ほたるとねこ
野坏三夜
釜猫さん
「それじゃあ今日最後だが、くじで席替えするぞー」
担任の小太りな先生の、気だるそうな掛け声でそれは急に行われた。何度も席替えの要望を言っていたそれに喜ぶマジョリティがいれば、残年がるマイノリティもいた。ちなみに俺は後者の方。隣のヤツは同じバレー部の頼れる男だったのに、と悲しんでいる。(たまたま男子がこのクラスは多く、何個か男のペアができていたのだ)
「まあ、そんな気落ちするなって。クラス自体は変わらないんだし」
ぽんぽんとそいつは肩を叩くが、そう簡単に立ち直る訳もなく。俺にとって異性が隣になる席替えとは、いい思い出があるものじゃない。小学生は目つきのせいで、隣の席になった女の子に泣かれ、中学生は好きな人じゃないと女の子に怪訝そうな顔をされるし……。更に中三から高校にかけては、身長が伸びに伸び、小さい女子には怖がられる始末。……まぁ、端的に言えば、女子が苦手なのだ。
「また森田が隣にならないかなぁ」
「お前、女子と隣になりたくないんか」
「なりたくない。知ってるだろ、苦手なの」
「まぁ。んでも、もうそろそろ克服しないとじゃないか? 」
それもそうだが。俯く俺に、森田は「なんとかなるって」と励まし、先生の手元にあるくじを引きに行った。俺も、やりたくは無いが、参加はしないといけないからしぶしぶ森田について行き、箱に手を突っ込む。適当に最初に触れた紙を手に取る。書かれていた番号を見れば、ちょうど三列の真ん中の一番前だった。
「げっ」
思わず声も出て、森田が見に来る。
「わっ、お前運ないな笑笑」
「笑うなよ」
げしっ、と尻に蹴りをし、がたがたと机を運ぶ。隣誰だろう。お願いだから、女子じゃないといいな。そう思って座っていると、隣に来たのは
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