映り込んでるわけがねえよ!」
特に、あの山田カリンが近くにいたのなら気づかないはずがない。
日常生活の場ならまだしも、あれだけの戦闘力を有する怪物が魔力の気配さえ漏らさずダンジョン内で暴れ回れるはずがないからだ。そんなことができるとすればそれはもう人間ではない。
しかし実際にパーティリーダーたちにまったく気取られることなくその暴挙が配信されてしまったのは事実なようで……ネットはブラックシェルを糾弾する声で埋め尽くされていた。
「い、いやでも、まだ慌てる必要はねえよ!」
パーティリーダーはクランマスターをなだめるように言う。
「なんかの間違いでカメラに映り込んじまったのはマジらしいが、炎上なんてどんだけ盛り上がろうがのらりくらり躱すか無視してりゃどうにでもなんだろ!」
人が最も嫌いなものは断罪されていない悪。
ゆえに炎上には大量の人間が参加して徹底的に叩くわけだが、同時に人々はすぐに悪が断罪されない展開が大嫌いでもある。ゆえに屁理屈をこねてのらりくらりと追及を躱していけばスカッとする瞬間がなかなかこないことに皆がうんざりし、離れ、どんな大炎上でも1ヶ月と経たず鎮火してしまうのだ。
「あの雑魚ガキはちょっと脅せば告発内容なんざ取り下げるだろうし、なによりうちのバックにはあのブラックタイガーがついてる。慌てなくともそのうち鎮火すんだろうよ」
政財界やマスコミ、ひいてはダンジョン庁にも強い影響力を持つ日本最強クラスのクラン、ブラックタイガー。 その下部組織として日々高い
いくら山田カリンがバケモノとはいえ所詮は武力だけの怪獣のような存在。
ゴ●ラに街は破壊できても合法的にクランを潰すことなどできはしないのだ。
このまま静観していればどれだけネットの連中が燃やそうが逃げ切れる。
と、ブラックシェルの面々は高をくくっていたのだが――その後24時間と経たず状況は激変していた。
「「「「「…………………………………は????」」」」」
いつまでも成長できない雑魚だと思っていたガキの馬鹿げた飛躍。
明らかに山田カリンのぶっ飛んだクラン結成を阻止し、穂乃花を保護するために行われた対探課の緊急人員拡充。
果ては警視総監が直々にあのバケモノとコラボして今回の件では決して手を抜かないと言外にアピール。
何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった状態であり、今後の対応について事務所ですりあわせを行っていたブラックシェルの面々は顔色を失っていた。
「……お、おいこれ……本気でヤバいんじゃあ……」
「い、いやだからどうした!」
弱音を漏らす幹部たちにパーティリーダーが声を張り上げる。
「昨日も言ったが俺たちにはブラックタイガーがついてんだぜ!? いまさら警察が本気になったところでそう簡単には――」
と、そこで真っ青になって震えていたクランマスターの電話が鳴った。
ブラックタイガーのクランマスター、黒井からの着信だ。
「そらきた! 上の指示に従ってりゃひとまず安泰だ!」
パーティリーダーが歓声をあげる。すると、
『残念だよ……うちの元メンバーが運営するクランがあのように酷い運営をしていたなんて』
電話から響いたのは、黒井の芝居がかった沈痛な声だった。
『だが更生の機会は生きてさえいればいくらでもある。しっかりと罪を認めてやり直すことを願うよ』
ブツッ。
「は……?」
パーティリーダーが唖然として言葉をこぼす。
「お、おいなんだよいまの……」
「切り捨てられた……」
ブラックシェルのクランマスターがガクリと項垂れて掠れた声を漏らす。
「うちから上納する補助金は多額だが、いまの世論と警察を敵に回してまで庇う価値はない。そういうことだろう」
「……は?」
唖然とするパーティリーダー。
だが次の瞬間にはわなわなと震え、
「ふ、ざけんなあいつら! いままで散々補助金をかすめ取っておいていざとなったらこれかよ! だったらこっちだって考えが――」
「なにをする気だバカがああああああああああああああ!」
瞬間、消沈していたクランマスターが昨日の比ではない勢いでパーティリーダーの顔面を殴りつけていた。
「黒井に報復でもするつもりか!? そんなことをすればお前だけじゃなく私まで命が危うい! 警察の世話になったほうが100倍マシだ! お前らの、お前らのせいでなにもかも終わったというのに、これ以上余計な真似はするなあああああああ!」
ドゴッ、バキッ、グシャアアアッ!
「お、おいこれ、本気の本気でヤバイのか……!?」
「逃げるぞ! とりあえず事務所は魔法でも放って証拠になりそうなもんを全部吹っ飛ばしてから――」
半狂乱でパーティリーダーをボコり続けるクランマスターにいよいよ危ういものを感じ、ブラックシェルの幹部たちが慌てて雲隠れの準備をはじめる。が、
「全員動くな!」
まるでその動きを合図にしたかのように事務所のドアが蹴破られた。
一斉に雪崩れ込んでくるのは、レベル1000どころではない魔力を漲らせる実力者たちだ。
「はいなんらかの証拠隠滅の動きを確認! 緊急性アリと判断してやむなくぶちのめします!」
「私たちの†
「かーっ、仕方ない! 街中で魔法をぶっ放そうとした現行犯相手には手荒な真似しても仕方ねえよなああああ!?」
「はぁ……普段からこれだけ速攻で逮捕状が出れば余計な仕事も減って楽なんだけどなぁ」
「「「「ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」」」」
警視庁刑事部探索者犯罪対策課。
色々な意味で取り逃しや証拠隠滅など許されない事案に投入されたのは警察の威信を賭けた過剰戦力。
カリンのコラボ配信前から事務所を密かに包囲していたオーバーキルにも等しい戦力により、ブラックシェルは1人残らず蹂躙。
拒否する低レベル者を強引に下層へ連れて行き見捨てたことによるダンジョン内遺棄容疑に加え、別件逮捕のため急いで裏取りした微罪を口実に緊急逮捕。ボロボロの状態で連行され、補助金の不正受給や未成年の酷使など立件に時間のかかる余罪を搾り取るための厳しい取り調べがはじまるのだった。
後日、大荒れの保護者会で徹底的に追及された穂乃花の学校関係者もそこに加わり罪を償うことになるのだが――それはまた別の話である。
―――――――――――――――――――――
次回、お泊まり回です
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます