朝起きたら見知らぬ美少女がグイグイ来て困るんだが~異世界で婚約したと言われても、全く記憶にありません。

古手花チロ犬

第1話 ルナは放しません!

 ある日のことである。

 俺はいつものように目を覚ますと、何故か見知らぬ美少女に抱きしめられていた。



「うわーーー!! だ、誰!!?」

「私はルナ。あなたの婚約者なのです」

「婚約者? 何言ってるんだよ! ていうか、放してくれないか!?」


「あなたがルナのことも、ルナの世界の記憶が無いことも知っています。でも、ルナはあなたの婚約者なのです。ここで放したらあなたは逃げようとします。だから、放さないのです。そうあなたと約束したのです」



 本当、何を言っているんだ!? ルナの世界って、異世界とでも言いたいのか?


 確かに、高校入学してすぐに事故に遭って、3年ぐらい昏睡状態になっていたけど、その時に異世界に行っていたとでも? 


 冗談じゃあないぜ。いくら高校に行けなかったからと言って、それぐらいの分別はつく。


 これから高卒認定試験の勉強もしないといけないし、ここは早く帰ってもらおう。 

 俺には高校行けなかった分、可愛い彼女を作って、バラ色の大学生活を送る目標がある。



「すまないが、何を言っているのか全然分からない。俺は忙しいんだ。一人暮らしだから家事もしないといけないし。帰ってくれないか?」


「……。い、いやです。ルナは絶対に放さないのですっ!」


「いい加減にしろよ! 何を企んでいるんだ! 何かの詐欺か!? 警察呼ぶぞ!」

「ル、ルナは……そんな……」



 なんか急に泣きそうな顔になって来た。言い過ぎたかな?



「ル、ルナは放したくないのです。婚約者ですから。ははは……」



 今度は無理に笑おうとして、辛そうな笑顔になったぞ。なんか罪悪感があるけど作戦か?

 そもそも、婚約者を名乗っているけど、そういう年齢じゃあないだろ。



「婚約者と言うわりには、随分若く見えるけど」

「ルナは15歳になったから、結婚出来ます! 普通なのです」

「15!?」



 ここで警察なんか呼んだら、俺が捕まりそうだ。

 確かにそれぐらいの年齢だ。幼いし、綺麗な金髪ウエーブが掛かって、お嬢様みたいだ


 でも結婚出来る年齢って、16 いや18だったはず。

 ここはやっぱり、上手く言って帰ってもらう方が一番だろう。



「分かった。逃げたりしないから、とりあえず、放してくれないか?」

「じーーー」

「何だよ。じっと見て。俺も健全な男だから、いつまでこんなことをしていると……」


「大丈夫なのです。ルナの全てをあなたに上げましたから」

「おーい!!」



 これは逆効果だった。こんな可愛い女の子にずっと抱きしめられていたら、そのうち、変な気を起こしてしまいそうだ。でも、今は何か企んでいるような気がして、まだそんな気になれないが。



「お前、いつからこんな事をしているんだ?」

「さっき来たので、まだ数時間しかしてないのです」

「俺が寝ている時に変なことしてないだろうな?」

「へ、変な……ことは……してません!」



 絶対何かしているだろ!



「まさか、キスとかしてないだろうな?」

「キスは普通にさせて下さい!! 挨拶みたいなものです!」



 何でキレているんだよ! ということはキスはしたな。



「お前、俺のファーストキスを奪ったのか?」

「もう、ルナと何回もやってます! で、でもルナのキスがファーストキスだったんだー。えへへへ」



 今度は喜んでいるぞ。というかこの子、俺が寝ている間にもっと凄いことをしていたのか?



「お前、一体俺に何をしたんだ?」

「教えたら……もう一回させてくれますか?」

「うっ」



 駄目だ。これ以上聞くとヤバそうだ。てか、本当に何をしたー!?



「分かったもう聞かないから」

「んーー」

「何か不満そうだな」

「だって……」


「ていうか、本当に放してくれないか? ちゃんと話を聞くから。なんか訳ありなんだろう?」

「んーー、分かりました。でも、腕は掴ませて下さい」

「何でー」



 余程、俺って信用がないのかな? それとも逃げようとしているのが、分かっているのかな?



「ふぅー、やっとベッドから起き上がれたよ。話を聞く前に、トイレに行きたいから腕放してくれないか?」

「駄目なのです。トイレから逃げるつもりなのです!」


「いやいや、そんなスペース無いから」

「確認させて下さて欲しいのです」



 本当に俺を放さないな。



「ほら、小窓があるだけだろう。満足したか?」

「何か仕掛けがあるかもしれないのです」

「無いわ! てか、早くさせてくれ! 漏れそうだ」

「仕方ないのです。背中の服を掴みます」

「おい! そんなに警戒しなくてもいいだろ!」


「ここから何も見えないから、安心して下さい」

「落ち着かないだろ!」

「そ、それはルナを意識して……ですか?」



 駄目だ! 何を言っても前向きに捉えやがる。



「分かった。もうするからな」

「はい」


「なんか調子狂うよな。はぁー。ん?」



 何か凄い視線感じたから、振り向くと……。



「何覗こうとしているんだよ!!」

「ち、違います! し、仕掛けがないか確認していただけなのです!」

「何か言い訳が苦しいぞ」

「本当なのです!」

「もういいや、もう終わったし出るぞ」

「……」



 あれ? トイレから出ようとしないぞ。



「お前が出てくれないと、出れないんだが」

「うぅぅぅ」

「どうした? 具合でも悪くなったか?」

「な、なんかルナも……したくなりました……うぅ」



 本当に行きたそうだ。手で押さえて辛そうな顔をしている。

 でもなんかエロく見えるから、直視したら駄目だ。


 でも、これは逃げるチャンスだぞ。

 


「そうか、じゃあ俺は出るから」

「だ、だめですぅ。うぅぅ、放したくないのです」

「それじゃあ、出来ないだろう」

「うぅぅ~ぁ~、あ、あなたは逃げるつもりですぅ」



 やっぱりバレている。けど、流石に我慢は出来ないだろう。



「こ、ここに居て下さいぃ~んん」

「いや、例え婚約者でもトイレするところなんて見られたくないだろう?」

「ル……ルナは……放したくなぃ……うぅぅん」



 駄目だ。この子、俺を放すくらいなら、このまま漏らす方を選びそうだ。

 でも、何でここまで頑なに放さないんだ? 

 何か事情でもあるのか? 


 俺との約束って言ってたけど、俺、そんな約束絶対しないと思うんだが……。









 

















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