第25話 その勇者、襲撃される
◇◇◇
暗闇の深い森の中を暗視スコープをヘルメットに装着した男たちが、音を立てずに進んでいく。
常に周囲を警戒しているその動作は米軍の特殊部隊に肩を並べるものであった。
『隊長。ここですよ』
そんな精鋭の部隊にも気付かれずに、その男は暗い闇の中から現れた。
『くっ!
『とっくに出来てる。この壺が全部で12個。対象を取り囲むように置かれている。』
『・・・約束どおりの効果は、間違いないんだな?』
『ああ、間違いない。この壺を運ぶために仲間が2人命を落としてるのだからな。これはそれほど危険な呪怨器だ。』
『分かった。時間通り始めろ。』
李 大尉はそう言って部下と共にまた森の奥へと進んで行った。
◇◇◇
一方その頃、
その一角に巨大な魔法陣が幾重にも展開されたその中央に、座禅を組んで瞑想している老人がいた。
『
老人は、学園の切り札である3人の
この学園が東の院として徳川 家康の
「・・・ついに始まってしまったか・・・
そして老人は再び深い瞑想の中へ沈んでいった。
◇◇◇
「ソウマ!敵が見えたか?」
大講堂の大屋根の上に、3人の影が音もなく降りた。
「ハガネさん、既に侵入された!学園の自動防御術式が働いていない!それに敵は武装している!」
「不味い!シノブさん。学生寮を結界で守って!」
「だめよ!
「俺もだ!どの神も答えてくれない!霊的繋がりが阻害されて霊力が練れない!」
「
「行け!
「
3人の
◇◇◇
俺は宿舎の周りが広範囲で邪悪な念で取り囲まれたのを感じ目を覚ました。何か神経をヤスリで擦られたような不快さだ。
「みんな、起きて。異常事態だ!」
一緒に寝ていたスズネやサラサたちを起こす。
タタタタタタ!タタタタ!
「えっ、なにこれ銃声?!」
「「「!」」」
サラサの声にみんなが息を飲む!
「急いで着替えろ!」
各自枕元に用意している制服に着替える。
「旦那様!式神が使えません。神霊も!」
サクラ先輩の話にフタバとサラサが確認を取った。
「呪符がだめ!使えない」
「私も、でも魔力は使えそうだよ!」
「日本に由来する神霊力が使えないのか?
「
「お兄ちゃん!クルミちゃんとミオちゃんが心配なのです!」
ドーン!タタタタ!タタタタタタ!タタン!
こうしてる間にも、戦闘の音が大きくなっている。
「よし、みんな俺から離れるな!
「「「はい!」」」
俺はみんなを連れて女子寮へ向かった。
◇◇◇
敵はヘルメットと防弾装備のボディーアーマーが三節棍の打撃を吸収するため一撃では仕留めきれない。
「くっ!霊力を乗せられないから、一撃で倒せない・・・急がなきゃ!」
タタタタ!
タタ!タタタタン!
『ライフルは使うな!同士討ちになるぞ!ナイフを使え!数で押すぞ!』
敵を4名倒したところ、敵の小隊長らしき男が戦術の変更を命令した。
「くっ!こいつら面倒な!」
小銃をスリングで背中に回し、コンバットナイフを手にした兵士が、数を頼みに一気に襲いかかる!
「くっ!」
「きゃっ!」
だが、敵の顔面に三節棍を叩き込んだ瞬間、後ろから体格の大きな男に体当たりされ、弾き飛ばされてしまった!
『今だ!撃ち殺せ!』
復讐の好機に、残った敵兵が小銃を構えた!
タタタタ!
◇◇◇
学園のお役目様からの念話で叩き起された時、
しかし
「シノブさん、どうか持ちこたえてくれ!」
焔はそう願いながら、脇差しで正確に敵の頸動脈を切り裂いて行った。
焔の脇差は
多数の完全武装の敵の中を、焔は燕のように駆け抜けて、交差する敵の頸動脈を外科医の正確さで切り飛ばして行った。
「脇差しで正解だったな。
脇差しの切っ先の脂を敵の戦闘服で
焔が消えた地面には、30人程の敵が自らの血の池に倒れていた。
◇◇◇
本来学生寮を取り囲むように配置されている学園の施設が、それぞれに付与された防御術式と相まって防壁となり敵の侵入を遅延される構造となっていたのだが、その防御術式か止まっている。
「直ぐに敵が来る!」
皇は男子寮と女子寮の境界ある檜の大木の根元に腰を下ろして坐禅をくんだ。
『血継呪術【八熱地獄
学園中央に位置する、全学生を収容する大きな学生寮の広い敷地全体を覆うように、地獄の亡者を隔離する4門の地獄門が現れて、それに囲まれた空間を閉ざした。
間一髪、武装した敵が現れ手に持つ小銃を撃ち始めた!
タタタタ!タタ!タタタタ!
『小隊長!結界が生きてます!』
『5.56mm NATO弾では歯が立ちません!』
『M203射手! 40mmグレネード弾を打ち込め!』
パシュ!ドーン!
タタタタ!タタタタタタ!
敵の攻撃に死門結界が震えるが、ビビ1つ入らない。
「この地獄門は、
坐禅を組んでいる皇の目から血が一筋流れ落ちた。
全身全霊で地獄の結界を維持している皇の目に、敵兵がRPGを構えているのが赤く血に染った視界に入った。
「おいおいロケット砲だと?嘘でしょ・・・」
戦車すら撃破することが可能な死の槍が、皇に向けて放たれた!
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