第11話 その勇者、先輩を鍛える


 その後、俺の『魔法学』講座は第三回まで進み、参加者の魔導器官も俺の魔力を注いで歳相応な大きさまで成長させた。


 不思議なことだが、サラサもクルミちゃんもミオちゃんまでもが、初めて魔導器官の施術を行った時には、フタバのようなエチエチな反応で、俺の十六歳の肉体には、強烈すぎる煩悩を与えた。


 男たち?知らんがな。



「そろそろ交流戦の時期でござるな。」


 味噌ラーメンをすすりながら、加茂ブラザースの三年、茂木もぎ先輩が話しかけてきた。


「そうなると、いよいよ東の院の代表選抜戦!天霧あまぎり氏の抱負やいかにでござる?」


 あれ以来俺たちは、加茂ブラザースの・・・もとい、召喚呪術研究部の部室に集まって活動するようになったため、こうしてブラザースと食堂で一緒に食事するようになっていた。


「「応戦します!ユキト先輩!」」


 サラダスパゲティに手をつけていたクルミちゃんたちも、興奮気味に応援してくれる。


「・・・」


「おい、天霧あまぎり!さては学年の掲示板に貼ってある通知を見てないな!」


「ユキトくん。学園からメールでも通知されてたよ〜。さては、それも見てないなぁ〜!」


「ごめん。至らなかった。妻失格」

「グルルル!誰が妻と認めるか、です!この泥棒猫め、です!」


 日替わり定食組は仲が良いなぁ〜


「現実逃避するな!天霧!で、どこまで理解してる?」


 俺と同じカツ丼仲間のクセに、加茂が突っ込んでくる。


「・・・」


「ダメね」

「知らないようでござるな。」


「はい、加茂君。説明してあげて。」


 箸を振り回すな、サラサ。行儀悪いぞ!


「はぁ、仕方ない。いいか、天霧。毎年一学期の終わりに、東の院と西の院は代表同士で交流戦をやる。

 その代表五名を決めるための代表選抜戦が再来週から始まるんだ。

 ここまではいいか?」


「立派になったな加茂。最近オタク言葉が出ないじゃないか。」


「チョッチ寂しいンゴ。」

「女性の前ですしおすし。」

「恋か?これが恋でござるか??」


「からかわないでください!先輩!」


 どうやら図星みたいだな。顔赤いぞ、加茂!


「それよりも、選抜予選は来週から始まって、今年は全40枠のう19枠が3学年のAクラスで埋まっているから、残りの21枠をかけて特殊科の学生が予選を戦うんだ。

 もちろん僕も予選にエントリーしている。」


「あっそう。ねぇねぇ、先輩たちはエントリーしたんですかぁ?」


 クリティカル!サラサの口撃で加茂HPが0になった。


「拙者と茂木もぎは三年なので、最後の代表選抜で良い結果を出して、ナンバーズ入りしたいでござるよ。」


 大淀おおよど先輩が珍しく真面目な口調で胸の内を明かした。


「ワイも出るンゴー!」


 遠野とおの先輩はまだ二年だからか、いつものノリだ。


「よし!それじゃ、午後の講義空いてるヤツから鍛えてやるよ。

 サラサ、悪いが修練場確保してくれ。

 ミオちゃんたちも、鍛えたかったら、午後の授業終わってから来るといいよ。」


「「はい!」」


「天霧組の旗揚げでござるな!」


「いや、もっとマシな名前にしろよ。」



「そこ!大淀おおよど先輩。今の踏み込み、元素魔法は牽制けんせいにしてもっと踏み込んだ方が良いですよ。

 ただ、牽制けんせいだとバレたら意味が無いので、発動の速さと威力が大事です。

 もう一度。」


 第8修練場を借りた俺たちは、代表選抜予選に向けてトレーニングしている。


 加茂ブラザースが2組に別れて模擬戦をやってるのを俺が指導してるのだが、その周りで女子チームが魔力循環のトレーニングをしているのだ。


 それで、俺はブラザースの模擬戦をみながら、ミオちゃんの魔力循環の指導も同時にやっている。


「ミオちゃん、集中して!

 俺の流した魔力量に合わせて、ミオちゃんの魔力を出来るだけ均一に流すんだ。」


 ミオちゃんと両手を繋いで、お互いの魔力を循環させている。


「はい!」


「そう!いいよ。だんだん早く循環させるよ・・・」


「んっ・・・あん・・・ゆ、ユキト先輩・・・」


「加茂!それじゃだめだ!高雄たかおちゃんたち野衾のぶすまへの支援が遅い!」


 修練場は直径三十メートルもないので、みんなの動きは見なくても全て把握している。


 すると、誰かがこの修練場に入ろうとしていた。


「みんな、止め!」


「おや、これはお邪魔してしまったかな?」


 慈恩院学園じおんいんがくえんのそれとは違った制服の男女5人が修練場に入ってきた。


莵道とどう様!」

「・・・」


「おや、誰かと思えば、秋津洲あきつしま九重ここのえ東家あずまけの者ではないか。

 久いいな。」


 サラサとフタバが心持ち青ざめた表情で莵道とどうと言う男に頭を下げた。


「東国の秋津洲と九重は、作法すら忘れたのかしら?」


「よい、シオリ。学び舎では、作法は求めん。東国とあらば、なおさらだ。」


「しかし、タカノブ様。御三家の中の莵道とどう三席家に連なる家老家の縁者えんじゃがこの有様では、御三家の名に傷が・・・」


 いい加減、ウンザリしてきたが、この人に任せよう。


「おや、御三家への礼儀と言うのなら、ここで僕に見せてもらおうか?吾妻あずま シオリ。」


「れ、冷泉院れいぜいいん様!ど、どうしてこのような場所へ・・・」


 ウチの生徒会長のご登場だ!いよ〜、待ってましたぁ!


「これは、マサオミさん。ご機嫌よろしゅう。」


「やあ、こちらこそタカノブさん。ようこそお越しで。」


 おー、なんかすげー!これが、京女のイケズってヤツか?男だけど。


「校門まで迎えにでたけど、見当たらなかったんで、てっきり迷子になったんかと思って迎えに来ました。」


「これは、御三家筆頭家の御曹子に面倒をかけよったかな?えろうすんません。」


「いえいえ、どうってことありません。良いとこのぼんさんは、世俗のことは難しいでしょうからね。

 マサモリ。タカノブさん御一行を生徒会室へ案内してくれ。」


「はい、マサオミ様。

 では、莵道とどう様と皆様方、こちらへどうぞ。」


 冷泉院れいぜいいん先輩と一緒に来た三年の先輩が、イケズな一行をつまみ出してくれた。


冷泉院れいぜいいん先輩。ありがとうございます。でも、あれは一体?」


「ん?知りたい?なら、天霧君が生徒会に入ってくれたら、教えたあげるよ。」


「イエケッコウデス」


「ははは、まだその方が良いかもね。

暫くは彼らに関わらないほうがいいと思うよ。

 それじゃ、ぼくはこれで。」


 さわやかに修練場から出た行こうとする先輩・・・


「あっ、これ一つ貸しだから」


 全然さわやかじゃねぇ!


◇◇◇


 都心へ向かう中央道を黒塗りのリムジンが走っている。


莵道とどう、感触はどうだった?」


 莵道は、灯りのともり始めた街並みを、退屈そうに眺めながら答えた。


「接触はしましたが、冷泉院れいぜいいんに邪魔されました。」


「ふん、お前との対決から逃げ出した、それだけの男だ。」


「東国へ下った東家あずまけのもの達に探りを入れても、らちがあきませんでした。恐らく東の院の横槍が入ったのでしょう。」


「かのものの伏魔師叙任を急がせろと東の院からの圧力が強くなっておる。交流戦までに、できる限り情報を集めよ。」



*************


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