最終話②

振り向くと、市松人形のような少女が立っていた

こちらにどうぞ…


どうやら、俺を家の中に案内するらしい…

……鏡を返したら、ここから立ち去ろう

少女の後について行った



ロココ様式の店内には、大小の鏡が掛けられ

洋風な小物や食器…花瓶が並べてあった

古き物と新しい物が交わり

不思議な空間を作っていた


いらっしゃいませ…

少女がニコリと笑う


アッ…と

一瞬、言葉を失う

手鏡を…こちらの手鏡ではないですか?

ポケットから出して、少女に見せた


……覚えていませんか?

少女が言う

エッ…と…

言葉に詰まる


私はもう一人の貴方です…

もう一人の俺…?

少女の何処か寂しげな表情

少女の後ろ姿を映し出す大きな鏡


お前…メイクすると、何処か寂しげな表情になるな

いつだったか…モデル仲間に言われたことがある

そして…美しく装う時に感じる物足りない感覚


もう一人の俺…そうモデルの俺…

幼い頃…姉と生き別れになった

両親が事故死をして…

そう…俺は祖父母に育てられた

姉は不要だと…祖父に絶縁されて

何処に暮らしているのか…わからずじまい


手鏡…別れ際に、姉がくれた…アッ!

封印を解いた瞬間…辺りが真っ白になった

真っ白になった時に、少女はニコリと微笑み

消えていく

……お姉さん…

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