第7話 同じクラス!?
わたしたちは保健室に行ったあと、すぐに玄関にあるクラス表を見に行った。
「み、みみみ、美々ちゃん!!」
「お、一緒のクラスだ」
「やった!!」
玄関前に貼られた紙には2年2組の欄にわたしと美々ちゃんの名前が一緒に書かれてあった。
「ま、ということで今年もよろしくね、由衣」
「こちらこそ!」
本当によろしくなのはわたしの方なんだけどね。いろいろと。
「じゃあ教室行こうか」
「うん」
わたしは美々ちゃんと一緒に新しい教室に向かう。
「美々ちゃん、今年も出席番号1番だったね」
「苗字が青葉だからね…… 今まで1番だったことしかないよ…… でも高校二年生にもなると、さすがに慣れてきたわ」
出席番号が1番だと、いろんなことを自分がクラスで一番初めにする羽目になるから、美々ちゃんはよく嫌がっている。
わたしは諸麦で、出席番号はだいぶ後ろの方のことが多いから、あんまり縁がない話だ。
「あ、そう言えば、楓ちゃんがどこのクラスだったか見るの忘れちゃった……」
「楓ちゃん?」
「ほら、わたしの妹だよ」
「ああ、確かそんな名前だったっけ」
茅ちゃんと柚ちゃんは今年から高校生なので、新入生というくくりになるけど、楓ちゃんは違う。
一年遅れで高校に入ってくる転校生として、苦労することもあるだろう。
だから何か困ったことがあったら、せめて最初はわたしが助けてあげないと!
「由衣、教室ついたよ」
「あ、うん」
わたしは教室の扉を開ける。
(おお……)
すでに教室はたくさんの人で埋まっていた。
何人か去年同じクラスだった人もいたけれど、パッと見だと、全く話したことない人の方が多い気がする。
ちょっと不安かも……
ううん、美々ちゃんもいるんだし、たぶん大丈夫!
わたしはそう自分に言い聞かせて、黒板に貼られた座席表を確認する。
(右から二番目の列の一番後ろだ。ラッキー)
「はあ、やっぱりまた一番前の席…… しかもまわりみんな話したことない男子しかいないし……」
隣で美々ちゃんが肩を落としている。
(あはは、まあそうだよね。えっと、わたしのまわりの人…… え…… 待って、え……!?)
「楓ちゃん!?」
わたしは一つ前の席に「諸麦楓」と書かれた人物を発見した。
「由衣?」
「美々ちゃん! わたし楓ちゃんと同じクラスなんだけど!」
「あ、ほんとだ」
(え、そんなことある!? よく知らないけど、姉妹って別のクラスに離されるもんなんじゃないの!?)
しかもクラスは1~6まであるし、さすがに楓ちゃんは違うクラスだろうと思い込んでいたので、ものすごく衝撃だった。
(というかさっきクラスの表を玄関で見たはずなのに、わたし美々ちゃんのことばっかり考えてて全然見えてなかったんだ……)
楓ちゃんのことを気にかけないといけないのに、これがわたしのダメなところだ。
「で、その楓ちゃんはどこにいるの? 一緒のタイミングで家出なかったの?」
「うん…… なんかもうちょっと遅くに家を出るって言ってたけど……」
最初だから、一緒に学校行こうかと楓ちゃんに提案したけど、わたしが美々ちゃんと待ち合わせの約束があると知ったら、大丈夫だと言われてしまった。
(まさか同じクラスだなんて…… どうしよう……)
同じクラスなんてなったら、わたしが何もできないダメ人間だとバレてしまう。
「おーい、みんな注目ー」
急に大きな声を出しながら、誰かが教室に入ってきた。
よく見ると、去年わたしの担任だった佐藤先生だ。
おかしいな。いつも新しい担任の先生は始業式で発表されるはずなのに……
まわりの子たちもザワザワしていて、おそらくわたしと同じことを考えている。
「静かにー。先に言っておくけど、俺はこのクラスの担任じゃないからな。まあ新しい担任が発表されるまでの仮の担任みたいなもんだな。それより今年からこのクラスに転校生が来ることになったから」
先生がそう、あっさりという。
まわりはさらにザワザワとし始めた。
「転校生ってやっぱり由衣の妹のこと?」
「うん、たぶんそうだと思う……」
諸麦楓なんて同姓同名の人間がそうそういてはたまらない。
「はいはい、じゃあ入ってきて」
先生が教室の扉に向かって、手で合図をする。
教室はすぐにしーんとなり、みんなの視線は一気に扉へ向けられる。
わたしもグッと扉の方に注目する。
すると、ゆっくりと髪の長い女の子が教室に姿を現した。
(あっ……)
「みなさん、初めまして。諸麦楓です。今年からこの高校に転校することになりました。まだわからないことも多いですが、これからよろしくお願いします」
そう言い終わると、楓ちゃんはゆっくりと綺麗なお辞儀をした。
(やっぱり楓ちゃんだ……)
「先生!」
去年同じクラスだった子が真っ直ぐ手を挙げて、先生に話しかけた。
「何だ?」
「諸麦ってことは諸麦さんの家族とかなにかですか?」
「ああ、この子は諸麦由衣の妹だ」
みんなの視線が一気にわたしに……というわけではなく、わたしの存在を認識していない人もいたようで、徐々にわたしに視線が集まってきた。
すごく気まずいんですけど、先生ぇ……
諸麦なんてどこにでもいるような苗字ではないから、すぐにバレるとは思ってたけど、まさかこんなに早くだとは。
楓ちゃんとは当然顔も似てないし、今年から同じ歳のわたしの妹が転入だなんて普通に考えておかしい。
みんなに説明するのは面倒だから、そこはなんとなく察して欲しいところだ。
「じゃ、そろそろホームルーム始めるか」
そう言って、転校生の紹介もそこそこに、仮の担任よるホームルームは始まって行った。
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