第5話 出会い
◇◇10年前◇◇
「誤解は解けたか?」
北川裕樹は不安そうな顔をして言った。
「完全に解けたかって言われたら…うーん」
友美は意地悪を言った。
北川はもっと不安な顔をした。
「もうっ!からかわないの!」
みなみは笑いながら言った。
「その悪い噂?いきなり上級生を殴ったのは下級生を虐めてたからって説明したじゃない!」
庇うように続けて言った。
「そうね、そういうことにしておくわ。」
「もう、友美は冷たいんだから。」
「お前、みなみには優しいよな。なんでだ?」
裕樹が聞いた。
「それは…」
◇◇11年前◇◇
「ちょっと!やめてください。」
友美は言った。
「いいじゃ〜ん。俺らと遊ぼうよ?」
「ほら、お金ないんでしょ?」
「ちょ、やめ…」
「悪者はキーーーック!」
「うわっ!」
「うおっ!ぐっ!」
「逃げるわよ!走って!」
「うん。」
「あの、」
先に沈黙を破ったのは友美の方だった。
「ありがとうございます。」
「大丈夫!これくらいなんとも!って」
ガタガタガタガタ
「震えてるじゃない。無理して助けなくても。」
「嫌よ!目の前に困ってる人がいるのに!」
(ハッ)
その瞬間、友美の中に光が指したような気がした。
「ひどい言い方してごめん。ありがとう。」
「大丈夫。怖かったよね、よしよし。」
そういって震えた手で友美の頭を撫でた。
「聞かないの?」
友美は聞いた。
「何を?」
「どうしてあんなところにひとりでいたのか?お金もってないのか?とか…」
「聞かないよ!」
「えっ?」
友美は戸惑った。
人を助けるのは自分に得がある時しかしないと思っていたからだ。そういう世界で生きてきたのだ。
「言いたくないことは無理に聞かない。
言いたくなった時に言えばいいじゃん。」
そう、みなみは言った。
その瞬間安心して涙腺が緩んだのか、涙がポロポロと溢れてきた。
「実はね、」
友美が重く閉ざした口を開いた。
「わたしのお父様は政治家なの。」
「セイジカ?」
みなみは尋ねた。
「偉い人たちのことよ。
政治の世界はね裏切ったり裏切られたりが当たり前で幼い頃からね、人のことが信じられなくてそれが辛くてそんな自分も嫌になって家出してきたの。」
「そうだったんだね。」
みなみは黙って友美の話を聞いていた。
「どうしたいの?これから」
みなみは純粋に聞いた。
「これから…。わからない」
「じゃあわたしと友達になって!」
「えっ?」
友美は驚いた。友達なんて今まで出来たことがなかったからだ。
「いいの?」
「もちろん!わたしみなみ!折笠みなみだよ!」
「わたしは友美。一色友美。」
「よろしくね。」
「うん!よろしく!」
◇◇
「失敗しました。申し訳ありません。」
ガジャーン
「二度と失敗は許さないと言ったよな?」
「も、申し訳ありませんでした。
しかし、邪魔が入り…」
バンッ
「おい、だれかこのゴミを処理しろ」
「はっ!」
「引き続き、一色友美から目を離すな。
わかったか、大河内」
「承知致しました。全てはボスのために。」
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