サラダと硝子と宇宙旅行

斯々然々

第1話

「この話はフィクションです」

昼の11時から始まるドラマは

最後にそう締めくくる。

現実味のないストーリーに

濃すぎるぐらいに味付けされた演技。

何も面白みがないけれど、

何も見ないよりはマシ。

惰性で見ていたドラマは今回で

最終話らしい。

人生もフィクションのように濃くて

それでいてキリが良くなったら

終わればいいのにな、なんて思っても

朝は来るし、夜も終わるし、腹は減る。

「硝子、ご飯出来てるから食べちゃいなさい」

テレビの電源を切る。

今日は休みだけど、どうやらゆっくりは

出来ないようだ。

リビングに向かうとたらこスパゲティとサラダが用意されてあった。

「お母さん、もう出ちゃうから

食べたら水に付けておいて!

じゃ、夜帰ってくるから」

バタン。

扉が閉まる音はするのに、鍵の音はしない。

立ち上がり鍵を閉める。

そんなに男と会う約束が大切なのだろうか。

クラスメイトの男子を思い浮かべ、

思わず苦笑する。

私の名前は硝子、

ガラスとかいてしょうこと読む

そんな名前だからクラスメイトには

シンデレラなんてあだ名をつけられてしまった。

古臭い名前、かわいげの一つも無い。

王子様はちゃんと責任を持って

接してくれる人がいいなと思う。

現れるわけなど無いのだけれど。

まぁそんなことを考えてるうちに

スパゲティを食べ終わり、

サラダにドレッシングをかける。

ふと、サラダが喋る。

「こんな人生、生きてて楽しいかい?」

楽しいわけないよ、そう呟く。

「そうか!じゃあ一ついいことを教えてあげよう!お母さんを見てみろ!あいつは賢い、なぜなら依存できるものを持ってるからだ」

男の人の事?硝子はドレッシングでドロドロになったサラダに聞いてみる。

「そうさ、依存さえすればどんな事でも

考えることをやめて、依存している物の事だけ考えて生きていけばいいんだぜ!楽すぎて困るぐらいさ!」楽な訳ないだろうに、

うわべごとをいう

サラダを口に運び噛み締める。

むしゃむしゃむしゃ。

変な妄想をしている場合じゃないなと

硝子は外へと出掛ける準備を進める。

「硝子ちゃん、今日は宇宙旅行に行くんだね?」

自室から声が聞こえる。

喋っているのはクマのぬいぐるみだ。

「硝子ちゃん、僕も連れて行ってよ!」

準備しかけていたバックを放り投げる。

バックは宙を舞い、二回転半した後に

さっきまで座っていた椅子に着地する。

ダブルトゥーループ、300点。

ベットに飛び込みクマのぬいぐるみを

抱きしめる。

今日見る夢は宇宙でフィギュアスケートをする夢だ。

「おやすみ、硝子ちゃん」




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サラダと硝子と宇宙旅行 斯々然々 @sitake543

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