第46話 会議
カーテンを通り抜ける光が目を刺激し、わたしは目をゆっくりと開いた。
時計を確認すると、時刻はすでに十二時前であることに驚く。どうやら随分と寝すぎてしまったらしい。こんなことあんまりないのに。
ふと部屋に私しかいないことに気がつく。
昨日の出来事が夢ではなければ、三人ともわたしの部屋にいたはず。柚ちゃんに至ってはわたしの隣で寝ていたはずだ。
まあもうお昼だし、さすがにみんな起きてるか……なんてことを考えながら、わたしはベッドから足を下ろす。
とりあえずカーテンと窓を勢いよく開け、外の空気を吸い込む。雲一つない、とは言わないけど、空はまるで海のように青々としている。いい日曜日だ。
昨日の夜にあんなことがあってもぐっすり眠れるもんなんだな、人間って。
わたしは柚ちゃんに言われたことを思い出していたが、どうすれば……とひたすら悩むのに疲れ、一旦考えることを諦めた。考えすぎるのはよくないのかもしれない。考えすぎって柚ちゃんも言ってたし。
わたしは一度大きく深呼吸をして、窓を閉め、部屋から出る。そろそろと階段を降りていき、リビングの手前で立ち止まる。
いつも通り、いつも通り……
「おはよー!」
いつも通りと思いながらも、意識してます感が強い。いつもよりも元気に言いすぎちゃったかもしれないと少し反省する。
「……おはようございます」
なんだかあまり覇気のないおはようございますが聞こえてきたのが気になって、よく見てみると、三人がテーブルに座って、わたしの方をじろりと見つめていた。
「え、何……?」
「由衣さん。緊急姉妹会議です」
「……へ?」
☆
「い、いやいやいやいや……」
状況が飲み込めない。わたしの状況把握能力がないせいではない。事実が莫大すぎるのだ。
「えっと…… えっと……?」
言葉に詰まる。なんと言えばいいのかわからないというレベルではない。
「まあそういうことですので。すみません、急にこんなこと」
「いやそういうことって言われても……」
緊急姉妹会議という言葉からくる、わたしの膨らんだ想像を事実が軽々と追い抜いていくことってあるだろうか。
楓ちゃんがわたしのことを好きということ、柚ちゃんがわたしのことを好きということ。それをなぜか議題として出されたのだ。そこまででも驚きではあるけど、まあそこはとりあえず置いといて。
ここからが大問題なわけだけど、なんか茅ちゃんもわたしのことが好きらしい……と。
正直、「は……?」という気持ちでいっぱいだ。そこから先、何をどう考えろと言うのだろうか。わたしはここ何日かで一生分の混乱を体験している気がする。
「つまりわたしたちは三人とも由衣さんのことが好き……というわけですね、はい」
「……恋愛的な意味で?」
「それはもう非常に恋愛的な意味で」
わたしは頭を抱える。
どういうことだ、これ。こんなことが現実で起こっていいの? 三人ともわたしのことが好きってこと? そんなバカな。
いろんな考えがぐるぐると頭の中を巡る。
「ということで、これからもよろしくお願いしますね、由衣さん」
微笑む楓ちゃん。
「よろしくね、お姉ちゃん」
元気に笑う、柚ちゃん。
「…………………………」
無言を貫く茅ちゃん。
「……はは、よ、よろしく……」
愛想笑いをするわたし。
一旦落ち着け、由衣。落ち着くんだ、由衣。
普通に考えて、まだ出会って数か月のわたしを三人ともが好きになるなんて話があるわけがない。じゃあからかわれているのではとか、そういうのでもないっぽいし。
もしみんなの気持ちを真実だと受け取るならば、過去に何かあったとしかわたしには考えられない。
昨日の夜、わたしたちは昔、出会ったことがあると柚ちゃんが言っていた。
柚ちゃんと出会っていたなら、楓ちゃんや茅ちゃんと出会っていたとしてもおかしくはない。ただわたしの記憶力のなさのせいで、みんなのことをほとんど覚えていないところに問題があるわけで。
思い出そうと思っても全然思い出せないし……
「わたしちょっと部屋に戻ってるね……」
「お姉ちゃん、お昼ご飯できてるよ?」
「あ、えっと、後で食べるね」
考える時間も欲しいし、そこまで食欲も湧かないし、わたしは部屋に戻ることにした。正直逃げるという言葉の方が正しいのかもしれない。
悩みに悩みが重なって、さらにそれが倍になった感じだ。
とりあえず事実を消化するところから始めないと……
妹って可愛い! モンステラ @monstera1246
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