『正直な漁師』

「母さん、行ってくるよ」

年老いた母に見送られ、家を出た浦島太郎は仕事場に向かう。


するとその途中、一匹のでっかい亀が近所の悪ガキ達にいじめられているのを目撃する。それはもうでっかい亀。


困っている人が居ると放っておけない性格の彼は浜に向かう。今回の場合は人では無いが…え?でっかくね?大人二人か三人くらい背中に乗れそうじゃん。


「これこれ君達やめないか」

浦島太郎が生真面目で、融通の効かない面倒くさいヤツだと知っている悪ガキ達は素直に言う事を聞き、逃げる様に去って行った。


浜に残った亀と浦島太郎。何か言いたげにこちらを見てくる亀の様子は気になったが"お礼でも言っているのだろう"と考え清々しい気持ちで仕事に向かう。


「あの亀は…今朝の?」

仕事を終え家に帰る道中、見知った亀が浜に居た。でっかい亀だったので、朝の亀に間違い無いだろう。


亀は何か口に咥えている。近付いて見ると、美しい黒塗りの小箱であった。浦島太郎が来た事に気付くと、亀はその小箱を砂浜に置いた。浦島太郎にその箱を譲ると言わんばかりの勢いで。


「これは…落とし物だな」

「交番に届けよう」

にしてもやはりでっかい亀だな。この事は母さんにも教えてあげよう。

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