ゼロ·トゥ·ヒーロー ~ 何でもなかった僕が最高のヒーローになるまでの話

リノたん

プロローグ

「大丈夫?立ち上がれるかな?」


倒壊した建物の残骸を払いながら現れた彼女は、僕たちに手を差し伸べながらそう言った。しかし、僕たち三人のどれもがその手を素直に握ることができなかった。いや、握ることができるはずもなかった。崩れた建物の地下に閉じ込められた僕たちは、上から流れ落ちた犠牲者たちの血を飲みながらこの3日間を耐えてきたからだ。生き残るためだったとはいえ、その行為が正しくないことくらいは幼い私たちも知っていた。だから躊躇ったのだろう。こんな僕たちが生きていていいのか……と。


「大丈夫、心配しなくていいよ。」


しかし彼女はそう言った。僕たちの心を読み取ったのだろうか。いや、多分彼女は僕たちの口元についた血痕や床に凝固した血の塊からざっと状況を察したのだろう。


「君たちが生きているだけで、それだけでありがたいことなんだよ。」


彼女は先に手を差し伸べ、躊躇する僕たちの手を一つずつ握ってくれた。


「さあ、早く!」


手の先から伝わる真心に僕たちは勇気を出して彼女を見上げた。日差しに背を向けて立って太陽より明るい笑みを浮かべている彼女の姿は、まさにヒーローそのものだった。


だから、そんな彼女を憧れるのは僕たち三人にとって避けられない運命だった。

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