第2話 何でかなぁ?

「歴史の福島先生・・・」

「ああ、あのハゲ?」


「ハゲじゃないっ!」

真っ赤になるデレちゃん。


「だって、ハゲじゃん・・・オデコが」

「ち、ちょっと・・・広いだけだよぉ・・・」


「ハイハイ、それで・・・?」

分かっていてからかう、ツンちゃん。


「さっき・・・わざと冷たくしちゃったの」

「えっ・・・どんな?」


「先生のいつもの授業での長い説明を、無視しちゃうように目を逸らしたの」

「そんなの、生徒の全員がやってるだろぉ?」


「えっ・・・そうなの?」

「だって、本能寺の変で黒幕は家康と秀吉だとか、語り出すと長いし・・・」


「わ、私は面白いと思うけどぉ・・・」

「結論まで、長ぇんだよ、アイツは・・・」


そこまで言ったツンちゃんは、うつむくデレちゃんに気付いて声を潜めた。


「ま、まぁ・・・長い話を好きなヤツもいるだろうし」

「本当?そ、そうだよね・・・」


デレちゃんの顔が輝きます。


「だから、わたし・・・」

「思い切って・・・先生の話を聞いてないように顔を横に向けたんだよ」


「ふむふむ・・・」

親友の必死の訴えにツンちゃんは真剣に耳を傾けています。


「でも、その後で・・・」

デレちゃんが言葉を続けます。


「『家康は奥さんと息子を殺させられた恨みで、本能寺の変を秀吉と光秀と共謀したという、説があります』って、先生が言われたことが妙に納得がいって、ウンウンって、頷いたの」


デレちゃんの迫力に、ツンちゃんは黙って聞いています。


「そしたらね、そしたらねえ・・・」

ツンちゃんの手を両手で握りしめたデレちゃんが言います。


「先生、凄く、嬉しそうで・・・」

「鼻の穴を、フンガァー・・・て」

「得意そうだったのぉ・・・」


デレちゃん。

嬉しそうです。


優しい。

ツンちゃんは。


「何だかなぁ?」

と、思いつつも。


ギュッと。

デレちゃんの手を握り返すのでした。


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