第20話
『はぁ~? そんな都合のいい方法なんてあるわけないじゃん!』
家のすぐ外にて。
困った時は悪魔に電話をして助言を聞けばいい──なんて話だったが、スマホから返ってきた声はひどく腹の立つ声音とセリフであった。
こいつぶん殴りたい……。
『これだから人間はワガママでやだなぁ。きみは一介のプレイヤーに過ぎないんだから、指定されたことをやればそれでいいんだよ』
「っ……あのさ、聞いておきたいことがあるんだが」
『なに?』
なかなかムカつく野郎だが、怒りはまだ腹のうちに隠しておいて。
この世界のこと、このゲームの事、いろいろとまだ知らないことがあるのだ。
流石にすべてを質問するのは面倒くさいので、知っておかなければならないことだけ質問しようと思う。
「そもそもこの世界ってどういう場所なんだ。お前たちが作った仮想世界とかなのか?」
『違うよ? そこは君たちが元居た世界と何ら変わらない現実だ。
ただ特別な点で言えば、そこはわたし達がゲームの舞台に選んだ平行世界。君たちの世界とはちょーっとばかし常識が違くて、エロイベントが多いってだけ』
「……なら、お前たち悪魔はこの世界には干渉できないのか?」
『まぁ好きに弄ることはできないって感じかな。前みたいにアイテムを届けたりするくらいがせいぜいだよ』
つまり極端な話、悪魔たちは本当にただ観戦しているだけ、ということか。
ならもしゲームの仕様の穴をついた攻略をしても、奴らが止めに入ることはないかもしれない。
……それともう一つ。
「俺たちはいつまでこの世界にいられる?」
『あっ……もしかして二人で生き返れないから、親友くんとこのままこの世界で暮らそう、とか考えてる?
ふふふ、無駄無駄。君たちの命のタイムリミットは次のバレンタインデーの翌日までだ。
期限を過ぎたらわたし達が与えたその体は消滅して、今度こそきみたち死ぬよ~ウッヒッヒ』
悔しいことに考えを読まれてしまっていたらしい。
どうせ元の世界に生き返ることが出来ないのならこのまま……なんて甘い考えは通用しないようだ。
確かにこれはゲームなのだから、タイムリミットがあって当然ではある。
『アッヒャッヒャ!』
「おい、うるせえから少し黙ってろ」
『うっ。……む、むぅ』
……くそ、八方塞がりだ。これ以上何を聞いたところで、面白がってゲームを楽しんでいる悪魔は助言なんてしないに決まってる。
このゲームを神聖な儀式だとかなんとか言っていたが、真実としてはきっとただの娯楽なのだろう。
自分の地位が掛かっているとは言っていたけど、多分感覚としては競馬とかそういう賭けの類なんだ。
俺に対しての態度からして、儀式の遂行ではなく遊びを楽しんでいることは明白だ。
『ほ、ほら、迷ってないで親友くんなんか見捨てちゃいなYO!
アイツきみの為なら死ぬ気満々だし、利用するだけ利用して捨てちゃお!
仲間も増えたしあとは消化試合! これで
……わたしたちの、じゃないんだな。
やっぱり協力者でも何でもなくて、悪魔からすれば俺はただ賭け馬なんだろう。
生き返れるならそれでいいだろと思っている。
誘導すれば俺がインを見捨てるのだと、本気でそう思っている。
文字通り自分の”命”がかかっているのだから、自らを優先して当然だ、と。
──ふざけんなバカ。
確かに自分の命は大事だが、それは親友を見捨てていい理由にはならない。
俺はインと一緒に二人で生き返りたいんだ。
あいつは俺の親友で、なくてはならない半身なんだよ。
一人で生き返ったとしても意味がない。俺が生き返っても、俺がインだけを生き返らせても、そんなことに意味なんてないってことは、さっきの親友とのやり取りで十二分に理解した。
だから、俺は──
【ほら、この五円玉を見てくれ。ゆーらゆーら……】
──ハッ、とした。
【きみが今からするのは、ドスケベセックスじゃない。ボクによる逆レイプでもない……】
そ、そういえば……。
【ちっちゃい先輩オナホを使ったオナニーだっ♡合法ロリオナホで自分勝手に射精するだけ♡
あれは。
あのときは。
【先輩と俺って、あのままえっちしたんですか?】
【ぅ、うん、そりゃもう、激しく】
俺は先輩とドスケベセックスをした。
フェロモンに当てられて発情した式上先輩が俺に催眠を掛けて、確かに事実として
それなのに残機が減らなかったのは──性行為を『自慰』だと思い込んでいたから、じゃあないのか?
……そうか、分かったぞ。
これは間違いないッ。
俺の呪いは性行為という事実そのものではなく、俺の『性行為をした』という認識があって初めて発動するタイプの呪いなんだ。
「……ふ、ふふ」
あぁ、笑いを抑えることが出来ない。
ここで遂に気がついてしまったのだ。
俺たちの”仲間”になった『あの人』がいれば、この状況を打開できるってことに。
このゲームをインと二人でクリアできる──裏ワザってやつに。
「ふふふふっ、クックック……」
『な、なんだ……?』
お前ら悪魔は知らなかっただろうがな。
この世界にはめちゃんこヤベ~合法ロリがいるんだぜ。
”セックス”という事実を『オナニー』という認識にすり替えることが出来る、激ヤバな『式上桃彩』って人間がな。
「ふっふふふ……フハハハハハッ!! はーっはっはっははッ!!」
『何を急に笑っている!?』
「あぁ──いいぜ。勝たせてやる。俺は生き返ってテメーを勝たせてやるよ。……だがな」
『なんだ……!?』
心して聞きやがれ!
「お前らの見たかった展開は見せてやらねぇ! 俺には”親友”と二人で『一緒に生き返る』算段があるんだよォ!!」
『なっ、なにィーッ!!? …………えっ、マジで?』
うん。
「マジマジ」
「なにそれヤバ……」
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