第18話 その勇者、ビルをぶっ壊す

 明るいネオンに隠された夜毎よごと繰り返される猥雑わいざつな祭りも終わりを告げ、街につかの間の静けさが訪れたころ、俺は新宿の寂れた路地に立っていた。


「どうしてこの街って、男をハードボイルドな気分にさせるんですかね。」


 交流戦代表選抜トーナメント中の大事な時期に、俺を新宿まで引っぱり出した張本人は、さもつまらなそうに吐き捨てた。


「そういう事は、いっちょ前に酒が飲めるようになってから言え。」


 さいですか。オトウサン・・・


「ッチ!また何かろくでもないこと考えてやがるなァ?あァん?俺はまだフタバの事、認めた訳じゃねえからな!」


 学園を出てからこっち、ずっと剣呑な気を発しているのは、フタバのお父さま・・・


「まあまあ九重ここのえさん。今晩はユキトくんに無理して来てもらってるので、ねっ。」


 そうそう。お互い大人の対応で行きましょうよ。


「そうは言っても、秋津洲あきつしまさんよ。あんたのトコだってサラサちゃん、差し出してるわけでしょ?」


「いやいや、差し出してるんじゃなくて、フタバちゃんもサラサも本人達が望んで仕えてる・・・」


「あれ?お師匠方の娘さんって、ユキト君と同棲してるんですか?」


「「同棲じゃねぇ!」」


 仲良いなぁ、お父様達。てか、トウジさん度胸あるなぁ、この2人をあおるなんてさ。


「おっ、お師匠様方、着きました。このビルです。」


「ここって、廃ビルですか?トウジさん。」


「いや、違うんだよそれが。半島系で闇営業のマッサージやデートクラブに金融業まで何でもそろってる。もう少し早く来たら、たぶん見違えてたかもね。」


「それで、例の話は抑えたのか?トウジ。」


「はい、師匠。確証は取れてませんが、この新宿のマッサージ店で働いてる留学生の女の子が、ここで施術せじゅつを受けたと本人から聞き出しました。」


「本人から聞き出したねぇ。」


「いやいや、九重ここのえの師匠。いかがわしいことはなにも!仕事ですよしごと・・・」


「まあ、いい。病気には気をつけろよ。」


「は、はい。もちろんです・・・」


「それよりも、九重ここのえさん、手配の方は?」


弎級さんきゅう弐級にきゅうの伏魔師が3人配置に着いている。」


「分かりました。トウジ。お前はこの正面で、他の3人と結界をはれ。俺と九重さんとユキト君で突入す。ヤレ!」


 トウジさん達がこのボロビルを結界で閉じると・・・


「ああ、何だこりゃ!いっぱいいるなぁ。」


 フタバの親父さんの言うとおり、結界で閉ざされた建物からは、禍々しい妖気が溢れ出していた。


「カイさん。今回俺はどこまで壊していいの?」


「おい、はなから壊す気満々かよ。近頃の若いもんは、抑えってのがきかねぇのかよ。サルかっ!・・・やっぱお前にフタバはやれん!」


「いやいや、それは相手次第かな?我々の身に危険が及ぶ場合は、遠慮なくヤッてくれ。」


「了解!」


『黒丸!』


 俺は愛刀を召喚して、先頭を切って妖魔の根城に侵入していった。フタバの親父さんも一目黒丸を見ると、雰囲気を変えた。


 さあ、みんなギア・セカンドで行こうか!



「それで、話してくれるかしら。2付いていて、この有様な訳とやらを。」


 ボロビルだったを前にして、隙のない黒いスーツに身を包んだ、一目で出来る女と分かる女性が、カイさんとフタバの親父さんを前に説教している。


 フタバの親父さんは傷の手当を受けてる最中なので、カイさんがメインターゲットだ。


「いや、本当に面目ない。だがお姫様ひいさま、今回奴らはブービートラップを仕掛けてました。恐らく門松かどまつが、ねんごろになった留学生という名の不法労働者がえさだったようです」


 いや〜、カイさん。毒を吐きまくり。

 でも、気持ちは分かる。

 目標となった地下の店は、ネイルサロンを隠れ蓑にした闇医者が、格安で堕胎手術を行っていた。


 だが、それさえも真の目的を隠すためのカバーストーリーでしかなく、真の目的は堕胎した胎児を使っての蠱毒呪怨術を行う事だったんだ。

 本当におぞましい事をやってやがった!


「現場のネイルサロンにある隠し部屋をユキト君が見つけたんですが、その隠し扉にトラップの呪符が仕掛けてあったんですよ。それをユキト君が壁ごとぶった斬って隠し部屋に入ると・・・そこには更なるトラップがあって、一級妖魔が三体現れまして、我々にに襲いかかってきたんです・・・」


 カイさんが身振りも混じえて説明してくれてる。


「でも、お姫様ひいさま。これはとんでもなく危険な兆候だぜ。奴ら俺たち伏魔師を直接狩りにきやがった!これまではコソコソとゴキブリのように隠れて逃げ回ってた奴らがだ。」


 応急処置が終わったフタバの親父さんがお姫様ひいさまと呼ばれる美人さんにいった。


「お姫様。しかも今回奴らは、奴らの秘中の秘術である『蠱毒の壺』を餌に使いました。恐らく横浜での事件の報復の意味があるのかと。」


九重ここのえさん、秋津洲あきつしまさん、状況は分かりました。公安対魔室でも注意を払いましょう。

 でも何故現場がこうなってしまったのですか?これでは詳細な術式調査や科学捜査ができないではありませんか。」


 やべぇ、カイさんと親父さんが無言で俺をみてーら。


「ああ、多分それ俺がやっちゃいました。」


「「多分?」だと?」


「すんませんしたー!」

 素直にドゲーザ。


「君が天霧あまぎり ユキト君ですね。初めまして。私は警察庁 公安対魔室 課長の阿蘇あそ ミズホ 警視です。」


 口元のホクロにエロスを感じる、ボブカットの美人さん ― しかも、イケナイOLなメガネ付き ― が、この若さで警視様とは、エリートですか?


天霧あまぎり ユキトです。よろしくお願い申し上げます。」


 背筋を伸ばして、45度の敬礼!


「さて、困りましたね。この状況に関して、私の方から消防と所轄には説明しておきます。天霧君からも調書を取って、2・3書類に判を押して貰いたいのだけれど・・・」


「え〜っ!これからですが?もう空が明るくなって来たんですが・・・」


「そうですね。分かりました。後で、そうね、今日の選抜トーナメントが終わったら迎えを出しますので、公安対魔室

まで来てください。よろしいですね?」


 カイさんとフタバの親父さんをみたが、目をそらされてしまった・・・


「よ、よろこんで〜」



 結局学園に戻ったのは8時頃だったのて、睡眠は諦めて軽く風呂に入ってから支度をいそいだ。


 でも、新しいウチの檜風呂。10人くらい一緒に入れるような風呂が、24時間入浴可能性だとはおどろいたよ。どこの旅館か!


 てなわけでやって来ました闘武場・・・


「交流戦代表選抜トーナメント準々決勝を始める!1-A 天霧あまぎり ユキト。同じく1-A 九重ここのえ フタバ。両者前へ!」


「おい、同じ1-A同士がベストフォー進出か!すごいな、今年の1年!」

「九重も天霧組じゃないのか?」

「あの組に入ると、相当やばいことやらせられるらしいぞ!」

「女は洗脳されるそうだ。天霧のハーレム要員として。」


「なあ、フタバ。すげー悪口いわれてっぞ。」

「ん。それはユキト」


 フタバは平常運転の無口っ。このが、親父さんの血を引いてるとは、ゲセン!


「それより、朝帰りとは・・・はぁ」

「まてまてまて!昨晩から今朝までずっとフタバの親父さんと一緒にいたんだぜ。仕事だったんだ!」

「まるで、浮気した男の口上」

「ちょっ、まてやー!」


「審判、もういい。始める」


「もう、いいのか。他人の痴話喧嘩は蜜の味なんだがな。

 良し、では始め!」


「まい・・・・ひぃ!」

「降参する」


 口を開こうとしたら、フタバに睨まれ先に宣言されてしまった!


「なにこれ・・・。はい、天霧の勝利。」


 主審に呆れられているが、フタバに勝ちを譲られたー!俺も譲ろうとしたんだが、何か違う感が半端ない!


「フタバ!これは・・・」


 フタバが俺の腕を胸の谷間に埋めるように抱きつきながら言った。


「良妻賢母?内助の功?

 正妻レースは1歩リード!

 そんで、フタバちゃん大勝利ーぃ!」


 さいですか・・・



*************


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