「大丈夫？キツくない？」

　ボクの後ろで膝立ちになったこんのさんがエプロンドレスのウエスト部分を引っ張りサイズを合わせてくれる。

「あー全然大丈夫です。もう少し詰めてもらってもイケるかもです」

「うーん。これ以上詰めると一人じゃ脱ぎ着できなくなると思うんだよね。一応カジュアルってゆー課題だし。やっぱこんなもんかな…」

　辛かった採寸が終わりエプロンドレスのフィッティング中。服さえ着てしまえばこっちのもの。落ち着いて応対できる。

「ちょっとだけ動かないでね。まち針通すから…。オッケー。次右側ね……。オッケー。じゃあさ仮縫いしちゃうから悪いけどもう一回脱いでくれる？」

　……えっ？

　……うそだろ。また脱がなきゃいけないの？

　………。

　……。

　…。

「～～～♪ ～～～～♪♪」

「あきちゃんご機嫌だね。エプロンドレス気に入ってくれたんだ？」

「えっ？あっハイ。とっても。ホントありがとうございます」

　仮縫いしてもらったエプロンドレスを身につけた。もうさすがに脱がなくていいハズ。とりあえず一定心が落ち着く。そう思ったらコンポから流れる曲に合わせてハミングしてたらしい。今日の星占いは総合４位。あれだけ嫌な目にあったんだ。ここからは運気が上がっていくハズ。せっかくの誕生日。せっかくこんのさんと２人きり。ちょっとくらいいいことあってもいいよね……？

「これなんて曲？」

「『教室の窓を開けたとき長い夏休みが終わった』です」

「長い題名だね」

「あー確かに。真姫さんメインの曲ってたいてい長いんです。でもここの切ない感じのメロディーアタシ好きだな。……失恋ソングなんですけど」

　夏の終わりの雰囲気と静かに幕を下ろす切ない片思いを重ね合わせた物悲しいナンバー。〈True Soul〉のアルバム収録の曲だけどシングルカットしたらいいのにって思うほどの完成度。……いや。そこまででもないのかな？今のボクの気分に合ってるだけかも…。……静かに幕を下ろす片思い。

「『True Soul』は？」

「あー次の次ですね。次の『frenzy BEAST』の次です」

　『frenzy BEAST』はベースとドラムメインのダンスチューン。身体動かすことは基本的に苦手なボクだけどダンスだけは例外に属する。リズムに乗って身体を動かすだけでいいダンスがなんで体育なのかはけっこう謎だけどおかげでボクの体育の成績はなんとか平均程度を維持できている。今週から始まった創作ダンスの授業はこの曲で踊るってグループで決めた。身体の芯に響くような超重低音のベースに浸ってるだけで衝動的に身体を動かしたくなってくる。この曲もけっこう好きだな。〈True Soul〉ってT-GROの最高傑作かもしれない。ニューバージョンの『君を想うとき』も入ってるし……。

　………。

　……。

　…。

　　　　　　　　　　　to be continued in “Kon part 10/17 am 11:43”