第11話

 馬車に乗せられた俺たち(俺とスライム)は何も知らされずに勝手に出発してしまった。


また誘拐されるのだろうか、と身構えていると突然、外にいたはずの兵士が中に入ってきた。


「お前、いきなりのことで驚いているだろう、今から説明するからそこまで身構えなくてもいい。」


この人は俺が緊張して固まっているのを見抜いたようだ。それでも、俺はその緊張を解くことはできない。

そりゃあ一回誘拐されたのなら例えどんな人間でも警戒はするだろう。


向こうもこちらがリラックスすることが出来ないと察したのだろう、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。


「まず、君には知らせておかないといことがある。それは君がここ数十年間誰にも突破出来なかった試験を突破したということだ。おめでとう。」


これだけでは意味がわからない。俺はいつの間にか試験でもされていたのだろうか。


「全くどういうことかわからないんですけど。」


兵士がその言葉を待っていたかのようにまた言葉を発し始める。


「待ってくれ、話の途中だ。君はユニークジョブを持っているだろう?ユニークジョブを持っているものはこの国では数十年前から試験が行われているんだ。君も受けたからわかるだろう?魔物の森に数日間放置されるんだ。」


なぜそんなことをする必要があるのかわからない。というか10歳程度のまだ子供にそんな試験を受けさせても生きて帰れるわけがない。そんな俺の不信感を感じ取ってか、間髪入れずに兵士がしゃべりだした。


「それがこの国の方針さ。君がわからなくてもしょうがない。まぁ、そんなことは置いておいてようやく君は王都に出発できたわけだ。楽しみにしていてくれたまえ。」


話を少しはぐらかされた気がするがたぶんこれ以上訪ねても答えてくれはしないだろう。

俺は一度このことは忘れてようやくミレイヤに会えるという喜びを感じていた。ここ三日間は人にすら会えていなかったからな。


(ねぇねぇ?この人知り合い?)


スライムに声をかけられた。常人ならやはりモンスターの言葉すらわからないらしい。兵士も気にしていなかった。


「違うけど、この人たちが王都に連れていってくれるよ。」


俺がいきなり言葉を発したからか兵士が驚いている。

そしてなぜか知らないが一人でうなずいている。


「なるほど、モンスターの使役系統のジョブなのか。それだったら魔物を手なずけてあの森で暮らすことは容易いことだな。」


まぁジョブに関してはモンスターの使役とは違うが詳しく聞いてこないからこちらから訂正はしなくていいだろう。


俺は疲れがたまっていたのかもしれない。あんなに警戒していたのにスヤスヤと気づいた時には寝てしまっていた。



……――……

俺が起きるともう辺りは暗くなっており、もう王都の門をくぐっていた。


「ようやく起きたか、もうそろそろ起こそうと思っていたから丁度よかった。」


そんな話をしている間にも馬車は進んでいき王城へと向かって行った。


馬車が完全に止まり、俺たちは王城の中へと入って行った。

夜も遅く、あまり王城内の人通りが少なかったため俺はスムーズに自分の部屋へと向かうことができた。

そしてこの部屋の近くにはミレイヤの部屋もあるらしい。

俺は一目散にその部屋へと向かって行った。


が、その日のミレイヤは疲れているらしく、あまり会話をすることができなかった。

昔の仲の良かったミレイヤだったら何があろうとも会話ぐらいならしてくれたのに……と思いながら俺は自分の部屋へ戻った。


このような行動が彼女を周りから孤立させていくことを彼女は知らなかったのだろう。

そしてこの時俺は将来精神科医として名を馳せるということも知らなかった。



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