笑顔には闇があると思いたいバカがいる。

エリー.ファー

笑顔には闇があると思いたいバカがいる。

「闇まみれの笑顔がやってくる」

「なんですか、それ」

「だから、闇まみれの笑顔だ」

「どんな笑顔ですか」

「これだ」

「うわっ、すごく闇まみれっぽいかも」

「だろう」

「というか、笑顔にカウントしていいんですかね」

「別に問題ないはずだ。私が笑顔だと思っているからな」

「そういうものでしょうか」

「そういうものだ」

「とにかく、闇まみれの笑顔がやってくるわけですね。それは分かりました。で、何をすればいいんですか」

「覚悟だ」

「覚悟はしました。で、次は」

「次はない」

「じゃあ、駄目じゃないですか」

「駄目ではない。闇まみれの笑顔について、しっかりと覚悟をすることは幸福そのものだ」

「そうなんですか」

「そうだ」

「光まみれの笑顔はありますか」

「聞いたことがないので、たぶん、ない」

「闇まみれの笑顔の逆ですよ」

「闇まみれの笑顔こそが、逆なのだ」

「何の逆なのですか」

「何がだ」

「だから、何の逆なのですか」

「闇まみれの笑顔は、本来の表の言葉とは対をなす逆の言葉、つまりは闇言葉」

「新しい言葉を作らないで下さい。そうではなくて、その表となる言葉は何なのかを聞いているんです」

「気にしてはならない」

「答えられないんでしょう」

「そういうことではない」

「では、教えて下さい」

「闇まみれの笑顔は、闇言葉であり、逆の存在。つまりは、呪われている」

「会話になっていないと思います」

「これもまた、呪い」

「違います」

「違くはない。確実に呪い」

「呪いの定義が分かりません」

「分からないことが呪い」

「好きにして下さい」

「最初から、そうしている」

「そうですね。確かに」

「これもまた、恐ろしい呪いの力」

「闇まみれの笑顔になってしまいそうです」

「呪いの力によってか」

「そうですね。はい。それでいいです」

「耐えるんだ」

「耐えられません。もう、何もかも耐えられません」

「いけない。抗ってこそ人間だ」

「人間が呪いを生み出すのであれば、従うことも人間らしさそのものなのではありませんか」

「思考が呪われているから、そのような言葉が出るんだ」

「脳が呪われている、と考えた方がいいのではありませんか」

「駄目だ。呪いの力が、言葉からも漏れ出ている」

「呪いや、闇や、力や、次から次へと言葉が出て来て忙しいですね」

「全くだ。しかし、戦いとは得てしてこういうものだ」

「えぇ、熱戦が繰り広げられていると思います」

「闇まみれの笑顔は強敵だ」

「えぇ、強敵だらけですね」

「しかし、安心して欲しい。未来は守るつもりだ」

「頼もしい限りです」

「この、光の笑顔が世界を救うのだ」

「光の笑顔、あるじゃないですか」

「何がだ」

「いや、だから。光の笑顔って言いましたよね」

「言った」

「さっきは、聞いたことがないとか言ってましたよね」

「さあ」

「さあってなんですか」

「さあは、さあ、だから。さあ」

「光の笑顔はあるんですね」

「何度も言わせるな。光の笑顔が世界を救うのだ」

「光の笑顔の逆は闇の笑顔ですね」

「まぁ、そういうことになる」

「じゃあ、闇の笑顔に逆があるということですね」

「結果、そうなってしまう」

「じゃあ、冒頭で言っていたことは嘘だったということですね」

「嘘とは、つまり、呪いなのだ」

「ひっぱたきますよ」

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