雨が、降る。 ~私が見つけられないこと~
マクスウェルの仔猫
第1話 雨が、降る。
雨が、降る。
雨の匂い。
傘を手に歩く、人の動き。
誰かの気持ち。
誰かの予定。
雨の日には雨の日の、装いがある。
きらびやかな店先。
人待ち顔の誰か。
雨宿りをする、誰か。
それぞれの目的を胸に、傘を差して歩く人達。
肩を寄せ合って、笑い合う男女、家族。
雨の日には雨の日の、愛情がある。
雨は、キライじゃない。
●
だけど。
雨の匂いと温かさが詰まっている街の中で。
店先で、交差点で、駅で、帰り道で、部屋で。
私には、見つけられないものがある。
「お待たせ。ああ、こんなに濡れちゃって……」
「俺の傘で相合い傘しようか」
「手を繋ぎたいって、聞く事? はい、どうぞ」
「夕飯食べたら膝枕、だめ?仕事が忙しかったので、癒やしがほしいです。え?! 有料?!」
君がここにいたら、こんな風がいいな。
夢を見る自分の馬鹿さに、苦笑いをする。
息を切らせて、傘を差し出す君。
温もりを感じられる程、肩を寄せてくれる君。
差し出した手を、嬉しそうに繋いでくれる君。
●
どんなに勉強を頑張っても。
どんなにオシャレをしても。
どんなに気持ちを伝えても。
どんなに涙を零しても。
私に笑顔で傘を差し出してくれる君を。
私を好きになってくれる君を。
私は、今も。
見つけられない。
雨が、降る。 ~私が見つけられないこと~ マクスウェルの仔猫 @majikaru1124
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