第5話 ご飯も一緒なのです
ピザでも取るか。スマホは……っと。
「もしもし、ピザを注文したいのですが」
「えっ!? ルナに聞いてるのですか?」
「んなわけないだろ! あっ、いや、こっちの話です。4種類のやつでお願いします」
「独り言ですか?」
「ちょと、静かにして。あ、いえいえ、すみません。じゃあ、それで。はい。お願いします」
てか、何で電話中に絡んで来るんだよ。
「今のは何ですか?」
「いや、そのセリフそのまま返すわ。電話中なんだから、話しかけるなよ」
「電話……? 何ですかそれは?」
「なにー!」
いつまで続くんだこの設定……。でも、きついこと言うとさっきみたいに落ち込むかもしれない。ここはもう流しておこう。
俺は適当に話を合わせて、その場をやり過ごした。そして、しばらく雑談をしているうちに、30分が経った。
ピンポーン!
恐らく、ピザの配達の人だろう。
「ちょっと、配達来たから。腕を放しても……」
「誰か来たのですか。ルナも一緒に行くのです!」
駄目だ。やっぱり、放さない。あまりベタベタしているところを見られたくないんだが。
「分かったから、大人しくしろよ」
「ルナは一緒に居れたら、それでいいのです」
俺が扉を開けると、こんな時に限って綺麗なお姉さんだった。
「こちらが商品になります。お会計は2580円になります」
「はい、スマホ決済で」
「んーー」
なんか顔を膨らませて怒っているぞ。
「ありがとうございました。只今、キャンペーンでもしよければ……あ、ははは……。失礼しました」
配達のお姉さんは、何かを察したのか出て行ってしまった。そりゃあ、俺の腕をずっと掴んで睨まれたらそうなるわ。
「おい! 何で怒っているんだよ」
「んーー、あの綺麗な女性は誰なんですか?」
「いや、知るわけないだろ」
「嘘です。知らない女性が夕食なんか持ってきません」
どういう発想しているんだよ!
「あれはお店から配達してくれているんだよ! あるだろ? そういうサービス」
「ないです。でも、ルナは負けません!」
「もう二度と会わないかもしれないのに張り合うな!」
「張り合ってません。ルナは婚約者としての立場があるのですっ!」
「……」
「……」
「それを張り合うというのでは……」
これから女性に会う時は気を付けないと、いちいち俺が恥をかきそうだ。
うん、いや、心配するほど周りに女性は居なかった……。
希望を捨てるな。大学生になったら、彼女を作って、部屋でご飯食べたり、イチャイチャして過ごしてやる!
ちょっと、待て! 今何気に達成されているような気がするが……。
いや、これはノーカンだ。
「それより、さっさと食べよう。冷めてしまう。食べる時ぐらい腕を放して欲しいんだが」
「それは譲れません。一緒に食べるのです」
「お前なぁー」
というか、配達のお姉さんが来てから、腕を掴むだけではなく、両手で抱きしめるようになったんだが……。
そして、ソファーに座るとより、密着してなんか嬉しそうな表情をしていた。
「ルナはしばらくこのままでもいいのです」
「いや、冷めるから駄目」
「んーー、分かりました。でも、ルナは両手が塞がっているので食べさせて欲しいのです」
「え? なに口を開けているんだよ!」
「アーンして欲しいのですぅ。いつもやってくれてました!」
「妄想、じゃなくて、異世界で俺そんなことしてたか?」
「し、してました、のですぅ。はい」
これは嘘だな。嘘ついた時、直ぐに顔に出るぞ。
「じゃあ、放さないという約束は?」
「それは本当です!!」
これは本当ぽい。
「アーンしてくれたら、腕を掴むだけにしてあげます」
「なんだその交渉材料は! いいよ、俺一人で食べるから」
「んーー。ふーんだ」
なんか拗ねた。それはそれで可愛い……いやいや、見た目に騙されるな。
「ほーら、見て。チーズがこんなにもとろけているよ!」
「……」
「うまーい!! 他にも海鮮、ガーリック、テリヤキあるぞ。早くしないと俺が全部食べてしまうぞ」
グゥーーー
「ほら、腹減ってるなら食べろよ」
「食べさせて欲しいのですっ。アーン」
「お前なぁ……」
グゥーーーキルキルキル
「アーン」
「うっ」
グゥーーーゥ、キルキルキル
「アーン」
「おい、腹鳴らしながらそれは卑怯だぞ」
「アーン」
「分かったよ。それで、どれが食べたいんだ?」
「ルナはその食べかけで十分なのです」
「お前、後で間接キスとか言うんじゃないだろうな?」
「キスは直接するものです。今しますか?」
「するか! 先に食欲満たせ!」
「では、食後に」
「しないよ!」
このままだと、変な流れになりそうだから、さっさと食わせるか。
「ほら、チーズたっぷりだぞ」
「アー、ぱく」
「うまいか?」
「美味しいでれすぅ。もっと欲しいですぅ」
「ほら、ゆっくり食えよ」
「むにゃむにゃ」
なんか小動物みたいで可愛いな。
ちょっと癒されるかも……。
いやいや、気をしっかりと持てー、俺。
こうして食事も終わり、ひと段落着いた。
相変わらず、両手て抱きしめたままだが、アーンしたら腕を掴むだけにするんじゃなかったのかよ。
「はぁー、食った、食った」
「これからどうしますか?」
「どうって、言われても……」
「お風呂にしますか? それともルナと……」
「こらー!!」
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