悪魔のお仕事
琥珀 忘私
1リンゴ 悪魔のささやき
あなたは人に殴られそうになったとき、どうしますか?
とっさに避ける? 何もせずに当たる? それとも受け止める?
私の場合は……食べちゃう。それはもう骨までバリバリと。悪い人の体ってすっごくおいしいんですよ。すこしアクの入っているお肉は少し硬いけど弾力があっておいしいし、骨の歯ごたえは口の中に心地のいい感触を伝えてくれる。それに、程よい甘さが後を引くんです。
おやおや、そんな嫌悪感を帯びた目で見ないで下さいよ。これが我々にとっては当たり前のこと……おっと、自己紹介がまだでしたね。私、あの世で悪魔をやらせていただいております。名前をfhdsじゃ・hf;ん;と申しま……あ、すみません、聞き取れませんよね。現世の言葉では言い表せない名前になっているんですよ。こちらの世界の言葉に名前の方を直すと……そうですねぇ、果物のリンゴと同じになりますかね。おいしそうな名前に思えてきたでしょ?
え、なんと呼べばいいのかですか? 悪魔……リンゴ……『アックマ』なんていうのはどうでしょう。ほら、リンゴってアップルとも言うじゃありませんか。アクマのアップルでアックマ! なんという良い発想。我ながら惚れ惚れしてしまいますね。
それでは改めまして私、アックマがなぜ現世に来ているのかをお答えしましょう。それはズバリ、あなたを食べるため。という冗談はさておき、現世、もとい、人間界を視察するためなのです。
なんだか会社見たい……ですか? まぁ実際会社みたいなものですからねぇ。上司がいて、部下もいる。ノルマもあれば、給料だって出ますよ。あの世もそんなに暮らしやすいところではないのですよ。本当にめんどくさい。
あ、今のは聞かなかったことにしておいてください。ばれたらこっぴどく怒られてしまいますので(笑)ははははは、ははは、はぁ……。
気を取り直して私の仕事でも見ていってください。まぁ大して面白くないでしょうがね。
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