♯52 可愛い仙女様と、もう一人の仙女様の正体を知った



「あっ。遅いよ、だんなさま!」


 小さいころ憧れていたお姉さん(でも現在いまは同い年)との混浴から半刻ほどののち

 必死の弁明によりツバキの誤解を解くことにどうにかこうにか成功し、予定よりもだいぶ遅れてマリナの家に戻ったボクを出迎えたのは、ぷくっと頬を膨らませた自称・仙女様だった。


「ルーナは待ちくたびれて寝ちゃったよ?」

「ご、ごめん。ちょっといろいろあって」


 カグヤがプリプリしながら指さす先、マリナの寝台ベッドのほうを見ると、そこにはだらしなく顔をゆるませ、ムニャムニャ寝言を言っているルーナの姿が……。


「いろいろって?」

「小さいころ憧れていたお姉さんに童貞の幻想を打ち砕かれたりエロ本を持っていることがバレたり急所を握り潰すぞと脅されたり」

「……何やってるのだんなさま」


 ホントにね。


「でも困ったな、ルーナ寝ちゃったんだ。これからこの第七<神域>トゥオネラを管理する造物主カミサマに逢いにいかなきゃいけないのに」


 ボクたちが『洞』こっちに残ったのは、表向きはマリナからここの話を聞くためということになっているけれど、実際はここの管理者――<種を播くものシードマスター>に逢いにいくためなのだ。


 なのに寝てしまうとは……。

 まあ、仕方ないか。まだ小学生、しかもお風呂上りだものね……。


「どうしよう、起こしたほうがいいのかな?」

「既に何度か起こそうとしたんだけど、起きなかったんだよ。今日はいろいろあったし、疲れてるんだろうね。ちょっと可哀相だけど、置いていくしかないんじゃない?」

「でも十歳児ルーナだけここに残していくワケにも」


 ボクたちが戻ってくる前に目を覚まして、ボクたちの姿がどこにも無かったら、また『イサリさまぁ!』って泣いちゃうと思うんだよね。


「そうですね」


 寝台ベッドの横の椅子に腰掛け、ルーナの寝顔を眺めながら、クスリと笑うマリナ。


「このコにとってイサリさんはもう世界のすべてと言っていいでしょうから。目を覚ましたとき、いるはずのイサリさんがいなかったら、号泣しちゃうと思います」


 ……いや、『世界のすべて』て。


「大袈裟すぎない?」

「そうでしょうか。このコはそれくらいイサリさんのことが大好きだと思いますよ?」

「……なんでそんなことがわかるの? キミ、ルーナとは今日が初対面なのに」

「見ていればわかりますもん」


 そう言ってマリナは『……リしゃまぁ……いしゅ……きぃ……』とムニャムニャ寝言を言っているルーナの頭を愛おしそうに撫でる。


「そもそも、ですよ? 赤の他人である自分を命懸けで助けてくれて――右も左もわからない世界に来てしまってからも自分をずーっと支えてくれて……そして自分のために今も頑張ってくれている……そんな強くて優しくて格好良いお兄ちゃんに惹かれるなというほうが無理な話です。――恋だってしちゃいますよ」

「………………こ、い」

「このコの目にはもうイサリさん以外映りません。これから出逢うすべての男性、言い寄ってくる殿方を、『命懸けで自分を護り支えてくれた強くて優しくて格好良いお兄ちゃん』と無意識のうちに比較してしまうことでしょう。――勝てると思いますか、そこいらの殿方が。『命懸けで自分を護り支えてくれた強くて優しくて格好良いお兄ちゃん』に」

「………………」


 仮に――あくまで仮にだが――マリナの見立てが正しかったとしたら。


「……そんなの、もう呪いも同然じゃないか」


 恋という名の呪い。

 それも麻疹はしかのように治る保証などどこにも無い……。


 ……でも、じゃあ、どうすればよかったんだ……?


 というか、マリナの見立ては本当に正しいのか?

 ボクにはマリナの考え過ぎ、深読みとしか思えない。

 ルーナがボクへ寄せている好意は恋愛感情などではなく、あくまで憧れに近いモノなんじゃないかと思えてならないのだけれど……。


 だってさ、ルーナはまだ十歳なんだよ?

 これくらいの年頃の女の子が年上の男性に抱く好意なんて大抵は本人が恋愛感情だと思っていても実際は憧れをそう錯覚していただけというのがお決まりじゃないか。


 ……いや、まあ、『じゃあ何歳からなら恋愛感情になるんだ?』と訊かれたらボクにも答えられないけれど……。


「あるいは、」とマリナが言う。


「厳密に言えばこのコが秘めているイサリさんへの想いは、憧れでも恋愛感情でもないモノなのかもしれませんね」

「え?」

「まだ名前が付いていない想いなのかもしれません」


 ……まだ名前が付いていない想い……。


「もうっ」と、そこでカグヤが溜め息をつく。


「話が脱線してるよ、二人とも。今はルーナをどうするかって話だったでしょ」


 そうだった。

 マリナが突拍子もないことを言い出すからすっかり失念していた……。


「……仕方ないの」


 それまでずっと黙っていたツバキが口を開く。


「ルーナが目を覚ましても騒がんように、わらわがここに残ろう。その代わり……わかっとるな、カグヤ?」

「うん。ツバキご所望のはわたしが代わりに受け取ってきてあげるよ。まあ、もう熟していればの話だけどね」


 そうか。ツバキの航海の目的はお母さんからの勅命で『不思議な樹の実シリーズ』の一種を手に入れることだったっけ。


「それでは参りましょうか、イサリさん、カグヤちゃん」

「……うん」「そうだね」


 マリナに先導されて再び玄関をくぐり、夜のとばりもと、『トゥオネラ・ヨーツェン』が停泊している『枝』とは逆の方向へと歩き出す。

 足元を照らすのは星明かりだけだったが、勝手知ったるなんとやら、マリナの足取りに迷いは無かった。


 ……そういえば。


「ねえ、マリナさん」

「イサリさん。わたくしに『さん』付けは不要です。どうか『マリナ』と呼び捨てにしてください。いえ、いっそのこと『ハニー』でお願いします☆」

「……ねえ、マリナ」

「ぶう。イサリさんのイケズ」


 マリナが振り返り、ぷうと頬を膨らませる。めんこい。

 でも『ハニー』は勘弁してほしい。


「――マリナはカグヤのこと、『カグヤちゃん』って呼んでるんだね。『お姉ちゃん』とか『姉さん』とかじゃなく」

「……ええ、まあ」

「ムカシは呼び捨てだったんだけどね」

「そうなんだ」


 まあ、外見からは想像できないけれど二人は双子らしいしな。呼び捨てでもおかしくはないか。

 へー……。ムカシは、ねぇ。

 ………………。


「もうさ――この際ハッキリさせておきたいんだけども、」


 ボクは『うろ』の天井に空《あ。いている大きな穴から覗く雪と氷で閉ざされた地球を見上げ、思い切って訊ねる。


「キミたち、本当は仙女なんかじゃなくて、造物主カミサマの一角なんじゃないの?」




「そうだよ☆」

「ご明察です☆」




 ………………。

 えらくアッサリ認めたな……。

 絶対またけむに巻かれるものと思ってたのに……。


「わたしの正体は<破壊と修正の地球意思ダークガイア>。双子座ゲミニをシンボルとする第十<神域>ハクトウワシノハシゴの管理者なんだ」

「そして、わたくしの正体は<創造と再生の地球意思ライトガイア>。魚座ピスケスをシンボルとする第一<神域>カササギノハシの管理者です」


 白頭鷲はくとうわし梯子はしご

 かささぎの橋。

 それらはいずれも、カグヤが以前『管理者不在のため機能不全に陥っている』と言っていた<神域>だった。


「わたしとマリナはね、八十八にんいる造物主の中でも最上位に位置する、言わばリーダー格なんだ」

「カグヤちゃんは造物主の中の『破壊と修正を司る存在』たちを統括する立場なんです。そしてわたくしは『創造と再生を司る存在』たちを統括する立場になります」


 ………………。


「へー……」

「……あれ? 思ったより淡白な反応だね?」

「もっと驚かれるかと思ったのですけれど……」


 ボクのリアクションに『なんだか物足りない』という顔をする双子。


「うん、まあ、ぶっちゃけ予想はしてたからね……」


 精神世界でのスーザンとのやりとりが無かったら、もっと動揺してただろうけれど……。


 そうだ、スーザンといえば。


「以前カグヤがスーザンのことを、個人的にあまり会いたくないしボクにも会わせたくない神様だって言っていたのは、なんでだったの? スーザンは『破壊と修正を司る存在』たちの一柱ひとり――つまりキミの部下なんだよね?」

「……会ったら揶揄からかわれると思って」

「揶揄われる? 何を?」

「…………ムカシ妹に『あまり入れ込むな』『与えられた役割以外のことは極力考えるべきじゃない』と散々説教しておいて、今や自分がメロメロになってることを」


 ? 何を言っているのか全くわからん……。まあ、いいや。


「もうひとつ訊いていい?」

「うん」

「どうぞ」

「『月棲獣げっせいじゅう』との死闘たたかい最中さなか発現した籠手ガントレットがあったじゃん?」

双聖の神器ツイン・セイクリッド・アームズだね」

「『魂魄タマシイの婚姻』を結んだ造物主のチカラを制御するための端末デバイスですが……あれが何か?」

「いや、あれでスーザンのチカラを揮おうとした際にさ、スーザンの他に二柱ふたり造物主カミサマの名前が表示されたんだよ」

「ああ……」

「カグヤちゃんとわたくしの名前でしょうね」

「……やっぱそうなんだね」


 だとすると、だよ?


「――ボクたち、いつ『魂魄タマシイの婚姻』とやらを結んだの……?」

「だんなさまがヒトとして生まれ落ちる前、輪廻の輪の途中で魂魄タマシイだけの状態だったときだね☆」

「ごめんなさい、勝手に結んじゃいました☆」


 ち ょ っ と 待 て。


「ヒトとして生まれ落ちる前⁉ しかも勝手に⁉ どういうことさ⁉」

「どういうことと訊かれても……そのまんまだけど」

「申し訳ありません。『結びたい!』という衝動をどうしても抑えきれなかったものですから」

「……ボクの意志は……?」


「「…………てへぺろ☆」」


「可愛ければなんでも赦されると思うなよ」


 赦すけど。今のメッチャ可愛いかったから(我ながらチョロい男だ)。


 てか、輪廻転生って本当にあるんだね……。


「――あれ? でもさ、あのとき籠手ガントレットに表示された名前は『カグヤ』と『マリナ』じゃなかった気がするんだけど」

「まあ、最近使い始めたばかりの名前だからね。『カグヤ』と『マリナ』は」


 最近使い始めたばかりの名前?


「カグヤちゃんの以前の名は『ディードレ』、わたくしの以前の名は『マーシー』と言いまして、本当の姿はカグヤちゃんの場合は菫色の髪、わたくしの場合は蒼い髪のほうなんです。それに今のカグヤちゃんは見た目十二歳くらいですが、本来の姿はわたくしと同様、十代後半なんですよ?」


 ディードレ……マーシー……。

 あれ? この名前、不思議と聞き覚えがあるような……。

 えーと、いつどこで聞いたんだっけ……。

 比較的最近だったような……。


 ……って、えっ⁉


「カグヤって本当は幼女じゃないの⁉」

「うん。『だんなさまは年下の女の子に甘い』って聞いたから幼女形態このすがたを選んだんだけどね。好みのタイプはむしろ『優しくて包容力があって巫女さんの格好が似合うお姉さん』だったなんて。……騙されたよ」


 ……ボクの趣味嗜好が完全にバレている……。ボクは『年下の女の子より年上のお姉さんのほうが好み』としか言っていないのに……。

 てか、誰から聞いたのさ、その年下の女の子に甘いって話……。


「ところでだんなさま。双聖の神器ツイン・セイクリッド・アームズに表示されたのはわたしたちの名前だけだった?」

「……いや、キミたちが担っていると思われるチカラの名称も表示されていたよ」


 えーと、確か表示されていたチカラの名称は………………なんだったっけ?


「わたしが担っているチカラの名称は『地球系統ガイア・システム』だよ」


 カグヤが答えを口にする。


「これは実体の無い存在、つまり神霊や魂魄タマシイといったモノに肉体を与えたり、生き物を成長させたり、傷付いた肉体を修復・再生したりといったことが可能なチカラなんだ」

「『地球系統ガイア・システム』……」


 ボクの脳裏に、アリシアを救うため『深きものども』の融合体と戦ったときの記憶、『変身』したボクの視界の隅に表示された警告文が甦る。



 ――『<Gaia system>残存率10%未満。

    これ以上の行使こうしはあなたの肉体が崩壊する危険性があります。

    魂魄タマシイへのチャージを推奨』



 そして<神域>についてカグヤから受けた説明も。



 ――『なんなのかなあれ⁉ なんで大気中に残留している神様のチカラを魂魄タマシイに取り込んで爆発・燃焼させちゃってるの⁉ どういう発想⁉ 反則だよ、あんなの! 神様のチカラを本来の用途とは全然違う使いかたしないでよ! ご飯を食べて得たエネルギーを生命維持や身体を作ることに使わず、放射熱線に変えて口から吐き出すに等しい所業だよ⁉』



「……その『地球系統ガイア・システム』ってのは、カグヤが言っていた『大気中に残留している神様のチカラ』で合ってるよね? ボクが神威かむい体現闘法たいげんとうほう漁火いさりびけん>を使用する際に、特殊な呼吸法で体内に取り込んで爆発・燃焼させている……」


「うん」とカグヤは肯き、


「あの地球とこの月の生き物はね、人間も他の生き物も、みんな『地球系統ガイア・システム』の恩恵で生まれ、成長するんだよ。もちろん、誕生には受精卵、成長や治癒には食事による栄養の摂取も必要になるけどね。だからわたしのチカラは大気中に満ちているんだ。ねっ、マリナ」

「はい。『地球系統ガイア・システム』を使えば、わたくしやカグヤちゃん、スーザンさんのような本来実体を持たない霊的スピリチュアルな存在も受肉することが出来る。ヒトとして地上を動き回れるんです」


 ヒトとして地上を動き回れる、か。

 そういえばスーザンもそれっぽいことを言っていたっけ……。


「……でもさ。カグヤは『破壊と修正を司る存在』たちのリーダーなんだよね?」

「そうだけど」

「その割に、なんていうか……逆の印象を抱かせるチカラだよね、『地球系統ガイア・システム』って」

「逆の印象? どういうこと?」

「誕生とか、成長とか、治癒とか……そういうのって、あんまり『破壊』って感じがしないじゃない」

「ああ、なるほど。……でも、ヒトの誕生や繁栄にも大きく関わるチカラだよ? というか、それが一番の目的と言ってもいいチカラだよ?」

「一番の目的? ヒトの誕生や繁栄が? ……でも、だったら尚更なおさらさ、」


「ヒトというしゅがこれまでにどれだけ沢山のモノを破壊してきたと思ってるの?」


 アッサリと告げられたその言葉に。


「―――――――」


 ボクは絶句してしまった。

 思わず足を止め、立ち尽くしてしまった。


 ……確かに。

 オゾン層の破壊や森林伐採、海洋汚染などの例を一々挙げずとも、ヒトの社会が――特に現代社会が、様々な破壊活動の上で成り立っていることは明白だ。

 それにヒトは、これまで様々な生き物たちを駆逐・絶滅させてきた。

 ヒトが破壊的な生き物ではないと言ったら嘘になるだろう。


 そんなヒトという種の誕生と繁栄に大きく関わるチカラなら、『破壊と修正を司る存在』たちのリーダーに相応しいと言えないこともない、のか?


「ちなみにわたくしが担うチカラの名前は『星核構築』デイジーワールド・プログラムと言いまして、これは酸素や炭素、水素や窒素といった元素を操って、生き物以外のモノを生み出すためのモノなんです☆」


 重くなってしまった空気をなんとかしようと、マリナが明るい口調で言う。


「生き物以外のモノ?」ボクは再び歩き出しつつオウム返しする。


「一例を挙げると地球のコアなどですね。土、水、木、石……惑星を構成するすべての物質を生み出すためにあるこのチカラは、この宇宙に存在する物質ならなんでも創造することが出来るんです。それこそ、地球上や月には存在しない物質であっても」

「! もしかして……」

「はい。イサリさんはこのチカラで青生生魂アポイタカラというほのおのような性質を持った異星の金属で出来た全身防護服メタルジャケットを形成し、『変身』していたというワケですね」


 ……ああ、だから『デイジーワールドの実』……。


「まとめると、カグヤのそれは『生体』を生成するためのチカラで、マリナのそれは『物体』を形成するためのチカラってワケか」


 ……あれ? でも待てよ?


「その理屈だとキミたちは、あの地球やこの月が生まれたのと同じくらいの年月を生きてきていないとおかしいことにならない?」

「うん。わたしたちは造物主カミサマの中でもちょっと特殊な立ち位置でね。簡単に言うと、地球の化身、分霊なんだよ。そういう意味じゃ、わたしたちが生まれたのは地球が誕生した46億年前と言えるワケ」

「つまり、わたくしたちは造物主カミサマであると同時に『創造つくられた側』でもあるんです。――ですから、地球と月が生まれる前からいた他の造物主カミサマたちよりずっと年下なワケでして……。正直、やりにくさを感じることも多々あります」


 …………いや。だから待って。


「地球の化身? 分霊?」


 ボク、これまでずっと、そんなのに言い寄られたり押し倒されたりしていたの?

 ベロチュウする・しないで騒いだりしちゃってたワケ……?


「まあ、地球の化身、分霊とは言え、一人の恋する女の子であることに変わりはないし☆」

「ちなみに『地球系統ガイア・システム』で受肉した身でも、ちゃんと子供は作れますよ☆」

「またそういう反応に困る発言をする……」


 なんてやりとりをしているうちに辿り着いたのは、マリナの家から徒歩で十分ほどの場所にある小さなぶなの森だった。

 なんていうか……田舎によくある『鎮守のもり』っぽい雰囲気の森だ。

 鬱蒼うっそうしげる薄暗い森の中を、マリナに先導されてしばし歩く。

 やがてひらけた場所に出た。


「これは……」


 森の中心に隠されていたモノ――それは鳥居だった。

 ボクたちが最初に『上陸』した『枝』にあった46本の鳥居はオーソドックスな朱塗りだったが、その鳥居は目が覚めるような深いあお塗りで、額束がくづかと呼ばれる部分には乙女座ヴィルゴのシンボルマークである『♍』が刻まれている。


 そしてマリナに続いてその鳥居をくぐると――


「な……⁉」


 ――気付いたら、別の場所にいた。


「なんだこれ⁉ どうなってるんだ⁉」

「この『樹』は各所に蒼塗りの鳥居が建っていまして、」


 戸惑うボクにマリナが解説する。


「そのすべてが、特定の場所に転移するためのゲートなんです」

ゲート⁉」

「そう」


 カグヤは頷き、


「ここはさっきまでいた『洞』とは別の『洞』。だんなさまが言うところの『不思議な樹の実シリーズ』はすべてここで作ったモノなんだ」


 そう言って彼女が指さした先――ボクの目の前には。



 広大なが広がっていた。


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