あんでっどプルーフ
Emotion Complex
第1話 才能無き前向き男
小屋の中へ転げ込むと、フレデリック・マーリンはドアを投げつけるように閉めた。
ドアが内と外を隔てた瞬間、重いものがぶつかった。
木のドアが撓み、亀裂が走る。
フレデリックは小屋の中を見て、一番近い棚へ隠れこんだ。背中を預けて座ると、頭がぎりぎり収まるほどの高さだ。
「どうする? 逃げるだけなら簡単だけど……」
息が整わず、必要以上に呼吸が繰り返された。空気には土と油が混じっている。
「ダメだ。シーラさんを見捨てておけない」
ドアにぶつかり続けている者の他に、周りを徘徊している気配もある。
フレデリックが視界に収めただけでも、三匹は確実にいた。
「残った法力で三匹も相手出来ない……」
法力とは魔法の原動力となるものだ。厳密に数値化されているわけではないが、魔法が使えなくなる寸前の虚脱感は、授業で何度も味わっている。限界は近い。
フレデリックは改めて、小屋の中を見回した。
汚れた窓は明かりを遮り、薄闇となった室内がシルエットで浮かび上がっている。
掘削機らしきものと、ガスボンベやヘルメットが並ぶ棚、そして壁にはスコップやツルハシが掛けられている――土木工事作業員の詰め所のようだ。
スコップを武器にしたところで高が知れている。
フレデリックは魔道師だ。肉弾戦なんてできるわけがない。
体当たりでドアの強度が弱まっているのが、跳ね返る音で分かる。いつまでもここにはいられない。
その時、遠くから声が聞こえた。
「オレ今、遅刻!」
逼迫した叫び声が山間を抜けてくる。
フレデリックは窓へと駆け寄った。
擦りガラスのように汚れた隙間から、奥の山道が見える。
小屋は丘に囲まれた円形の窪みの底に建っていた。掘削されたように半径百メートルほどには何もない。平らな地面は見晴らしが良かった。
窓から見えるのは、頂上で群生する竹林と、斜面の中腹に沿って走る山道だ。
その道をこちらへ駆けて来る姿があった。
こんな山奥に人がいるのも不思議だったが、小屋の周囲を離れていく二つの影に気を取られ、思考の外に弾け飛んだ。
影は痩せこけた犬の後姿だが、所々で肉がこそげ落ち、骨が覗いている。生きた犬ではない。
死を迎えたはずの肉体が動き出す――アンデッドだ。
「危ない!」
フレデリックの口から思わず漏れていた。
アンデッドに殺された者はアンデッドになる――これは確実だ。傷付けられただけでも、生と死の境界線は曖昧になる。生者には危険な存在なのだ。
だからフレデリックは警告した。
一匹のアンデッドが方向を大きく変えてきた。声に反応して、窓へ真っ直ぐ向かってくる。
フレデリックは窓から離れつつ、左の前腕へ右手の指を触れた。そのまま左腕を上げ、掌を窓へ向ける。
光が閉ざされた。
犬のアンデッドが窓へ飛び上がったのだ。
翳した左の掌の前に、直径三十センチほどの赤い光の円が浮かんだ。複雑な線で表現されたのは魔法を発動するための契約書だ。つまり魔法陣である。
目の紅光が尾を引いて、アンデッドが窓を割った。
魔法陣の光が収縮し、炎の玉へ転じて打ち出された。
力が交差する――
フレデリックの横を通り過ぎたのは、犬の右半身だけであった。
左側は炎に呑まれて一瞬で掻き消えていた。
遅れて火の粉が舞ってくる。アンデッドの半身を焼いた余韻だ。
「やった?」
確認しようと振り返ったフレデリックは、血の気が引くのを感じた。
炎を纏った犬の半身が立ち上がろうともがいている姿は不気味であったが、目を奪ったのはその奥にあるガスボンベだ。
火とガス――これほど相性が良く、最悪な組み合わせは無い。
フレデリックは身を翻そうとしたが、それより先にドアが弾け飛んだ。
逆光に埃がきらきらと舞う。
ドアの形に切り取った四角に、四つん這いのシルエットが逃げ場を塞いでいた。
犬のアンデッドだったが、『四足獣』以外に共通項を見出せないほど、形状が変わっていた。
一歩一歩小屋へ入ってくる。直射の影響を逃れ、暗い部屋に入ることで、逆に詳細が見えてきた。
全体的に三割ほど大きさが増し、飛び出した骨がねじくれた角と化して全身を覆っていた。剣山のような容姿には凶暴さしか感じられないのに、目には獣を超えた知性が宿っている。
つまり、本能のみの衝動で動き回る低級のアンデッドではなく、知恵や思考を持って人を襲うようになった――ということだ。
これはいわゆる――裏返る――と呼ばれる状態だ。
一学生の身で戦えるかどうか。迷いながらもフレデリックは再び左上腕へ右指を伸ばした。
袖を捲くった左上腕には、三つの円が描かれている。直径三センチほどの円が等間隔に並ぶ。円の中に幾何学模様が描かれている。魔法陣のミニチュア版だ。
通常魔法陣は、法力を込めた指先で自ら書かなければいけないのだが、一本でも線を間違うと発動しなかったり、全く違う魔法を発してしまう上、時間が掛かる。
そこで発明されたのが魔窓紋(まそうもん)――フレデリックの上腕にある三つの円だ。
この円自体が既に魔法陣で、法力を込めて円に触れるだけで対象の魔法陣が出現する。魔法陣のショートカットだ。
魔法が契約された時点で腕に浮かび、ランクアップと共に魔窓紋も変化する。魔法のレベルは使用者次第で選択可能なため、最上級魔法を覚えておきながらも、最下級魔法で戦うことが出来るということだ。
先ほど放った火の玉は、フレデリックの中で最高ランクの炎系魔法だ。
アンデッドの半身を奪うほどの威力があるが、状況を鑑みると、そこまでの魔法を使う必要はなかったともいえる。
冷静な思考で臨んでいるように見えて、判断力が伴っていない。
フレデリックは三つの系統の魔法を契約している。手首近くの魔窓紋が炎系で、次が雷系、肘に近いものが風系の魔法陣だ。
正面のドアからにじり寄る影に、どの魔法で対するかを決めかね、右指は左腕を彷徨っていた。
裏返った犬型アンデッドの一歩一歩に押されるように、フレデリックも小屋の奥へ奥へと下がっていく。
目の端で、アンデッドの半身が炎を伴ってガスボンベの上へと倒れこんだ。
いつ爆発してもおかしくない。
唯一の窓も通り過ぎていた。背後は壁だ。
――戦うしかない。
フレデリックが意を決し、魔窓紋へ手を伸ばした時だ。
窓から影の塊が入ってきた。
もう一匹の犬のアンデッドが飛び込んできたという、フレデリックの見解は正しい。
だが、だらしなく弛緩した犬のシルエットは、真っ直ぐに通り過ぎ、壁へ激突した。そのまま上半身は板壁を突き抜け、下半身を室内に残してダラリと垂れ下がった。
スコップやツルハシが床へと落ちて激しい音を立てた。
「オレ今、颯爽!」
その騒々しさを突き抜けるように声が響いた。
視線を戻すと、蹴りの姿勢で着地したような、元気な背中が見えた。
鍔の広い先折れの三角帽が、フレデリックの視界で揺れる。
「魔導師――?」
「あれ? 人がいた」
のん気過ぎる声で振り返ったのは、フレデリックと同年代の少年であった。
三角帽から覗かせた顔は、凛々しい眉と主張の激しい目鼻が特徴的だ。あっさり気味のフレデリックとは真逆の顔付きである。
「そんなことよりもガスボンベが――」
彼はちらりと炎の方を見ると、すぐに頷いた。
「窓から外へ」
言うと、窓へ指を向けた。
フレデリックは、指に導かれるように窓へ向かった。彼の横を抜け、ガラスの残る桟を踏んで外へ出た。
小屋から離れるように走ったが、追随する気配がない。
フレデリックが足を止めて振り返ると、彼はまだ小屋の中へ残っていた。
「君! 早く出ないと――」
彼はドアの方を向いている。あのアンデッドと対峙しているのだ。
――逃げ遅れた?
助けに行こうとしたが、フレデリックの足は一歩も出なかった。
彼が左手を開いてこちらへ突き出している。
来るな――ということらしい。
「でも――」
その声が合図だったかのように、窓の四角に四足の巨体が入ってきた。
彼の頭に喰らいつける高さまで跳ね上がっている。
同時に彼も踏み込んでいた。その一歩で右腕を突き出す。
何と――
アンデッドの頭部に右の拳を叩きつけたのだ。
フレデリックは意表を衝かれて息を呑んだ.
――魔導師が肉弾戦?
重い一撃に、跳ね飛ばされることさえ忘れたように巨体は宙で止まった。
彼はそれを下から蹴り上げた。
天井まで浮かんだ四足獣の下へ駆け抜け、ジャンピングダイブで窓から飛び出してきた。
アンデッドが窓枠の中を上から下へ通り過ぎた。
気付くと、慌てるように彼が走ってくる。
「走れ!」
「え――?」
思っている間に彼が横に並ぶ。
問い返すよりも先にフレデリックは彼を追いかけていた。
三十メートルほど小屋から離れた時、背後で轟音が響いた。
ボンベに引火したのだ。
爆風に背中を押されて、フレデリックは倒れこんだ。
彼も横を転がった。
頭を抱えるようにやり過ごす。
いつまでも爆音が続いているような感覚は、谷間を渡る余韻のせいか。
「大丈夫か?」
隣から声がした。
「ええ。――君は?」
「ジョステア・コーディ。お前と同じ魔法科だ」
彼――ジョステアは、立ち上がりながらそう言った。
「そうじゃなくて――」
フレデリックは、彼の飛ばされた三角帽を拾いながら言った。
大丈夫かどうかを訊きたかったのに自己紹介されてしまった。
しかも同じ王立クシュリナーダ学園の魔法科だったとは……。
――え?
「魔法科?」
「知らなくて当然。専攻は同じでも、一緒に授業を受けたことはないからな」
フレデリックから帽子を受け取りながら、ジョステアはそう言った。
先折れの三角帽は、確かに魔導師の証だ。
一緒に授業を受けない魔法科なんて、フレデリックは聞いたことがない。
ジョステアは吹き飛んだ小屋へ顔を向けていた。
周囲に飛び飛んだ木片が燃えて燻っている。
ふと彼の帽子に縫いこまれた紋章に目が行った。
金色の三枚の葉と上へ伸びる蔦。それとコーディという名――
「コーディ家って、あの魔封一族?」
「王国でコーディを名乗るのは、オレと母親だけだ。もう一人伯母さんがいるけど、武者修行の旅に出てる」
「そう――なんだ……」
武者修行というのも聞き慣れないが、それよりも噂でしか聞いたことがない魔封一族が実在していたことに驚いていた。
魔法の威力を高めるために、魔界の住人を身体に封じている一族――そう聞いていた。
きっと禍々しいオーラを発している人たちだとフレデリックは勝手に想像していたが、目の前の少年は逆に清々しいほどだ。
改めて見ると、彼は魔導師の帽子こそ被っているが魔導師らしくはない。
後ろの裾が長い上着にはベルトやチェーンが飾られ、左だけに肩当がつけられている。何よりも小手が前腕を覆っている。
――これでは魔法が使えないよな。
フレデリックはそう思った。魔窓紋が見えないからだ。
魔封一族の少年――ジョステアは、炎を上げる家屋の残骸を見ながら首を傾げた。
「おかしいな。アンデッドが一匹足りないぞ」
「足りない?」
「裏返ったのは二匹いた」
おかげで失念していた事態を思い出した。
「シーラさんが危ない――」
フレデリックは斜面を走り出した。切り崩しただけの山道を横断し、更に崖を登って竹林へ入った。
ジョステアが軽く追随してくる。
「他にも誰かいるのか?」
「叔父さんを探してた女の子がいる。アンデッドの襲撃ではぐれたんだ」
「よし。フレディ、手分けしよう」
「フレディ――?」
フレデリックは足を止めた。
ジョステアが数歩先で止まると、振り返った。
「お前、フレデリック・マーリンだろ」
「僕を知ってるんだね……」
「知ってるさ。魔法科の優等生だって、デイ先生から聞いた」
――そんな杓子定規な評価で僕を表して欲しくない!
フレデリックは叫びたいのを堪えた。
ジョステアは負の気を全く感じさせない表情で、真っ直ぐにフレデリックを見ている。
「それよりも女の子を捜すのか? 捜さないのか?」
「捜すよ」
「じゃあ、オレ、こっち」
言うや、ジョステアは右へと走っていった。足音もたいして響かせず、その背中はあっという間に見えなくなった。
フレデリックは大きくため息をついた。
大魔導師の孫――ついて回る本人不在の評価。
魔法科の優等生――これもそのオマケの評価であった。
「どれもただの肩書きじゃないか……」
フレデリックは小さくつぶやき、ジョステアとは反対の方へと走り出した。
フレキシスコ山の竹林は、近隣諸国に紹介されるほど有名で、広大であった。
青臭い空気を割るようにフレデリックは走った。
足下には笹の葉が積もり、乾いた音を背後に残していく。
笹と笹の隙間は見通しが悪く、人の気配も感じられなかった。
シーラと名乗った少女は、フレデリックと同じ年齢か少し下に思えた。
肩までのプラチナブロンドで、肌も光を通しそうな程白く、着ているチュニックの白にも負けていなかった。
半目の奥で、碧眼が慈悲深くフレデリックを見つめてくれた少女。
彼女がアンデッドに殺される。しかもアンデッドとして甦る――
――そんなの御免だ。
五感をフルに使い、シーラの形跡を探す。
そのおかげだろう。
フレデリックは並走する気配を捉えることが出来た。
「ジョステア・コーディくん? シーラさん――……でもない!」
笹の葉を踏む音は小さいが、その巨体ゆえの重みは伝わってくる。
フレデリックの全速力に付いて来ているのに、呼吸音が全くしない。
――アンデッドだ!
フレデリックは、左腕に右手を伸ばした。
魔窓紋へ触れる直前で待機する。法力も準備済みだ。
死を蹂躙するアンデッドには魔法が有効である。その魔法をタイムラグなく使える魔窓紋はアンデッド対策には必須なのだ。
だからこそ、小手で前腕を覆っているジョステアが魔導師だということが、フレデリックには疑問であった。
気配はまだ並走している。
竹林の切れ目が見えた。
フレデリックの魔窓紋は、炎系、雷系、そして風系だ。
高等部二年で三つも魔窓紋を浮かばせるなんて天才だと騒がれたが、珍しいことではない。学年に十人はいる。
大魔導師パラスティ・マーリンは、学園卒業後も二つで戦っていたと聞く。
数じゃないんだと、フレデリックは思っている。
フレデリックの風系の魔法は攻撃力が低い。アンデッドに対して使えるのは炎系と雷系だが、炎系は攻撃力が高い代わり命中率が低く、信頼性が薄い。先ほどの犬のアンデッドくらいには有用だ。
だが今追ってきているのは、ジョステアの言うことを信じれば裏返った中級のアンデッド。
対抗できるのは雷系しかない。
フレデリックが契約した雷系は、弓を具現化して雷の矢を放つもので、攻撃力、命中率は申し分がない。唯一の難点は法力を異常に消費することだ。
竹林が終わった。正面に土肌の崖が聳え、山道が緩く下っている。
制動をかけながら、矢を番え、振り向きざまにフレデリックは弓を構えた。
一呼吸後。竹と竹の陰に、四つ足の姿が滲んだ。
フレデリックは矢を放った。
稲光の尾を引き、一本目は竹林に呑まれた。
ざん――と竹が一本、しなって倒れてきた。
二本目を番えながら、フレデリックは竹を避けた。
横に倒れてきた竹の上を、四つ足の巨体が駆け抜けた。
手の届くほどの距離に驚き、フレデリックは腰から倒れてしまった。
四つ足の影は、竹から崖へ飛び移った。
重みを失った竹が林へ戻っていく。
広くなった視界に、アンデッドの姿が晒された。
確かに裏返った犬のアンデッドであった。ただ変化の仕方がさっきとは違う。
頭部が突き出た角で覆われていた。目と口はかろうじて分かる。角の先が全て正面を向いていて、頭が槍の穂先のようだ。尻尾が長く、鏃のように尖った先っぽが蛇のようにうねっている。
斜めの崖に吸い付くように立ち、捻くれた角の隙間からフレデリックを睨めつけてきた。
フレデリックは弓を構えた。
鋭角なアンデッドは地面に降りると、一跳ね二跳ねとジグザグに勾配の山道を登りながら迫った。
低級アンデッドよりは知能が高いが、読めない航跡ではなかった。
二矢目を放った――
が、弓を離れた途端、雷の矢が霧散した。
「な――!」
犬はすぐそこまで迫っていた。
フレデリックは弓を掲げながら、地面へ倒れこんだ。
霧散した矢の光がアンデッドの視界を奪ったおかげか、互いにぶつからずに交差した。
だが左手の弓も、ふ――と姿を消した。
身体を起こしながら振り向くと、アンデッドも八メートル先で着地し、Uターンする所であった。
フレデリックは魔窓紋へ右手を触れた。
全く反応がない。
「法力が切れた――?」
犬が走り出す直前の姿勢に、四肢に力を込めた。
死――
フレデリックの頭をその言葉が掠める。
悲鳴が口から迸る寸前であった。
「フレディ!」
声が後ろで上がった。
ジョステアだと気付いたが、正面のアンデッドが走り出し、視線を動かせなかった。
右横の崖を影が斜めに駆け抜けた。
飛びかかってきた四つ足の巨体を、その影が横から蹴り飛ばした。
ジョステアだ。
フレデリックの眼前、二メートルでの激突であった。
犬は竹林の手前へ落ち、ジョステアは崖の前へ着地した。
ジョステアの蹴りは重い一撃だったが、アンデッドを沈黙させるだけの攻撃力はなかった。
土煙を巻き上げながら、角犬は跳ね起きた。
その時だ。
すう――っと光が、フレデリックの横を滑っていった。地面に描かれた魔法陣だ。
鈍いオレンジ色の光円が、四つ足の下で止まった――刹那。地面から四角柱が数本突き出て、クロスするように四足獣を貫いた。槍に突き上げられたように数十センチ浮いた位置で、犬は二度目の生を止めた。
「フレディ、無事か?」
地面に座り込んだまま、ぼうっとしていたフレデリックは、その声で我に返った。
ジョステアが歩み寄る。
「君が魔法で助けてくれたのかい?」
フレデリックは身体を起こした。岩を背負っているように重い。
ジョステアの右腕に血が流れているのに気付いた。
「ケガを――?」
「あいつの尻尾が当たったんだな」ジョステアは傷を覗き込んだ。「大丈夫、かすり傷だ」
「でも、アンデッドに傷をつけられたら――」
「助けてくれたのは、あのジッチャンだ」
ジョステアの答えは、ちょっと前の問いに戻っていた。
フレデリックは、ジョステアが指した方を見た。
マント姿の中年の男が立っていた。こけた頬が精悍そうであった。
「オレは魔法が使えないからな」
「え――?」
「魔封一族はそういうもんだ」
「でも、君は――」
フレデリックの意識はそこで途切れた。
ジョステアに何を言おうとしたのか、自分でも分からなかった。
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