第27話 勇気のかたち
「みんなー!無事か?誰かこの結界を解いてくれ!」
学生寮が建つ学園の中央部にたどり着くと、そこは広範囲に強力な結界で覆われていた。
さすがにこの結界をぶち壊すのはマズイかと思ったので、寮の外に出ている学生たちに声をかけた。
「「「
「加茂にブラザースの先輩方、それに会長まで。何かありましたか?」
俺の問いかけに、みんなそれぞれ答えたが、そんなバラバラに答えられても・・・、そこで会長が話を整理して説明してくれた。
「そうか、分かった。まず
大木の根元に向かうと、
「先生。よく持ちこたえましたね。すぐ楽にしますよ。」
『
「ありがとう、
「敵は大分減りました。シノブ先生も、俺の宝剣を貸したから、大分キルスコアを上げてますね。もう暫くしたら鎮圧できるでしょう。」
「そうか、シノブさんを助けてくれたんだね。ありがとう。」
ゾワッ!
「「「「!」」」」
未だ夜明けには至らない闇夜の空に、突然学園を取り囲むよう12本の漆黒の不吉な火柱が天高く燃え上がった!
・
・
・
「
「
何故か、西の学園の先生は、俺を睨むような視線を残して、足早に立ち去っていった。
「先生、どういう事ですか?」
皇先生は集まっている学生を見渡しながら話し始めた。
「これから起こることを先ず話そう。
『百鬼夜行』が起こる。いや、人為的に起こされる。」
「『百鬼夜行』!まさか!」
「人為的に起こせるものなのか?」
「だいたい1500年振りになるのか・・・」
「そう、知ってる者は知ってるね。
『百鬼夜行』。それは平安の御代に起きた神霊妖魔の
「マジ?歴史の授業でも習ったことないんだけど・・・」
俺の疑問に会長が答えてくれた。
「史書から抹消された『裏の日本史』なんだ。これが明るみとなったら、人々の恐怖心を煽り、妖魔の力を増してしまうからね。」
会長の説明に頷きながら、皇先生はつづけた。
「皆周りの人間の首筋を見て欲しい。そこに『印』が浮かんでるはずだ。」
「なっ!何だこれは!」
「なんだこりゃ!」
「おい!お前の首筋に『印』が出てるぞ!」
「お前もだ・・・」
「お兄ちゃんにはない、のです!」
「お前もな、スズネ。」
「やはりそうか。」
皇先生が納得しているが・・・
「どういう事だ!」
「その説明は後でいい。今はそれより『百鬼夜行』に関してだ。」
皇先生はもはやいつもの
「今から日ノ本全ての、少なくとも東国全域の妖魔神霊がここ
「一体何故?」
俺の問いかけに、悲痛な顔をしたサラサが答えた。
「お父さんたちが追っている、神霊を
「そのとおりだ。そして狙いは東西両院の奥深くで日ノ本を守る結界を維持しているお役目様。」
「そして、その2人のお役目様がお守りしているもうお1人のお方。皇居で至尊のお方をお守りしているお役目様。」
「
「!」
俺は転生という言葉にドキリとした!
「みんな!覚悟を決めろ!この身に『印』が刻まれた以上、『百鬼夜行』から逃れる術はない!そして、この学園にいる全ての人がこの『印』を刻まれたはずだ!」
皇先生の言葉に会長も頷く。
「たとえ逃げられたとしても、『百鬼夜行』はどこまでも『印』を追いかけて、『印』を刻んだ相手襲う。その間に一般の人達にも被害が及んでしまう。」
「「そんなぁ!」」
クルミちゃんたちをはじめ、中等部の子たちも集まってきた。
周りに集まりだした学園の生徒達を見渡しながら、皇先生は悲壮な表情で子供たちに命じた!
「伏魔の技を身に付けた子たちよ!その全ての技と命を燃やして『百鬼夜行』を止めて見せよ!お役目様をお守りし、日本の明日を守れ!これは特級伏魔師である
全ての責任を1人で背負うつもりなのか、皇先生!
・
・
・
東の空がほのかに明るくなった頃、西の空を覆うように妖魔の大群が現れた。
「西の空の7割が妖魔ってところか・・・」
「「ユキト先輩・・・」」
「みんな!術式を整えろ!」
皇先生の号令に、特殊科の学生たちはそれぞれ得意な方法で妖魔に備えた。
学園の周囲に不気味な黒炎が燃え上がってから、学園のみんなに霊力が戻ったのは朗報だったが、俺たちは切り札となる特級伏魔師の先生3人を消耗させられ、どう見ても不利な状態に追い込まれている。
外部から伏魔師の応援も、期待できない。
「久しぶりに、本気を出して見るか・・・」
「お兄ちゃん!」
今は神剣ユングリングを手にしたスズネが、決意を込めた目で強く頷いた。
『光の聖剣』
俺は聖剣を召喚して、両手で強く握りしめて構えた!
「みんな!はなれろ、です!お兄ちゃんの本気の一撃が出るのです!」
「うおおおおおぉぉぉぉっ!行けーっ!!!」
俺は限界まで魔力を『光の聖剣』に込めて、聖剣を振り下ろした!
ドガーン!!!
聖剣は男子寮の半分と、奥多摩の山並みの1部を道ずれに妖魔を消し飛ばした!
「ハアハアはあ・・・、これでも1割くらいか・・・」
全盛期の勇者の俺だったら、もっとやれてたが、今の肉体ではこれが限界だ。
「天霧!よくやった!次も頼めるか?」
皇先生が尋ねる。が、そんな余裕はないようだ!
「ユキトくん!あれを!」
「ユキト、ヤバい!」
サラサとフタバが北西の一角を指さす。
クルミちゃんとミオちゃんもそれを見つけた!
「「ダイダラボッチ!!」」
「旦那様!山を築き、湖を
心優しいサクラ先輩は、真っ黒な暗黒物質に覆われた巨人の無惨な姿を見て涙をこぼした・・・
「たとえどんなに善良な神霊だったとて、1度堕天すればもはや元には戻れない!天霧!行け!」
「突貫する!みんなは相手が射程に入り次第攻撃しろ!」
『黒丸』
俺は右手に『光の聖剣』、左手に『黒丸』を握りしめ、衝撃波の発生も構わずに全力のフライで巨人に飛びかかった!
ドン!
遅れて衝撃波が発生し、半壊した男子寮を更に破壊した。
刹那!ダイダラボッチの目の前に位置を取る!
『
左右合わせて16本の音速を超えた斬撃を同時にダイダラボッチに撃ち込んだ!
俺を掴もうと手を伸ばしたダイダラボッチは、奥多摩の山と共に切り刻まれて黒い煤となって消えた。
消えたダイダラボッチの隙間を埋めるように、千を超える妖魔が押し寄せて来る!
『流水』
瞬時に化け物たちの間隙を飛び抜けると同時に、聖剣と愛刀を振り抜いて数千の妖魔を屠った!
◇◇◇
「「ユキト先輩!スゴい!」」
黄金と漆黒の線を引いて妖魔の大群を殲滅するユキトの姿は、学園のまだ幼さが残る生徒たちの希望となった!
「みんな!来るぞ!陣形を維持しろ!乱戦に巻き込まれるなァー!」
皇の号令が響く!
「『夜叉丸』お願い!妖魔を倒して!『蓮華菩薩』よ!皆を守って!」
日本号を両手に、
『ゲート オブ バビロン 【マキシマム】!』
唇から血を流すほど強くかみ締めながら、全力の魔力を込めた独自の呪術魔法を限界まで展開した
「ユキトが戻るまで、誰も傷つけさせない!」
「うおぉぉ!行かせない!私のこの命に掛けて!!」
ユキトの『光の聖剣』を模した独自の宝具『光剣』を両手に、光の剣舞を舞う
妖魔の攻撃の圧力に崩れそうになった学園生の前に飛び出して行き、数百の妖魔を自分に引きつける!少しでも仲間たちが立て直す時間を稼ぐために!
「『
連続の呪術魔法展開で、残り少なかった魔力の全てをかき集め、更には自分たちの命までも燃やし続けて、
自分たちは妖魔の攻撃にさらされ、傷を負いながらも。
そんな加茂たち4人を必死になって守り支える学園生もいた。これまで加茂たちをバカにして蔑んでいた学生たちであったが、今は必死になって加茂グループのために壁となっている。
「今この時も、大好きな仲間が傷つき倒れています。お母様、尊い森を傷つける大罪をお許しください!」
いつもの姿は微塵も見せずに
『神級魔法【インフェルノ】』
『神級魔法【アブソリュート ゼロ】』
『
『
奥多摩の山を谷を森を飲み込んで、対極の地獄が地上に現れ、億万の妖魔を飲み込んだ・・・
だが、その結果を見ることもなく、金髪の幼いエルフの少女はその場に倒れた。
「「スズちゃーん!!」」
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