カタストロフィー

キリシマ レアン

第1話

朝。瞼の上に光が落ちると目が覚めた。

ぎこちなく目を開けるとやかましく黄色い太陽の陽の光が目を灼いた。僕は顔の向きを変えて改めて目を覚ます。


2,30分程、ゆめうつつのまま寝ては覚めてを繰り返して、いよいよ起きる決心がついたので、上体を起こした。そうすると自ずと意識にかかっていた靄がすぅー、と晴れていく。


ベットから降り、床に足をつけた時には先程までのぼやけた視界もクリアになった。そのままゆっくりとドアを開く。ドアを開くとすぐ1階へ降りられる螺旋階段がある。それを慣れない足取りで降りる。


階段を降り、すぐのドアを開けるとリビングに出る。昨日自分が置いたエアコンのリモコンを本体に向け、冷房のボタンを押す。


しかし、何も起きない。昨日まで鳴っていた「ピッ」という起動の音もなければ、冷風も出ない。僕は何度も同じボタンを押してみたり、近づいてボタンを押したりしてみたが結局何も起きなかった。故障したらしい。僕は苛立って舌打ちをした。


「この家からも出てかなくちゃ。面倒だなぁ」


僕はキッチンへと向かった。安っぽいオーブントースターの上に置いてあるカップ麺を手に取って包装を剥がし、蓋を取っ払うとカチカチに固まった麺をカップから取り出した。そしてそれをそのままバリバリと頬張る。塩っけしかない硬い感触が口に広がる。次に冷蔵庫から2Lの水のペットボトルを引っ張り出すとその中身をがぶりと飲んだ。口の中にあった気色の悪い塩っ辛さが流されて、水の清涼感が気持ちよかった。


「さてと」


僕は寝間着を脱ぎ捨ててその辺に落ちていた服を適当に着た。幸いサイズは合った。

続いて椅子に掛けていたバッグを背負った。


「行かなきゃ」


僕はリビングから出て、そのまま家から出た。重い戸を開けると出迎えたのは僕の嫌いな陽の光だった。その時、僕はとてもむしゃくしゃした。

無性に腹がたって、何もしてられなかった。

僕は家の裏側に回り込んで、やがてエアコンの室外機を見つけた。


「お前のせいでまた面倒なことになった。死んじまえっ」


僕は室外機を思い切り蹴り飛ばしてやった。ガツンと鈍い音と僕自身の爪先にも鈍い痛みが走った。それでも少しだけ気分は晴れた。


「ここら辺の家はもう全部使い物にならなくなったから、ちょっと歩かなきゃいけないか。」


バッグを背負った僕は改めて歩き始める。外はいつも通り静かだった。なんの音もしない。風の音と、風に煽られて揺れる木の葉の音。ただそれだけ。それもそのはず。だって10年くらい前にほとんどの人は消えてしまったのだから。



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