第5話
「──ハッ!?」
も、戻った。
だが戻ったってことは、つまり俺が爆死したということ。
くっ。なんて無様な……!
「……って、あれ?」
気がついた。
俺がいる場所……家じゃない。
辺りを見渡して分かったが、ここは近所のスーパーの店内だ。
片手には買い込んだ食料が詰められているレジ袋。
後ろを振り返れば──
「主陣くんだー! みんな捕まえろぉーっ!」
女子集団が迫ってきている。
あれは俺が数時間前に目撃した光景そのものだ。
馬鹿な。そんなバカなことがあるか。
──リスタート地点が近すぎる!
「くっそぉぉぉぉ!!」
雄たけびを挙げながら街中を走る俺。
レジ袋の中がぐしゃぐしゃになろうが構わない。
逃げなきゃ。早くアイツから逃げなければ。
もうイベントは始まってしまっていて、ヘルプの電話をかける暇なんてない。
「私のデカチン〇ォォォォォ!!」
「うるせぇなっ!?」
あの女子集団は十中八九、青城が差し向けた手下どもだ。
おそらく麻酔だか睡眠ガスだかの類を用意した順路に誘導して、俺を眠らせてあのセックスしないと出られない部屋へ連行するに違いない。
「ハッ、はぁっ! クッソついてこないでくれ!」
「待って主陣くぅぅぅんっ! 6Pハーレムえっちしようよぉぉぉっ!!」
「殺す気か!?」
とにかく前回の時間軸では通らなかった道順で進むんだ。
同じルートを辿ったら、青城の思い通りに事が進んで、また同じ悲劇が繰り返されてしまう。
焦ってスマホを確認したが、やはり……!
【残機×1】
さっきの逆レイプで残機が削られちまった。
ロリ先輩の時みたいな、残機が減らない謎の減少は起きてない。
つまり残機が残り1になった今の俺は──セックスしたら誇張なしに
「とにかく家まで逃げ──なにっ!?」
建物の影から現れたのは麻酔銃を持った青城。
目が完全にイッてる。
眼光だけで人を殺せそうだ。
あらかじめどこからか俺を監視していたのか、見事に先回りされていたらしい。
引き返して逃げようにも、後ろにはあの女子集団がいる。
前門の
まさに回避不可能の四面楚歌だ。
「そん、な……」
恐怖のあまり膝が笑っている。
この崖っぷちな状況で、絶望しない方がおかしい。
ここで捕まれば即死亡で、俺は今度こそ天に召される。
もう俺には残機が残されていないから。
変態精液泥棒天使には負けて。
催眠術師のロリ先輩にも負けて。
しまいには信じてたクラスメイトにまで裏切られて、無様に敗北して爆死した。
ロリ先輩のときに、残機が減らない謎の現象が起きていなければ、俺はついさっきのセックスでゲームオーバーになっていたのだ。
実質、俺はもう死んでいる。
この世界に屈してしまっている。
絶対に生き返るとのたまっておきながら、何もできずに負けている。
俺は……どうして。
なぜ、こんなに無力なんだ──
「……は?」
──ふざけるな。
馬鹿を言うな。
俺はこうしてまだ生きている。
なら、それは──まだ負けてないってことだろ。
「さあ主陣くん! 大人しく捕まって負けちゃおうねぇ!」
は? 負けないが?
お前らみたいなメスガキに捧げてやる貞操なんてないんだが?
……あぁ、もう。
いい加減逆レイプされるのも飽きた。
俺は別にマゾでもなければ変態でもない。
俺は生き返るために戦っているんだ。
ただ自分の為に生き返るんじゃなくて。
生き返って──親友のアイツとまた会うために俺は戦ってるんだ。
きっとインだって生き返るために、いまも必死で戦ってるはずだろ。
それなのに俺だけがこんなところで屈服して、簡単に諦めていいわけがない。
「ふぅー……」
無力だ何だと、無意味に嘆いて悲観するのはそろそろやめだ。
俺は抗う。
どれだけ無様でも抗い続けて、自分自身の手で、己の未来を切り拓く。
もうこれ以上、お前らの好きにはさせない。
ここからは俺のターンだ!
「あっ! あんなところに俺の数倍〇ンポがデカい生き別れの弟が!!」
「なんですって!?」
俺が指差した方向、つまり後ろへ振り向く青城。
「隙ありっ!」
「どこ! 主陣くんよりもでっかいチ〇ポどぐわァっ!?」
その隙に青城に襲い掛かり、彼女を押し倒して麻酔銃を強奪。
体勢を立て直して振り返って、正面から青城と女子集団に麻酔銃を構えた。
「俺のマグナムが火を噴くぜっ!」
「きゃっ♡ 主陣くんのえっち♡」
「下ネタじゃねえよ!! くらえ!」
歯向かう女子たちに抜けて、一切躊躇することなく麻酔銃をぶっ放した。
銃身が揺れ、先端から発射された極細の針が、次々と女子たちの首へと襲い掛かる。
「グワーッ!」
「アバーッ!」
女子たちは悲鳴を上げながら、バッタバッタと倒れていく。
どうやら俺は銃の扱いがすごい上手だったらしい(小学生並みの感想)
荒野のガンマンにも引けを取らないワザマエで今回の敵を退けた俺は、額から垂れる汗を腕で拭い、グッと空を見上げた。
この倫理観が世紀末な世界に屈するのはもう終わりだ。
たとえどんなラッキースケベやエロイベントに巻き込まれようが、俺は必ずそれを打破してバレンタインデーまで生き残る。
すべては親友のインと共に生き返る為に。
平和な俺たちの日常を取り戻すために!
「俺が負けてやるボーナスステージは終了だぜ。
ここからは俺のターンだ!」
女の子たちが数人ほどぶっ倒れている路地裏で、俺は一人高らかに宣言したのだった。
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