第15話 その勇者、先輩を見守る
「ひゃっほー!お兄ちゃんといっしょ、お兄ちゃんといっしょ!なのですぅ!」
「よかったね、スズちゃん!」
「スズちゃん、お兄ちゃん大好きだもんね!」
変則三者面談が終わった頃には、どっぷりと日は沈み、外はもう暗くなっていた。
会長から言い渡されたとおり、俺とスズネは新しい宿舎へと向かっているのだが、クルミちゃんとミオちゃんも一緒だった。
「クルミちゃんとミオちゃん、2人とも本当にいいの?」
「はい!でも私たちはまだ、中等部なので、寮の門限までしかご一緒できませんが・・・」
「私もクルミちゃんもできる限りユキト先輩と一緒にいたいから。」
「それは構わないんだけどさ。でも家臣扱いってどうなの?俺、そこんとこ良く分からないんだけど・・・」
「ふふ、そうですね。私もよくわかっていません。」
「クルミちゃんのお家も私の家も、御三家から見れば
「そうなのです!お兄ちゃん。クルミんはクルミん。ミオちんはミオちんなのです。」
「ありがとう、スズちゃん。」
「でも、サラサ先輩とフタバ先輩のほうが、ちょっと難しいかも・・・」
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「こ、こんばんわ〜」
純和風の玄関に入る。何故か緊張してしまう・・・
学園敷地内の比較的外側に位置する俺の新しい宿舎は、平屋だが結構な大きさがあった。
お、俺の実家よりでかい件・・・
「お、おかえり・・・遅かったのね・・・」
「おかえり。旦那様。」
「ちょっ、待て待て待て!2人ともなんて格好してるんだ!」
それは、もしや伝説の裸エプロン!
「だいじょーぶ、はいてます!ふんすっ!」
「私は嫌って言ったのよ!でも、でもね、フタバとフタバのお母さんが用意してて・・・ヤダァ、もうお嫁に行けないー!」
「サラサ、大丈夫。ユキトにまとめて貰ってもらうから」
「やるな、フタバ!なのです。これが伝説の
「キャー!フタバ先輩にサラサ先輩、大胆ー!」
「そのエプロン可愛いです!その下にヌーブラとベージュのTバックですか?すごっ・・・」
誰かフタバの暴走止めてくれ・・・。コレ見たら、親父さんが泣くぞ!フタバよ。
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泣く泣く(あえて、誰がとは言わない)良識のある部屋着に着替えて貰って、みんなで遅い夕食を作って食べた。
年少組の2人は本当に良い子で、料理も上手でとても可愛らしかった・・・だが、フタバとサラサはダメだ!危うく飯マズヒロインになるとこだった!
ん?スズネ?後生だ。聞かないであげて・・・。
◇◇◇
「ダメでござる!
「くそっ!もう一度、頼むでござる!」
「加茂氏も、見え見えンゴ!攻撃パターンをもちとよく考えてクレメンス」
「
「どんと来いだお!」
わずかな街灯のあかりしか届かない学園の外れの空き地で、加茂ブラザースがひたすら鍛錬を続けている。
ユキトに指導されたことを何度も何度も繰り返して。
・
・
・
「ハァハァ・・・」
「なあ、
「
「あ〜あ、勝ちたかったでござるなあ。これまで3年間、皆からは底辺とバカにされ見下されて、いつしか拙者自身がそれを仕方ないと受け入れていたでござるよ。天霧氏に出会うまでは。」
「
「だから、
「加茂氏もがんがれー!」
「はい、頑張ります!」
◇◇◇
「はぁ、風呂は命の洗濯と昔の偉人が言ったけど、俺のライフが溶けていく件・・・」
新しい宿舎には、広くて立派な檜風呂があってだなぁ、問題は・・・
「きゃー、こっち見ないでぇ!ユキトくぅん!」
「ぐへへ、姉ちゃんいい体してるねぇ、見ても減るもんじゃないから、こっち向いてよく見せな、です。」
「サラサ。それテンプレ。」
「いやん!スズネちゃん。変なとこ触らないでぇ〜!」
「エロフもテンプレ定期!」
「でかいメロンをお湯に浮かべてるフタバちゃんの方がエロエロエチエチなのでっす!」
スズネたち女性陣がはしゃいでる。
なぜわざわざ俺と一緒に入りたがるんだよ!
・・・でも、勇者時代にこんなに気を弛めたことは無かったなあ・・・
◇◇◇
カンカンカン・・・
狭い鍛冶場に槌の音がリズミカルに響く。
「なあ、ユキト。こっちに来てからのお前をずっと知ってるから言うけどさ、お前、無理に人を遠ざけて孤独に身を置くのはもうやめろ。せめてお前の可愛い弟子たち位は胸を開いて受け入れてやったらどうだ。
ヴァッカースやボルカなんて、本当にお前のことしたってるんだぞ!こんな素っ気ないヤツだというのによ。」
「だいぶ使えるようになってきたが、あいつらまだ12じゃないか。子供は苦手なんだ。」
「俺にいわせれば、お前だってまだまだ子供だ!」
赤熱した金属を打つ槌から、火花が飛ぶ。
「なあ、ユキト。1人で立てる強さは、本当の強さじゃない。守るべきものを背負って立つ強さこそ、本当の強さなんだ。」
エルドレインは鍛冶打つ手を止めて俺を優しい目で見た。
「だから、今のお前の強さは、危うい・・・」
エルドレイン。本当に優しい男だった・・・・・・
◇◇◇
「
代表戦選抜2回戦、大淀先輩は既にボロボロになっおり、片膝を床に付けながら荒い息を整えている。
「
大淀先輩は、式神の
しかし、相手は同じく3年生だが第4席次、大淀先輩の式神を冷静に木刀で倒していく。
だが、大淀先輩は式神が倒されることを想定し、相手が4匹目の式を倒している隙に、更に3匹の式神を呼び出し、相手を攻撃に向かわせた。
3匹のの
「何度も同じことを!大淀!所詮Dクラスのお前ごときでは、Aクラス第4席次の俺には勝てん!」
相手は式神の火炎攻撃を冷静に躱しつつ、
「今度こそ、これでお終いにしてやる!」
「隙ありー!」
対戦相手は気合いとともに大淀先輩に駆け寄ると、大淀先輩の脳天に木刀を叩きつけた!
「「キャー!」」
アリーナの観客は、流血の惨事を予想し悲鳴をあげる!
「なんだと!」
だが、脳天を割られたのは、大淀先輩の式神である
「上手い!大淀先輩!」
俺は、大淀先輩の巧みな戦術を称えた!
大淀先輩は式神に囮をさせると、自分は加茂に教わった透明な野衾の後ろに隠れながら、対戦相手の後ろを取っていた!
「
4本のアースランスが、必殺のタイミングで放たれた!
「ギャーっ!」
対戦相手は1本のランスは木刀で払うことが出来たが、残り3本のアースランスを体に受けて、武闘場の石畳に倒れ伏した。
「
「勝者!3-D
「「「うわー!わー!」」」
「お見事!大淀先輩。ジャイアントキリングだね!」
ボロボロになりながら闘武場に立つ先輩は、誇らしそに見えた。
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