第2章 大検(高認)を飲み込み躍進する通信制高校

第26話 よどみは消えてカジュアルに

 誰にとっても、居場所の確保は予想外に重要なファクターである。

 広域型の通信制高校は、それが株式会社立の高校が運営するビルの一角のテナントに入っている「校舎」であれ塾や家庭教師会社のような場所であれ、単に話し相手だけでなく社会的存在をも担保してくれる居場所の要素を兼ね備えている。

 それは確かに、大検や高認のようなペーパーテストではできない。

 

 しかし、この数十年来の高校中退者の増加に伴う大検の変貌と通信制高校の躍進は、高校を降りた若者たちにとって、余計な罪悪感や悲壮感など持つ必要もなく、淡々と今ある状況を乗り越えていける社会的状況を整えてきた。

 高校中退等による日影者のエレジー的な人生の「澱み(よどみ)」の如き要素はすっかり影を潜めた。

 淡々と明るくカジュアルに、今ある状況を乗り越えていける時代となった。


 WIKIPEDIAの該当ページによれば、定時制高校の在籍者は1980年時点で14万9,351人に対し、2016年では9万2,965人。約4割弱の減である。これに対し通信制高校在籍者は、1980年時点で12万8,987人のところが、2016年時点で18万1,031人。約4割強の増加である。

 その後2020年の文部科学省の統計を見ると、通信制高校が21万人に迫る勢いを見せているのに対し、定時制高校はついに8万人を割ってしまい、7万9,000人台にまで落ち込んでいる。


 1980年の定時制及び通信制高校の在籍者は27万8,338人に対し、2016年で27万3,996人。2020年時点を見ればおおむね29万人近くで、この少子化の中、通信制高校の生徒数ばかりが増えていることがうかがえる。

 定時制だけではなく全日制高校の生徒数も減っていることを考えれば、いかに通信制高校の勢いが増しているかがわかろうものである。おおむね同じパイの中の取合いのような様相を呈していたが、それも微妙に変化しているといえよう。かくして2020年代の今や、通信制高校在籍者は定時制高校在籍者の約3倍弱。


 分析してみる程に、実に興味深い事実が浮かび上がってこないだろうか。

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