『日進月歩』

日進月歩。

初めて聞いた時、永久機関のような話かと思った。

でも本当の意味は違う。

美しい言葉で美しく見せかけた支配、消費、搾取の言葉。

でも悪い意味の言葉じゃない。

体を支配している精神はそれが終わる時まで進み続ける。

誰かが込めた温かな意味は時代の波に風化していった。

この世界が良いものだと信じたかった人々のせいで退化すらも負への成長と言われてしまう。

だからこれは良い意味の言葉。

その言葉に救われない要素たちの中に自分が入らなければの話だが。

そして今僕が見ている世界は多分救われない方。

ずっと痛い頭を気にしないように、痛い気がするお腹も気のせいということにして、昨日と同じ朝を昨日よりも憂響に繰り返す。

引きずるようにしか動かせない重い足もここでは立派な成長の証。

僕を見て微笑ましそうに笑う全員。

彼らも僕が立派に成長していったいつかの成れの果て。

府きながら昨日の通りにたどり着いたのは白くて大きくて窓がたくさんあるこの場所の学校。

成長していくための場所。

歓迎は泥の詰まった上履きで、それを砂場に戻しに向かうと突然の衝撃がこめかみに加わり僕は意識を失った。

目覚めたのはカーテンに仕切られた温かな色の光に満ちた場所で僕は横になっていた。


今朝、僕を虐めていたあの子が死にました。はい、殺したのは僕です。でも彼の成長を止めたかった訳ではありません。僕がより成長し続けるためには彼を殺すことが必要だったと思っています。


僕は進みたいのです。どこか遠いところへ。

どこか、どこかへ。遠いところへ。

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