第33話 苦戦する定時制高校

 定時制高校では毎日、「授業」が行われる。

 一般に定時制高校もまた全日制高校同様、進級そして卒業という従来ながらの学校モデルが踏襲されている(単位制を取入れた学校は除く)。

 これは一見いいように見えるが、自由度は当然低いままだ。

 まして修業年限を4年にされては、大学進学を目指す者にいわせれば無駄の押し付け以外の何物でもない。


 昨今では定時制高校も単位制を導入して最低卒業年限が3年に短縮されるなど、自由度を高める努力はなされている。

 だが、決められた時間に決められた場所に行って授業を受けるシステムは、社会全体のライフスタイルが多様化へと舵を切った今般、ユーザーにとってはもとより運営者にとっても硬直化したものとなったように思われる。

 そのことは、定時制高校の在籍者数の推移をみれば明らかである。


 1980(昭和55)年に定時制高校生は全国で約15万人弱いたが、以後漸減を続け、2016(平成28)年には約9万3千人程度にまで下がっている。2020年時点ではついに8万人を下回るに至った。

 約40年間でおおむね半分弱の減少であり、これは少子化や高学歴化などの要素を差引いても無視できない減少率である。

 もっともこれが公立のトップ進学校であれば、いくらか定員を増やしても希望者数は減りなどしないだろう(学校全体の学力のレベルダウンを招く可能性については話が別)が、定時制高校の場合それはまずもって期待し得まい。

 これでは定時制高校の統廃合が進むのも無理はない。


 私の住む岡山市内には、定時制高校はかつて烏城高校の他に2校あり、その3校で「定校祭(定時制高校祭)」というものも年1回開かれていた。

 しかし、烏城高校以外の岡山市立の2校、岡山市立岡山商業高等学校(岡山市立旭中学校、現在の同岡山中央中学校の敷地内にあった)と岡山市立岡山工業高等学校(岡山県立岡山工業高等学校の敷地内にあった。全日制の工業高校と設備を共用できるわけであるから、合理的な設置方法であったといえよう)は生徒減のため統廃合された。

 この2校、実は岡山市立岡山後楽館中学校・高等学校として存続していると言えなくはない。だが、定時制高校としても実業高校としても、ともに完全にその役目を終えている。実質的には両校とも「廃校」とみなしてよかろう。

 全日制高校の実業高校さえ縮小傾向にある今時、夕方の時間をほぼ毎日つぶしてまで実業科目を学ぼうという時代ではない。


 確かに現在の定時制高校は、昼夜開講制にしたり単位制に移行したりするなど柔軟な対応をとっているが、決まった時間に必ず出てきて授業を受けるというシステムになじまない生徒たちの受け皿にはなり切れていない。

 定時制高校はこれまで一定数の不登校や高校中退者、あるいは高校受験に失敗した層の受け皿となりえてきたし、現在でもその役割は否定されてはいない。

 しかしながら、かねての高校進学率の上昇、少子化、そして社会全体の個人化の流れには抗いきれないまま苦戦している。

 株式会社立まである通信制高校と異なり、今なお定時制高校として存在している学校のほとんどは、公立である。

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