6話 ふにゃふにゃ二人組
目を覚ますと知らない天井だった…。
なんてこともなく普通にソフィの部屋だった。
「あ、ルーちゃん起きましたよソフィア様」
「ルナー!!生きてて良かったよ〜うわぁーん」
隣には俺に添い寝するように抱きついて号泣しているソフィがおり、ベッドの脇には俺が起きたことに安堵の表情を浮かべるアーシャがいた。二人には心配をかけてしまったみたいだ。
ふむ。本来であればここはソフィを叱る場面なのかもしれない。
しかし、しかしだ!隣で号泣している少女に追い打ちをかけるように叱っても良いものだろうか?
答えは否!!断じて否である!
そんなことをしたらこの可愛い妹分に嫌われてしまうかもしれない。そんなことになったら三日三晩飲まず食わずで号泣する自信があるぞ。ソフィという可愛い天使を叱るのはお嬢や伯爵達家族の仕事だ。
伯爵家のペットの仕事とは、泣いているソフィを甘やかすことだと見つけたり!!
よし、そうと決まればちょ〜甘やかすぞ〜!それはもうソフィがふにゃふにゃになるほど甘やかしちゃうからね!ついでにアーシャも甘やかすぞ〜!
さて、ソフィをふにゃふにゃに甘やかすためにはまず泣き止まさないといけない。そのために必要なことは『安心』に他ならない。
だから俺は自信満々にソフィに告げる。
「私が死ぬわけないでしょソフィ。なんたって伯爵家のペットだからね!!」
これほどまでに安心させられる言葉は他にあるだろうか。
『伯爵家のペット』
なんて信頼できる言葉なんだ。
「でもルナ泡吹いてたし、心臓も脈も止まってたし、3時間目を覚まさなかったんだよ?本当に大丈夫なの?ルナぁ」
言ってる途中でその光景を思い出したのか段々ソフィの目に涙が溜まっていく。これはいけない。安心させるために泣かせていたらなんの意味もないじゃないか。
正直今の話を聞いて『あれ?俺下手したら死んでたんじゃね』と恐怖で鳥肌やら冷や汗やらが止まらないけど、それら全てを努めて無視する。五体満足でしっかり生きているのだからそんなの細事でしかない。ないったらないのだ。
「大丈夫だって。ほらおいでソフィ」
そう言って俺は腕を広げてソフィを迎え入れる。今はお互いにベッドの上。さっきのようにダイビングハグをされるようなこともない。助走がなければいくら力が弱いと言ってもソフィの体重くらいどうとでもなるのだ。
「ルナー!!」
「よしよし。ソフィは可愛いね〜」
ソフィの頭を優しく撫でながらギュッと抱きしめる。それはもうソフィの顔が丁度俺の胸元に来るようにギュッとだ。
ほれほれ柔らかいじゃろ?
「ルーちゃん。ソフィア様を窒息させちゃだめだよ」
ソフィをギュッと抱きしめる俺にアーシャがそんなことを言ってきた。
ふふふ。アーシャも恥ずかしがらなくていいのに。つまりはこういうことでしょ?
「うわっ!ルーちゃん!?」
「アーシャも捕まえた〜。両手に花だ〜」
全く、アーシャも素直になればいいのに。俺くらいになればアーシャの考えなんてまるっとお見通しだ。『私もルーちゃんのおっぱいに埋もれたい』ってことでしょ?このムッツリさんめ。
こちらを覗き見るアーシャの手を身体強化魔法を使って引っ張る。ソフィ相手には年上のプライドで使わないけど、アーシャには遠慮なく使わせて貰おう。妹分のくせに俺より大きいからなアーシャは。
…お前が平均よりちっちゃいだけだろとか思ったそこの君。今度家に凸して猫パンチ食らわせてやるから首を洗って待ってろよ!!
「ルナいい匂いする〜」
「ルーちゃん恥ずかしいから離して!!ソフィア様もいるから!」
「にゃはは〜今日はソフィとアーシャをふにゃふにゃに甘やかすって決めたから無理なのだ〜」
これぞ天国。可愛い妹分二人に囲まれて俺は満足だよ。
それから30分後、二人をふにゃふにゃにすることに成功した。ソフィの頭をナデナデしたり、アーシャのもふもふ尻尾をもふもふすれば二人共簡単に蕩けてくれた。ミッションコンプリートだね!
さて、気絶をしていたりふにゃふにゃ二人組を愛でたりしてたらもう外は暗くなっていた。外が暗いということはもう夕飯の時間が近いということだ。
おやつを食べたのが確か三時位でソフィの部屋に来たのが四時くらい。そこから三時間気絶で三十分モフってたとなると…あれ?もう夕飯終わってね?
「アーシャ?もしかして私達夜ご飯食べ損ねた?」
ベッドの上で溶けてるアーシャを揺すって聞いてみる。…しかし返事がない。ただの屍のようだ。
「もうしょうがないなぁ。私が二人のお姉ちゃんとして料理長に夜ご飯貰ってくるから待ってて」
俺は二人にそう言い残してソフィの部屋から出た。全く世話の焼ける妹分達だよ。
ま、そこが可愛いんだけどね!
多分戻ってくるまでには二人共復活しているだろうし、ちゃっちゃと持って来ちゃおう。
今日の夜ご飯には美味しいアップルパイやチェリーパイが出ているはずだ。急がねばあのがめついメイド長が俺やアーシャ、ソフィの分まで食べてしまうかもしれない。そんな横暴は断じて許すわけにはいかない。
これはいわばメイド長のがめつさVS伯爵家のペットの優秀さの勝負と言っても過言ではない。
俺はクラウチングスタートの要領で廊下を走り出すのだった。
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