知らないフリをあなたに。

@bonzinbonziri

第1話 拝啓 10年後のわたしへ

拝啓 10年後のわたしへ____

元気ですか?それとも元気じゃないですか?


で、そんな堅苦しい挨拶は置いておいて!!

10年後のわたしは何してるんだろう〜〜

丸の内OL?CA?それとも弁護士とかになっちゃったりして?

ともかくわたしは元気です。みんなとっても仲良しでこのまま何も無くみんなで高校卒業できるといいなって思ってるよ。


実はね、好きな人がいるの。

知ってるとは思うけどね、その人は、××_____



◇◇


温かい日差し。気持ちの良い風。

ああ、こんな幸せな夢を見たのはいつぶりだろうか


ピピピピ ピピピピ

目覚ましの音がなった。まだ起きたくないのに時間は待ってはくれない。


「みなみ、起きて。 朝だよ。」


そういって裕太は、カーテンを開けた。


「ん、ん〜、まだ寝たいよう。」

(夢は途中で終わってしまった。なんだろう、何か大切なことを忘れてしまっているような。)


「早く起きないとまた部長に嫌味言われるよ。今日は朝から会議でしょ。」


(まだ寝たいのに…。ハッ)

「そうだった!忘れてた!もう!北川が社長なんだから部長に釘くらい刺してくれたっていいじゃないの。」


「家では裕太」

「でしょ?」


いきなり顔を近づけてきた。

いつもそうだ。この結婚だって契約でしかないのに。


「はいはい、裕太さん。」

(どうして契約を結んでしまったのだろうか

10年前はこんなことになるだなんて思ってもみなかったのに)


「ゆ・う・た」

諦めが悪い。呼ぶまで終わらせないつもりだ。


「しつこいなぁ。裕太」


一瞬、裕太はなぜか悲しそうな顔をした。

何故だろうか。そんなこと考えたって仕方ないだってわたしは何も知らないのだから。



◇◇10年前◇◇


わたしは、折笠みなみ。17歳

普通の何も取り柄のない女子高生だ。


「みなみ?」

心配そうに覗き込むスラリとした体に綺麗な金髪の少女、一色友美だ。

彼女はハーフらしい。お父さんは日本人、お母さんはフランス人でフランスから留学に日本に来た時に出会ったらしい。友美は自分のことはあまり話さないからこれくらいしか知らない。複雑な事情がありそうだな。

でも見る限りバックといい、財布といい、時折迎えに来る車といいお金持ちのようだ。


「ちょっとみなみ聞いてるの?」

不機嫌そうな顔でこちらを見ている。


「ああ、ごめん。ちょっと考え事。」

慌てて誤魔化す。何を考えてたんだっけ?いつもこうだ。すぐに忘れてしまう


「まあいいけど。で、みなみはどう思う?

新しい転校生たちのこと。」


(転校生?ああ、1人はお金持ちだけどひねくれてて傲慢だから先生たちも腫れ物のように扱ってる生徒ともう1人はIQ400の天才か)

「2人ともなんだか違う世界の人間みたい。」


「当たり前よ。特にあの北…なんだっけ?

そいつとは関わらない方がいいわ。」

今までに見たことがない顔をしていた。とても心配そうだ。


「大丈夫よ。そうそう関わることなんて…」


ドンッ


いきなり大きい音が鳴った。


(誰だろう。はじめて見る顔だな。)


「お前が一色友美か?」


「ええ。そうだけど?」


「話があるからこい。」

そう言って強引に友美の腕を引っ張った。


「ちょっと!!!!」

(考える時間なんかない。ともかく友美を助けるんだ。)


「みなみ?」


今になってハッとした。あの時みんな友美を助けなかったのは助けたくても助けられなかった、いつもなら争いになるくらい友美は人気者なのに、つまりこの人は


転校生だ。


「やっと気づいたか。ぼんくら。」

少し不機嫌そうな顔でこっちに歩いてくる


(どうしよう…まずいよ。間違えた)


「ちょっと!」

友美が止めようとする。

それを振りほどく転校生。


「あのなぁ、こいつは、」


「やめて!」

友美が叫ぶ


「許嫁なんだ」


「えっ?」

思わず出てしまった。

(友美の?許嫁?

たしかにお金持ちだなあとは思っていたけれど許嫁なんて。そんな人がいたなんて)


「本当なの?友美」


「本当よ。」

嫌そうな顔をしている。


「中庭で話そう。ここだと目立つ。」

そう転校生は言った。

たしかに沢山の野次馬たちがこちらを見ている。


「そうね。行きましょう、みなみ」


◇◇


どうやら、2人は昔1回だけあったことがあるだけで親が勝手に決めた許嫁らしい。

許嫁という存在も曖昧で今まで忘れていたけれど、偶然さっき会った時にお互いが付けてた指輪のネックレスで思い出したそう。


「大体なんであんた転校してきたの?」

相変わらず嫌そうな顔で友美は言った。


「親が決めたことなんだよ。知るわけ。」


ブブーブーブー

友美の携帯がなった。


「もしもし。あっお父様。

はい、わかりました。すぐに向かいます。では」


プー

「ごめん。急ぎの用事が」


顔が真っ青だ。どうしたのだろう。

(気になる、聞きたい。だけど今聞く訳にはいかないよね。)


「いってらっしゃい、気をつけてね。」


「ありがとう。みなみもすぐに帰るんだよ。危ないから、」

とても心配そうだった。


(だけど今は送り出してあげないと。)

「わたしのことはいいから!行って!」


「ごめんね。気をつけて帰るんだよ。」

わたしは心配だった。友美のことが。

でもなにも力になれない

わたしには何も力がない。そう確信した。

そうだ。どうして今まで気づかなかったのだろう。ただ普通の高校生って口では言っていてもどこか自分は特別なのでは無いのか、そう友美と一緒にいることで錯覚してしまった。

特別なのは何でもできて何でも持っている友美の方なのに。


「なあ」

転校生が言った。


「何ですか?」

色んな感情がごちゃ混ぜになっていてよく分からない。苦しい。忘れてしまいたい。


もうどうでもいい。





◇◇



気づいたら乱れた服と下着、そして転校生が横にいた。


「どうして?」


転校生が起きる前に急いで服を着て外へ出た。

こんなつもりじゃなかった。いや、こうでもしないとわたしは、


部屋から出る前に拾ってここまで持ってきてしまったノートを見た。


「きたがわゆうき 」

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